九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 3
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大脳基底核病変に伴う姿勢調節障害に対する足底板と弾性包帯付き歩行器の効果
*中 翔一郎石井 隆之黒瀬 一郎渡邊 亜紀梅野 裕昭佐藤 浩二
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抄録

【はじめに】
今回、担当した多発性脳梗塞の症例は難聴や認知症の影響も加わり、立位・歩行場面において円滑な重心移動能力や姿勢保持機能の低下により安定した動作遂行が行えなかった。そこで足底板や弾性包帯付き歩行器を用いて機械的に重心及び姿勢保持を誘導したことで目標としたアームウォーカー歩行の獲得に至った。本症例の姿勢調節障害に焦点をあて今回のアプローチについて考察する。
【症例紹介】
83歳、男性。診断名は多発性脳梗塞後(麻痺側は右)。CT上、基底核周囲には多数のラクナ梗塞を認めた。また、重度の難聴を有していた。入院時Br-stageは上肢・手指・下肢共に_IV_、HDS-Rは8点。ADLはBI35点であった。立ち上がりは重心の前方移動が難しく介助を要した。立位は前方への重心移動困難であり姿勢保持困難であった。歩行は体幹動揺が著明であり常時後方介助を要した。
【アプローチと経過】
訓練は立位・歩行主体に進めた。しかし、徒手的な介助や姿勢矯正を行うと抵抗を著明に示した。また、認知機能の低下により、指示理解が十分に出来ず立位・歩行時では恐怖心が増大し介助量は増加した。そこで訓練開始3週目より安定した姿勢の確保と円滑な重心移動の促通目的で足底板の活用と歩行器の工夫を行った。足底板は高さ2cmの楔状の物を踵部に取り付け重心を前方に促した。また、歩行器は後方の支柱に弾性包帯を巻き体幹前面を弾性包帯に押し付けることで安定性を確保した。1ヵ月後、セラピストが介助せずとも前方への重心移動が獲得され、歩行時の体幹動揺も軽減した。恐怖心も軽減し、20mの歩行器歩行が50m程度に延長した。4ヵ月後にはHDS-Rは8点と変化はないものの、足底板及び弾性包帯を除去した状態でアームウォーカー歩行が見守りで可能となりBIは50点となった。
【考察】
文献では脊髄小脳変性症のバランス障害に対する弾性包帯付き歩行器の効果やパーキンソン病患者の後方重心に対する足底板を用いたアプローチの効果が述べられている。今回の症例は、疾患や病態は異なるが姿勢調節障害の視点からこれらの手法は効果が期待できると考え実施した。結果、足底板を用いることで、立ち上がりから歩行における前方への重心移動と体幹・下肢の回転モーメントを機械的に効率よく促す事ができた。また、歩行器に弾性包帯を取り付け体幹の支持面を増やすことで動揺軽減を図ることができた。これら2つの工夫を行い動作を反復することで、動作要領と必要な筋活動が学習されたと推測する。今回は認知機能の低下も認めた症例ではあったが、多発性脳梗塞患者の姿勢調節障害に対する理学療法として足底板と弾性包帯付き歩行器は有効な手段と考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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