九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 22
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大腿骨頚部骨折患者に対する術前起立練習の取り組み
術後の患肢荷重率に注目して
*榮 彩人
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抄録

【目的】
大腿骨頚部骨折で人工骨頭置換術予定者では骨折部の安静が必ずしも必要でないことから、術前より起立練習を試行したところ、術後の早期離床・早期歩行獲得につながる報告がある。そこで当院において平均在院日数が約2週間と短い中、術後の理学療法プログラムがスムーズに進行できるように大腿骨頚部骨折人工骨頭置換術待機の患者に対して術前起立練習を行い、術後の患肢荷重率に及ぼす影響について注目した。
【対象と方法】
対象は大腿骨頚部骨折で人工骨頭置換術適応の患者とし、骨折型は内側骨折で転位型とする。除外基準として1.受傷前歩行不能であった症例。2.認知症により理解が得られないと医師が判断した症例。3.重度の合併症と医師が判断した症例。予め作成した割付表を基に、同意を得た順番で術前起立練習実施群と対照群とに振り分けた。平成21年12月から平成22年3月までの間で実施群9例(男性1例、女性8例、平均年齢77.8±5.3歳)、対照群5例(女性5例、平均年齢80.0±7.2歳)を対象とした。
介入方法はベッドサイドにて背臥位からギャッチアップを経て端坐位に移行する。この時、患者は可能な限り自分で体位変換を行う。端坐位から患肢は荷重をせず足底接地のみで健側下肢にて起立する。練習期間は入院日翌日から手術前日までとし、1日2回。30分前には坐薬の投与を行う。練習時間は約15分(60秒の立位保持と30秒の休憩を1回とし10回行う)とした。対照群に対しては手術待機期間中何もアプローチしない。術後のリハビリテーションにおいて内容に差が生じないように術後プロトコールを作成し、それに基づきリハビリを行う。
効果判定として術後の患肢荷重率を測定した。立位時の患肢への荷重率(%)=(努力荷重/体重)は術後2日と術後7日に測定した。また、車椅子移乗動作の獲得時期と歩行器歩行獲得時期についても評価した。各動作は見守りレベルにて獲得とする。
【結果】
実施群の術後2日の患肢荷重率は平均63.1±13.8%、術後7日の荷重率は85.0±8.2%で、術後の車椅子移乗獲得時期は平均1.2±0.4日、歩行器歩行獲得時期は3.0±1.0日であった。一方、対照群の術後2日の患肢荷重率は平均33.9±4.2%、術後7日の荷重率は58.2±8.5%で、術後の車椅子移乗獲得時期は平均5.2±2.2日、歩行器歩行獲得時期は9.2±2.3日であった。
【考察】
術前から起立練習を行うことで、術後1日目の車椅子離床に対する不安や抵抗感も少なく、スムーズに術後のリハビリテーションを進めることができ、早期に荷重を行うことができた。今回はまだ症例数が少なく、統計的な差が示せなかったため、症例数を増やし検証していきたい。
【まとめ】
大腿骨頚部骨折で人工骨頭置換術適応の患者に対して術前起立練習を行った。術後の患肢荷重率は実施群が対照群に比べ高く、車椅子移乗獲得時期、歩行器歩行獲得時期も実施群が早い傾向にあった。今後さらに症例数を増やし、その効果を検証していきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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