九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 218
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バランストスコアカードモデルを用いたリハビリテーション科の組織運営
当院の試みにおける課題と展望
*本田 繁西村 浩幸
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抄録

【はじめに】
当院リハビリテーション科(以下リハ科)では、平成22年度からバランストスコアカード(以下BSC)のモデルを導入して戦略的な組織運営を開始した。しかし、ビジョンや事業戦略を医療法人全体で共有している本来の形式ではなく、リハ科独自の試みであるという特殊な経緯で始動している。今回は、BSC導入までの経緯を示していき、BSCを導入することで達成できるという仮説を立案した。今後の展望を含めて報告する。
【BSC導入までの経緯】
まずリハ科の現状分析をSWOT分析にて実施した。SWOT分析ではリハ科を取り巻く外部環境(機会と脅威)、及びリハ科の内部環境(強みと弱み)から、リハ科の課題を抽出した。次に抽出したSWOTマトリックスを基にクロスSWOT分析を行い、リハ科の課題を解消するビジョンを立案し、ビジョンを達成するための事業戦略を立案した。
以上に基づき、BSCの5つの視点(患者の視点・地域社会の視点・健全財政の視点・医療サービスの視点・医療スタッフの視点)から、戦略目標、重要成功要因、業績評価指標、アクションプランを設定した。
【ビジョンとビジョン達成のための事業戦略】
ビジョン;リハビリテーション医療提供による地域住民への貢献
事業戦略;1.地域へのリハビリテーション啓発の取り組み、2.地域連携パス参画によるリハビリテーション医療提供の強化、3.心大血管リハビリテーションへの集中的取り組み
【仮説の立案】
BSCを導入した組織運営により、各視点からの戦略目標を達成して患者満足度向上を達成できるという仮説を立案した。BSCによる組織運営を通して検証していく。
【考察】
BSCは戦略を通してビジョンを達成するための組織運営ツールとして、地方自治体病院での運用報告を散見する。当院ではリハ科独自の試みであるという特殊な経緯であり、BSC導入本来の方法論から逸脱している。そこで、当院独自の試みにおいても患者満足度向上を達成できるという仮説を立案し、検証していくことを目的としている。
BSC導入により、ビジョンや事業戦略を可視化でき組織の方向性が明確になったこと、全体業務の中での個々の業務の位置づけが容易になり、優先順位を意識できることが利点であったと考える。また患者満足度を数値化してリハビリテーション医療の評価を導入したことは、検証するうえで新たな着眼点となった。
BSC試行の過程では、ビジョンや事業戦略といった専門用語の理解や、各視点間の目的と手段の因果関係の調整が困難であった。各専門用語の理解や、目的と手段の有機的関連性を確実にしていくことが課題といえる。
今回作成したBSCは完全な形式ではなく、今後も修正を経て組織の方向性を明確にしていく必要性を感じる。個人・組織として主体的・能動的に取り組んでいくことで、リハ科独自の試みから法人全体の取り組みへ展開していくための行動を模索していく。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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