九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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静止立位から片脚立位に移行する際の下肢の運動制御について
*山根 奈々長田 悠路坂口 重樹田辺 紗織
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抄録

【はじめに】
 バランス能力を評価する検査の一つに片脚立位がある。片脚立位は重心を側方移動し遊脚側下肢を挙上する動作であり、側方移動の際下肢の両側性活動が重要である。しかし先行研究では片脚立位へ移行した後の支持側下肢に着目した報告が多く、片側立位へ移行する際の下肢の両側性活動に着目した報告が少ない。そこで今回健常成人にて静止立位から片脚立位に移行する際、下肢の両側性活動が重心の側方移動にどのように関与しているのか着目し、検討を行った。
【対象と方法】
 整形外科的疾患のない健常成人10名(男性7名・女性3名、平均年齢25.2±1.3歳、身長167.1±9.0cm、体重59.4±9.2kg)。被験者に反射マーカー(左右肩峰、股関節、膝関節、足関節、第5中足骨、踵骨)を添付。開始肢位は頭部正中位、両上肢は体幹横で下垂し足部は肩幅に開いた状態での静止立位とした。検者の合図にて遊脚側(全被験者とも左側)を股関節・膝関節90°付近まで10秒間持ち上げる動作を、三次元動作解析装置(VICON MX)・床反力計(AMTI社製)にて計測した。解析区間は遊脚側下肢の静止立位での床反力鉛直成分の平均値から標準偏差の2倍を越えた地点を開始とし、終了は左右重心位置が平均値±標準偏差の2倍の範囲内に入った地点までとした。解析するデータは両側下肢の床反力成分、合成床反力作用点(以下合成COP)、重心の加速度、両側股関節屈伸・内外転モーメント、膝関節屈伸モーメント、足関節底背屈モーメントとした。また重心の加速度の積分値と各関節モーメントの積分値の相関をピアソンの相関係数にて検定した。尚、本研究は当院の倫理委員会より承認を受け、対象者へ説明し了解を得た後に実施した。
【結果】
 片脚立位に移行する際、被験者全員一度遊脚側の床反力が大きくなり合成COPが遊脚側へと偏移した。その際重心は加速していき、遊脚側が床から離れる直前に減速へと切り替わっていた。また重心の減速と各関節モーメントとの相関で、支持側股関節外転モーメント(r=0.58、p<0.05)、遊脚側股関節内転モーメント(r=0.59、p<0.05)に正の相関がみられた。
【考察】
 片脚立位に移行する際、遊脚側下肢に一度荷重することで合成COPを遊脚側下肢へ移行し重心に回転モーメントを生じさせ、支持側へ重心を送り込んでいったと考える。また遊脚側が床から離れる直前から支持側股関節外転モーメント・遊脚側内転モーメントが作用することで重心が減速していき、支持側基底面内に重心を留めことが出来るよう制御したと考える。片脚立位は遊脚側下肢を持ち上げた瞬間から一側下肢のみで重心を支えなければならない動作である。よって瞬時に重心を減速させ支持側基底面内に重心を留めるためには、床から足が離れる直前から両下肢の運動制御にて重心を減速していく必要があると考える。そのため一側下肢の機能が不十分であると十分に減速出来ず、片脚立位保持が困難になるのではないかと考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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