九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 320
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自立生活の支援・介護負担軽減を目指して
~発症から2年半経過した左片麻痺症例の上衣着衣動作への介入~
*吉田 裕志
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抄録

【はじめに】
 今回、脳出血発症より2年半更衣動作の介入が行われないまま経過した左片麻痺の症例を担当した。上衣着衣動作の手順・方法が分からず、これらを指導・訓練する事で着衣動作が自立した為、介入方法を踏まえ報告する。
【症例紹介】
 50歳代男性。平成19年8月に脳出血を発症し、左片麻痺を呈する。身体機能は、Br.Stage上肢II・手指II。上肢感覚は、表在・深部共に重度鈍麻。認知機能は、特に問題なし。入所前の生活は、基本動作・歩行は4脚杖にて自立。日常生活動作は、更衣のみ妻が介助を行っていた。その他自立。主介護者である妻が上肢の関節・筋肉に疼痛が出現し入院する為、平成22年2月から約1ヶ月間当施設への入所。
【経過及び結果】
第1期:入所~1週間半
 入所当初、更衣動作を確認すると、麻痺側の肘・肩まで十分に通さないまま上衣の着衣を行っており、上衣の着衣にのみ一部介助が必要であった。本人は、手順・方法がわかっていなかった為、動作の訓練・指導を行い、手順書を作成する事でいつでも着衣の手順・方法を確認出来る様にした。
第2期:入所1週間半~3週間目
 徐々に着衣が出来る様になってきたが、着衣をする機会が訓練時のみだった為、自主訓練表を作成・導入し、一般棟にて着衣動作訓練を自主的に行ってもらった。
第3期:入所3週目~4週目(退所)
 自主訓練表を導入した事で、着衣動作の回数も増え、自立して着衣が行えるようになった。更衣動作の家族指導を行う。
第4期:自宅退所後
 上衣着衣動作も定着しており、更衣動作が自立していた。
【考察】
 本症例は、2年半前に脳出血を発症し、左片麻痺を呈していた。年齢が若く、認知機能面も問題なく、本人・妻のdemands、入所前の日常生活の情報から上衣着衣動作の介助量軽減を目標に介入を行った。発症後、急性期病院に入院したが、基本動作訓練を中心に訓練を行っており、基本動作が自立した事で、自宅退院となっていた。その為、更衣動作の手順を教わった事がなく、着衣の手順や方法を十分理解していなかった。また、妻が本人一人では出来ないと思い、今まで更衣動作を介助していた。これらの理由で、着衣動作が脳出血発症から2年半自力で行えていなかった。しかし、着衣動作の訓練・指導を行い、手順書・自主訓練表を作成・導入した事で着衣動作が自立となった。
【まとめ】
 今回、1ヶ月という短い期間で、集中的かつ効果的なリハビリテーションを行う事で、上衣着衣動作を獲得する事が出来た。維持期のリハビリテーションは、身体機能・動作能力の維持・向上を図るだけでなく、自立生活の支援・介護者の負担軽減を目的としている。「できるADL」と「しているADL」を整理し、いかに「しているADL」に繋げられるかで、患者・利用者様の自立生活の支援・介護者の負担軽減を図る事が出来ると再認識出来た。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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