九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 281
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大腿切断者の大腿義足装着における座位から歩行課題の膝折れに対する生体力学的特徴
*鏑木 誠長倉 祐二山元 総勝
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抄録
【はじめに】
大腿切断者の義足装着時における日常生活動作において難渋する動作のひとつに座位から歩行課題という一連の連続動作があり、臨床における動作指導の種類は、義足振り出し動作と健側振り出し動作の二つがある。この座位から歩行課題における義足振り出し動作と健側振り出し動作の違いによる転倒を考慮した生体力学的特長を明らかにする目的で本研究をおこなった。
【対象】
対象は、切断術からの経過期間8年、日常生活において主たる移動手段は義足歩行という義足操作の習熟した左大腿切断男性(26歳、身長174cm、体重67kg、断端長22cm)であった。計測で使用した大腿義足は、日常生活でも利用しているものを使用した。その内訳は、四辺形ソケット、Ossur社製TOTAL KNEE2100膝継ぎ手、Ossur社製Vari-Flex足部であった。
【方法】
課題動作は、座位から立ち上がり、初期接地までの動作とし、義足振り出し動作および健側振り出し動作とした。三次元動作解析システムにより運動学的データを、表面筋電図により、両下肢の大殿筋の筋電図を計測した。抽出したデータから、重心前方速度、静的立位時の重心の高さで標準化したつま先離地時の重心の高さ、初期接地時の床反力、つま先離地時と初期接地時の関節モーメントを算出し、それぞれの動作を比較、検討した。
【結果および考察】
立ち上がりからつま先離地について、重心前方速度は、義足振り出し動作は最大68cm/secと徐々に増加していくのに対して、健側振り出し動作は前半(殿部離床直後)に最大52.5cm/secとなり、その後は減少していた。また、この時の支持脚膝関節に加わる関節モーメントは、義足振りだし動作で11.7N、健側振り出し動作で-42.1Nであった。さらに、支持脚大殿筋の表面筋電図より、この相の平均振幅値でも健側大殿筋の0.02mVに対して断端大殿筋は約3倍の0.07mVと過度な収縮を呈していた。これらのことから、座位からつま先離地にかけての支持脚側の特徴として、健側振り出し動作は、義足側の支持に伴う義足膝継ぎ手の伸展を断端大殿筋の過度な収縮による股関節の伸展によって代償しながら行っていることが示唆された。この支持に伴う義足膝継ぎ手の伸展が十分に行われない場合、膝折れや転倒に結びつく可能性が示唆された。 初期接地時の上方床反力を比較すると、健側振り出し動作では677N、義足振り出し動作では699.8Nであり、義足振り出し動作の方が大きな値を示した。この時の関節モーメントは、健側振り出し動作では48.4N、義足振り出し動作では-9.1Nであり、健側振り出し動作の方が大きな値を示した。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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