九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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頚部痛症例に対する骨盤帯マニュアルセラヒ゜ーの効果
頸椎の三次元動作解析の観点から
*坂本 智洋荒木 秀明山本 幸弘
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抄録

【目的】
運動学および人間工学的検討にて、座位姿勢の違いにより胸腰椎弯曲が変化し、その結果頭頸部の空間的位置関係や頸胸椎部の筋活動が変化することが報告されている。最近では頸部痛や頭痛を有する症例に関する臨床的検討から頚部機能障害と矢状面での体幹と頸部肩甲帯アライメントに密接な関係性を認める報告が多い。我々は臨床で頚部痛症例の視診にて骨盤帯と肩甲帯アライメントに前額面上、非対称性を有する例に対して、積極的に骨盤帯の正中化を目的としたマニュアルセラヒ゜ーを行っている。その結果、骨盤帯の正中化に伴い肩甲帯の左右対称化と頸椎可動域が改善する症例を多数、経験している。しかし、頸部痛症例に対する骨盤帯マニュアルセラヒ゜ーの効果に関する報告は、見当たらない。今回、頚部痛症例に対して骨盤帯の正中化を目的としたマニュアルセラヒ゜ー前後での頸部可動域を測定し、良好な結果を得たので報告する。
【方法】
対象は頚部痛を有して外来通院治療中の12例とした。頸部痛症例では心理社会的影響が危惧されるため、全症例に対して Neck Pain Disability Index(以下NDI)を実施し、重度障害例を除外した。治療比較対象群はNDIで15~24点の中等度障害の8(男性6、女性2)例とした。年齢は23~53(平均34.2)歳で、罹病期間は3~18(平均6.3)週であった。除外診断項目として、顕著な下肢アライメント障害や神経学的脱落所を有する症例を除外した。方法はZEBRIS社の超音波式三次元動作解析器WinSpineを使用した。測定肢位は頚椎可動域が胸椎後彎の影響を避けるため立位での前後屈、側屈、回旋方向とした。骨盤帯正中化マニュアルセラヒ゜ー施行直後、再度同様に頚椎可動域を測定し、治療前後で比較した。対象者には事前に十分な説明を行い、同意を得た。
【結果】
骨盤後方回旋側と反対側への頚椎側屈と回旋方向に可動域制限を有する症例においては骨盤帯正中化マニュアルセラヒ゜ー施行後、頚椎可動域は有意(P<0.01)な改善を認めた。前後屈は軽度改善傾向であったが統計学的に有意差は認められなかった。
【考察】
下肢アライメントに異常がなく中等度の頸部障害を有する頚部痛症例において骨盤帯の正中化により頚椎可動域が有意に改善した。可動域改善例は、骨盤後方回旋に伴い同側の肩甲帯が外転および下方回旋を呈している頚部痛症例であった。この症例群では肩甲帯が下方回旋することにより僧帽筋上部線維と肩甲挙筋が伸張され、過緊張を生じており、骨盤帯の正中化により肩甲帯が上方回旋を獲得できた症例ではこの筋群の過緊張が消失し、有意に回旋と側屈可動域が改善したものと考えられた。
【まとめ】
骨盤帯を正中化させることで頚椎の可動域、特に側屈と回旋に有意な改善が得られたことから、骨盤帯と肩甲帯が一連の運動連鎖として関与していることが考慮された。そのため、頸部肩甲帯の機能障害に対して骨盤帯の評価、治療が重要であることが示唆された。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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