九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 11
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頚髄不全損傷における骨傷型と麻痺型ならびに予後について
-過去5年間の自験例より-
*出田 良輔椎野 達植田 尊善
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抄録

【はじめに】
高齢化社会を反映した脊髄損傷者の高齢化、特に頚髄不全損傷の割合が増加している。しかし、頚髄損傷不全麻痺における機能回復の経時的変化に関する報告は少ない。そこで、当院データベース(DB)をもとに頚髄不全損傷の骨傷型と麻痺型ならびに予後について調査したので報告する。
【対象と方法】
対象は、当院DB登録者(2005年7月~2010年4月)で、以下の条件1)中下位頚髄損傷、2)受傷後7日以内の入院、3)180日以上経過観察可能、4)入院時改良Frankel分類A~C2、を満たした脊髄損傷93名(男性79、女14名、平均年齢=56.3±18.5歳、平均在院日数=325.9±107.1日)である。方法は、受傷原因、骨傷型、麻痺程度(改良Frankel分類)、麻痺型(ASIA Clinical Syndrome分類)、ASIA Motor Score(AMS)ならびにADL点数(SCIM Score)を入院時より経時的に調査した。なお、対象者全員に対し本研究の趣旨を説明し同意を得ている。
【結果】
受傷原因は、転落37例(40%)、交通事故28例(30%)、転倒17例(18%)、スポーツ8例(8%)の順に多かった。骨傷型では、非骨傷52例・前方脱臼32例・椎体骨折9例であり、入院時改良Frankel分類Aの割合は、骨傷ありで68%(28例)、非骨傷で13%(7例)であった。また、入院時改良Frankel分類B1以上の者の73%に1段階以上の回復が認められた。麻痺型の割合は、横断型48例(51%)・中心型32例(34%)・半側型8例・前部型6例・後部型1例であった。各時期の平均AMSは、入院時19.6±16.8点、3ヶ月後47.3±32.3点、6ヶ月後50.2±33.5点、退院時53.5±33.9点であった。各時期の平均SCIM scoreは、入院時8.0±2.3点、3ヶ月後35.6±24.1点、6ヶ月後41.8±28.1点、退院時48.4±29.3点であった。
【考察】
頚髄不全損傷のうち、非骨傷性頚髄損傷が半数以上(56%)を占め、転倒転落によるもの(61%)が多い現状が示された。今後の超高齢化社会を反映し、この傾向は急速に高まるものと考える。頚髄損傷不全麻痺例の中心型は34%を占めており、横断型の次に多い病態であった。入院時改良Frankel分類別での歩行可能(D1以上)となる割合は、A~B1:0%、B2:16%、B3:40%、C1:75%、C2:100%であった。また、AMS・SCIMともに段階的に回復して傾向が認められた。また、同程度の機能障害であっても高齢者では動作獲得が困難であることが多いため、能力障害に対するアプローチが高齢者では特に必要であろうと考える。頚髄損傷後の機能回復をある程度予測した上で、リハプログラムを作成する必要があると考えられた。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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