九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 284
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糖尿病を合併した心疾患患者に対する包括的な糖尿病指導の導入
*古門 功大高永 康弘佐藤 憲明木村 悠人椛島 寛子岡原 りえ星木 宏之折口 秀樹
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抄録

【背景】
心疾患患者に対する運動療法や食事療法といった包括的心臓リハビリテーション(以下心リハ)が再発を予防し、心血管病変による死亡率を低下させるといった効果は広く知られているが、糖尿病の指標であるHbA1cを改善するといった報告は少ないのが現状である。糖尿病は動脈硬化や冠動脈疾患の危険因子であり、生命予後も不良となると報告されているため、糖尿病合併心疾患患者のHbA1c是正は重要である。
【目的】
当院の心リハにおけるHbA1c改善効果を検討するため、糖尿病合併心疾患患者に対する調査を実施した。さらに、心リハ参加患者のうち包括的糖尿病指導として10日間の教育入院(以下糖尿病教育)を実施した2症例についても併せて調査・検討したので報告する。
【調査】
2007年4月から2010年3月までの過去3年間で、5ヶ月間の心リハを終了された122名のうち、心リハ開始時にHbA1cが6.5%以上の者は19名であり、全体の16%に及んでいた。また、心リハ開始時にHbA1cが6.5%以上の者をA群(n=19名、男性:11名、女性:8名、年齢:71.6±8.5歳、HbA1c:7.2±0.8%)、6.5%未満の者をB群(n=103名、男性:73名、女性;30名、年齢:70.4±8.3歳、HbA1c:5.8±0.8)とし、5ヶ月間の心リハ前後のHbA1cを比較・検討したところ、A群・B群ともに有意差は認められなかった。つまり、A群においてはHbA1c高値のまま心リハ期間を終了してしまっているという問題点が明らかにされた。
【症例_I_】
50歳代 男性 身長170cm 体重64.8kg BMI22.4 心筋梗塞にて入院。冠危険因子として、糖尿病(HbA1c:10.8%)、高血圧、脂質異常症、喫煙があげられ、経皮的冠動脈形成術後、内服加療及び心リハを実施した。5ヶ月間の心リハにて高血圧、血清脂質は改善傾向にあり、禁煙にも成功したが、HbA1cは11.0%と依然高値であった。心リハ期間終了後より糖尿病教育を追加したところ、2ヵ月後のHbA1cは6.4%と著明に改善された。
【症例_II_】
40歳代 男性 身長164cm 体重78.4kg BMI29.1 心不全にて入院。冠危険因子として、糖尿病(HbA1c:8.9%)、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満があげられ、内服加療及び心リハに並行して糖尿病教育を実施した。5ヶ月後の心リハ期間終了時には、すべての冠危険因子において改善がみられ、HbA1cも6.3%と改善がみられた。
【まとめ】
今回の結果から、5ヶ月間の心リハ前後においてHbA1cに有意差は認められず、血清糖質に対する効果は認められなかった。それに対して、糖尿病教育を実施した症例_I_・_II_ともにHbA1cが改善されており、糖尿病教育の有用性が示唆された。よって今後は、心リハ開始時にHbA1cが高値を示している症例に対し、可及的早期より個別的に糖尿病教育を実施することが必要と考え、当院の心リハに導入することとした。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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