九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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人工股関節全置換術後におけるクリニカルパス改訂の効果と課題
*足立 祐紀浅香 雄太西 洋樹坂田 大介清田 克彦
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抄録

【目的】
当院における人工股関節全置換術(以下THA)のクリニカルパス(以下パス)は、退院目標期間を術後4~6週、退院基準は1本杖歩行獲得としていた。2010年1月よりパスを改訂し、退院目標期間を術後3~4週へと短縮した。そこで従来のパス(以下旧パス)と改訂パス(以下新パス)を比較検討することにより、パス改訂の効果と課題を検討したので報告する。
【対象】
旧パス対象者は2007年9月~2009年8月までTHA施行した症例172名(平均年齢63.7±10.6歳、男性34名、女性138名)。新パス対象者は2010年1~3月までに施行した症例22名(平均年齢66.6±12.5歳、男性5名、女性17名)である。旧パス、新パス共に再置換術、術後荷重制限ありの症例は除外した。
【方法】
年齢、術後在院日数及び1本杖歩行自立日数について旧パス群と新パス群の2群間で比較検討した。身体機能の評価として日本整形外科学会股関節判定基準(以下JOAスコア)を使用した。個別の評価項目として筋力、関節可動域、疼痛、歩行能力について測定した。筋力は股関節外転及び屈曲筋力について日本メディックス社製マイクロFET2を用い測定した。測定は大腿遠位での等尺性運動によって得られた筋出力値より体重比を算出した。関節可動域は股関節外転及び屈曲可動域を測定した。疼痛は安静時、荷重時においてFaceScaleを用いて6段階で測定した。歩行能力は10m歩行時間を測定した。術前と退院時の各評価項目を2群間で比較検討した。統計処理はMann-WhitneyのU検定を用い、有意水準5%未満とした。
【結果】
年齢に有意差は認めなかった。術後在院日数は旧パス群(41.97日)に対して新パス群(28.36日)が有意に短縮した。1本杖歩行自立日数は旧パス群(16.78日)に対して新パス群(11.29日)が有意に短縮した。JOAスコアは入院時、退院時共に有意差は認めなかった。入院時の個別評価は全ての項目で有意差は認めなかった。退院時の股関節外転筋力において新パス群が有意に低下した。退院時の荷重時痛において新パス群の疼痛が有意に強かった。退院時の10m歩行時間において新パス群が有意に遅延した。その他の項目では有意差は認めなかった。
【考察】
今回のパス改訂に伴い術後在院日数及び1本杖歩行自立日数の短縮が認められた。入院期間は短縮したものの退院基準である1本杖歩行獲得は100%達成しており、JOAスコアにも差が見られなかった。このことから、身体機能は旧パスと同様の能力を有していることが示唆された。しかし、個別の評価項目では股関節外転筋力、荷重時痛、10m歩行時間において旧パス群の値が良好との結果になった。新パス群は症例数が22名と少なく、今後更なる調査が必要である。

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