九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 20
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前十字靭帯再建術に半月板損傷の処置を行った場合の筋力回復について
*田中 剛江口 淳子中山 彰一池田 真琴湯朝 友基(MD)張 敬範(MD)江本 玄(MD)
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抄録

【目的】
前十字靱帯(以下ACL)損傷に半月板損傷が合併することはよく知られている。また、ACL再建術後のスポーツ復帰において、筋力回復は重要項目の1つとして挙げられ、筋力トレーニングに対する方法も多くの研究がなされている。今回、ACL再建術時に半月板損傷を伴っていた場合、その半月板に対する処置の違いが筋力回復に及ぼす影響について、大腿四頭筋およびハムストリングスの筋力回復の観点から調査したので報告する。
【対象および方法】
対象は、2009年1月〜10月の間にACL再建術を行った症例の内、A群は半月板損傷なしの14膝(男性6膝、女性8膝)、平均年齢23.1歳(14歳~42歳)。B群は半月板部分切除術を合わせて行った13膝(男性8膝、女性5膝)、平均年齢28.6歳(16歳~44歳)。C群は半月板縫合術を合わせて行った9膝(男性3膝、女性6膝)、平均年齢26.7歳(16歳~45歳)とした。筋力測定はCSMI社製CYBEX HUMAC NORMを用い、術後3ヶ月、6ヶ月での大腿四頭筋、ハムストリングスの筋力を60deg/secおよび180deg/sec等速性収縮にて測定し、体重トルク比に換算した。術後3ヶ月の値を基準とし、術後6ヶ月での上昇分を百分率で表し統計処理した。統計処理には一元配置分散分析を行い、有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき全ての症例に対し、測定前に研究の説明し同意を得た。
【結果】3群間における大腿四頭筋、およびハムストリングスの上昇分において60deg/secおよび180deg/sec共に有意差は認められなかった。60deg/secでの大腿四頭筋の上昇値:A群27.2N/m、B群28.5N/m、C群45.4N/m(P=0.441)、ハムストリングスの上昇値:A群13.8N/m、B群22.2N/m、C群20.6N/m(P=0.400)。180deg/secでの大腿四頭筋の上昇値:A群14.8N/m、B群24.8N/m、C群34.4N/m(P=0.068)、ハムストリングスの上昇値:A群6.1N/m、B群20.7N/m、C群15.2N/m(P=0.091)となった。
【考察】
ACLの単独損傷と半月板部分切除術を合併したACL損傷例の筋力回復には相関がないと言われている。当クリニックにおいて半月板を縫合した場合、術後初期の屈曲角度制限や筋力訓練、ランニングの開始時期に制限を設けたプログラムを実施している。今回の調査でACL損傷に半月板損傷を合併した場合、半月板部分切除術または縫合術を施行しても筋力回復には有意差がみられなかった。これはスポーツ復帰の時期を筋力回復という点だけで判断すれば、今回の対象では半月板の処置方法は関係ないと考えられる。また、一般的に半月板部分切除術を施行すると、長期的な予後で関節変形が発生しやすいと言われていることから、ACL損傷に半月板損傷を合併した場合には、半月板縫合術にアドバンテージがあるのではないかと思われる。今後は、さらに症例数を増やし、長期的な予後も含めて、追跡調査を行っていきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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