九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 213
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GMFCSレベルVの脳性まひ児・者における横断的調査(第2報)
非対称変形に影響を及ぼす要因の検討
*園田 かおり木下 義博田中 亮山下 雅代伊藤 雄中田 愛華山下 彩
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抄録

【目的】
 我々は第45回日本理学療法学術大会にて非対称変形に関する計測結果と年齢との関連性について報告した。その調査では、粗大運動能力分類システム(以下GMFCS)レベルVの脳性まひ児・者の計測結果は年齢とともにばらつきが大きく、高い相関関係はなかった。今回、変形などの経年的な身体変化には年齢に加え、他の要因も関わるのではないかと考え、GMFCSレベルVの脳性まひ児・者の年齢以外の要因と計測結果との関連性を検討した。

【対象と方法】
 対象は当園に通うGMFCSレベルVの脳性まひ児・者41名(平均年齢10歳7ヶ月)。方法として非対称変形に関する計測である1)Goldsmith計測、2)体幹の対称性の計測(烏口突起-上前腸骨棘同側間、対側間距離)、3)胸郭の厚さ/幅比率(Depth/Width Ratio)、4)剣状突起を指標にした胸郭の計測(剣状突起の偏移)の4項目を実施した。そして、対象児・者の状況をA)麻痺のタイプ(痙直型アテトーゼ群、痙直型群)、B)股関節脱臼(有り群、無し群)、C)運動能力(臥位で支持面を変えることができる群、できない群)のそれぞれに分類し、計測結果と比較した。なお、対象児・者の保護者もしくは本人に計測結果を研究に使用することを説明し、書面にて同意を得た。

【結果】
 A)麻痺のタイプの分類では4項目の計測結果に大きな違いはみられなかった。B)股関節脱臼、C)運動能力での分類では1)Goldsmith計測、2)体幹の対称性の計測(烏口突起-上前腸骨棘対側間距離)、4)剣状突起を指標にした胸郭の計測の3項目において、股関節脱臼有り群と運動能力の支持面を変えることができない群の方がより強い非対称性を示す傾向であった。

【考察・まとめ】
 GMFCSレベルVの脳性まひ児・者の非対称変形に影響を及ぼす要因としてA)麻痺のタイプ、B)股関節脱臼、C)運動能力と計測結果との関連性について検討した。今回の結果から、全身の非対称変形には麻痺のタイプよりも股関節脱臼や運動能力がより影響を及ぼす要因になるのではないかと考える。また、股関節脱臼で倒れたままの固定された下肢の肢位や支持面を変えることができない定型的な姿勢は下肢-骨盤の捻れと脊柱・胸郭の捻れをひき起こしやすくなると考える。今回、GMFCSレベルVの脳性まひ児・者において非対称変形を予防するためには多様な姿勢や肢位をとるような運動を提供していくことの重要性を再確認した。今後も経年的に計測を行っていき、個々の身体変化を引き起こしている要因についてより詳細に調査し、分析していくことで脳性まひ児・者の非対称変形に対する長期的な姿勢ケアの実践につなげていきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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