九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 203
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急性期病院から見える,回復期病院での予後予測の検討
*増見 伸岡本 伸弘山田 学長谷部 舞甲斐 尚仁児玉 隆之
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キーワード: Br.Stage, 在院日数, FIM
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抄録

【はじめに】
 今日,在院日数の短縮化が命題とされる病院において,地域連携クリティカルパスの導入により急性期病院から回復期病院の連携が強化されている。当医療法人における急性期病院および回復期病院でも,一貫したシステムで患者に地域連携クリティカルパスを積極的に導入し365日リハビリテーションを提供している。これらを導入し使用することで,当回復期病院では以前に比べ患者の状態を把握しやすくなったが,現在使用している地域連携クリティカルパスから得られる情報のみでは,患者のリハビリテーション予後予測を立てることが難しく,ゴール設定に難渋することも多い。そこで今回,同法人急性期病院から入手可能なリハビリテーション評価情報をもとに,当回復期病院での予後予測やゴール設定における指標としての関連性の有無を検討した。
【対象】
 平成21年1月1日から平成21年12月31日の期間内に当院を退院した脳血管障害患者191名の内,当医療法人急性期病院以外から転院してきた者を除外した110名(男性64名,女性46名,年齢67.9±11.8歳)を対象とした。内訳は,脳出血群50名,脳梗塞群60名であった。なお,個人情報の取り扱いには十分配慮し,情報の分析に使用したPC上のデータへも十分に注意を払った。
【方法】
 急性期病院での入院リハビリテーション初期評価(発症から2.1±1.6日)から上肢および下肢Brunnstrom Stage(Br.Stage)を目的変数とし,急性期病院在院日数,回復期病院在院日数,急性期および回復期病院の合計在院日数,回復期病院入院時のBarthel Index(BI),回復期病院退院時の機能的自立度評価表(Functional Independence Measure; FIM)にどのように影響しているかを比較検討した。
【結果】
 1:下肢Br.Stageと回復期病院入院時BIおよび回復期病院退院時FIMに正の相関がみられた(r=0.75, r=0.67 ,p<0.01)。 2:下肢Br.Stageと回復期病院在院日数および合計在院日数に負の相関がみられた(r=-0.60, r=-0.65 ,p<0.01)。 3:上肢Br.Stageは全ての項目に対して相関関係を認めなかった。
【考察】
 当医療法人における急性期病院の下肢Br.Stage評価が,回復期病院入院時BI,回復期病院退院時FIM,回復期病院在院日数と相関を認めた。データを分析する中で,下肢Br.Stageが高値の者でも,急性期病院に入院する前居住地が施設の者や,急性期病院へ転院を繰り返している者は,在院日数が長期間になる者もいたが,今回の結果からは,回復期病院での予後として在院日数を予測する上での指標になり得る可能性が示唆された。下肢Br.Stageが高値の者は,回復期病院入院時より身体能力が高く,早期から退院後の生活を想定でき,在宅復帰を視野に入れた目標設定,問題点の抽出が可能となる。そのことにより、在院日数の短縮化や,退院時FIM点数に反映されると考えた。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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