九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 31
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関節トルクを用いた表面筋電図の正規化の一考察
*安東 大輔鶴崎 俊哉浜本 寿治門口 修二
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抄録

【目的】
表面筋電図は正規化を行わないとデータ間の比較ができない為、最大随意収縮を用いて正規化されることが多い。しかし、この方法は環境や被検者の状態に左右され、再現性も低い。そこで関節トルクの推定により筋ごとの発揮するトルクを筋電図の正規化の一手法として使用できるのではないかと考え、足関節の底背屈について検討を行った。
【方法】
対象は、下肢・中枢に既往のない健常成人で、研究の趣旨・内容等を十分に説明し同意が得られた22名(平均年齢24.3±3.3歳)であった。被験筋は右側の前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋とし、筋腹の1/3遠位に電極間距離20mmにて貼付して筋電信号を採取した。実験肢位は非験側足底非接地での90度座位とした。験側は足関節背屈10度から底屈30度まで10度ごとに測定した。収縮様式は等尺性収縮とし、漸増背屈運動を5秒間、同様に漸増底屈運動を5秒間、底背屈の同時収縮を5秒間行わせ、その状態のまま背屈方向へ5秒間、その後底屈方向へ5秒間の3パターンを行わせた。
筋電信号および関節トルクは筋電図測定装置(エヌエフ回路設計ブロック社製)を経由し、サンプリング周波数1kHzにてパーソナルコンピュータに取り込んだ。測定した5秒間の信号は、0.5秒毎に全10データを抽出した。抽出したデータは、MATLAB Ver.6.5.1(Math Work社製)を用いてdaubechies5で離散ウェブレット変換を用いた多重解像度解析を行い、分解レベルjにおけるエネルギー密度の総和である PD(j)と筋電信号の総パワー密度であるTPwを求めた。実測トルクと各筋のTPwの平方根より重回帰式をStatView-J 5.0にて求め、有意水準5%にて筋電信号と関節トルクの関係を求めた。
なお、本研究は長崎大学大学院医歯薬総合研究科倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号08061293)。
【結果】
個人間のデータにおいて、実測トルクと推定トルクの回帰係数は背屈10度、底背屈0度、底屈10度、底屈20度、底屈30度で0.7039~0.9655、0.6433~0.9538、0.7707~0.9817、0.7880~0.9853、0.8210~0.9805であった。
各関節角度において、実測トルクと推定トルクの回帰係数は背屈10度、底背屈0度、底屈10度、底屈20度、底屈30度で、0.8913、0.9057、0.9281、0.9226、0.9343であった。
【考察】
個人間でのデータでは、実測トルクと予測トルクが各角度で高い相関があった。このことより推定式は成り立つと考えられる。また、各角度において験者間の実測トルクと予測トルクにも相関が得られた。このことより各角度では、これらの筋トルクにより験者間の比較ができると考えられ、この方法を用いることで筋電図信号を正規化できることが示唆された。
今後日常生活へのアプローチにつなげるためには、肢位による違いや角度要素を含めての推定式を考案しなければならない。さらに動的な状況下での筋電図の正規化などにも用いる事ができるかを検討する必要があると考えられる。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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