九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 12
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C1高位頸髄損傷者に対しNPPVを導入した一症例
IPPVからNPPV移行までの努力性肺活量と自発呼吸時間の経過
*有地 祐人椎野 達小川 栄美子植田 尊善
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抄録

【はじめに】高位頸髄損傷者は呼吸筋麻痺を呈し、重度の換気障害を伴うため受傷直後は、侵襲的陽圧換気療法(IPPV)による呼吸管理を行うことが多い。しかしIPPVの管理は呼吸器合併症やコミュニケーション困難等の問題を併発する。そのためIPPVに代わり、近年は徐々に高位頸髄損傷者に対しての非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が広まりつつある。今回NPPV導入の機会を得たため、努力性肺活量(FVC)と自発呼吸時間に着目し、その経過を報告する。
【対象と経過】対象は本報告に関し趣旨を説明しご本人に同意を頂いた20代男性。診断名は第1頸椎脱臼骨折後頸髄損傷。PT初回評価時(20日目)はASIA分類A、感覚機能はC2領域以下脱失。運動機能は胸鎖乳突筋1・頭部伸展1・以下0。FVCは0ml。受傷後400日の評価での変化点は、運動機能は胸鎖乳突筋3、頭部伸展2・僧帽筋1。FVCは480ml、自発呼吸時間は平均30分。経過日数は受傷日を1日目とした。7日目前医にて頚椎に対するopeと気管切開術施行。19日目リハ目的で当センターに転院。20日目リハ開始。45日目リクライニング式車いす乗車開始。93日目7.0mmカフなしカニューレに移行し、発声が可能。115日目自発呼吸練習開始。146日目夜間鼻マスク・鼻プラグにて就寝。157日目電動車いす乗車開始。167日目日中はマウスピースにて出棟。232日目気管切開部を閉じNPPVへ移行。
【方法】FVCと自発呼吸時間の測定方法はオートスパイロAS-302(ミナト社製)を使用し、3回測定の最大値をFVCの値とした。測定期間は入院初日、72時間後、2・4・6・8・12・16週、NPPV後は1週おきに行った。自発呼吸時間の測定はNPPV導入時期から1週おきに開始し、SPO2:90%以上での時間を測定した。
【結果】FVCでは0→0→30→70→140→480mlへ上昇。(NPPV移行期ではFVCの値は一時減少するものの、気管切開部が閉じることでFVCの値は上昇した)自発呼吸時間もまた3→30分へ最終的に延長した。
【考察】FVCの値が増加することで、自発呼吸時間も共に延長された。IPPVからNPPVへ移行したことで、容易に自発呼吸を行う機会が増えたことがFVCと自発呼吸時間の増加の一番の要因である。またNPPV導入時期に一時的にFVCの量が低下するがこれは、鼻腔や、気管切開部からのエアリークが原因と考えられる。本症例にNPPVが導入されたことで発声、痰の量の減少、息だめ等が可能となった。またIPPVより呼吸器合併症のリスクは軽減され、呼吸状態は安定し、患者のQOLも高まると考えられる。しかし患者へ関わる側が医師と密に連携を取り、NPPVのメリット・デメリットを十分理解した上で、適切に行う必要があるため、本報告の経過が治療者側への方向性を示す一助となれば幸いである。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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