九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 4
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全身性ジストニア患者に対するリハビリテーションの経験
*野田 真依子篠田 聡青木 三利子宮守 龍一興呂木 祐子平田 好文大隈 秀信又吉 達堀尾 愼彌
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抄録

【はじめに】
今回、全身性ジストニア患者のリハビリテーション(以下、リハ)を実施する機会を得た。筋緊張異常により随意運動困難であった症例に対し、感覚入力の工夫と視覚的・聴覚的フィードバックを利用した反復運動を行い、動作の再学習を図った。結果、随意運動が向上し動作の改善が得られたので、考察を加え報告する。尚、症例には説明と同意を得ている。
【症例紹介】
34歳 女性 全身性ジストニア 脳深部刺激療法術後
【評価と理学療法】
初期時(術後一ヶ月半)、筋緊張は動作・姿勢・精神状態によって亢進及び弛緩するなど変動が著明であった。四肢の随意運動困難で、感覚は表在・深部共に鈍麻しており、前腕や下腿を空洞に感じるというボディイメージの崩れを生じていた。車椅子主体の生活であったが、家屋内は伝い歩き、階段は四つ這いで移動していた。
筋緊張は臥位で比較的安定していたため、体幹、下肢を中心に臥位での運動学習を図った。随意運動の向上に伴い起立、歩行練習を開始した。この際、両上下肢に弾性包帯で圧刺激を加え感覚入力の強化を試みたところ、ボディイメージが改善し、運動時筋緊張を緩和することができた。また、鏡やビデオなど視覚的・聴覚的フィードバックを利用し、起立歩行訓練には装具療法での感覚入力の一定化を図った。
これらの訓練を約四ヶ月間継続した結果、感覚は軽度改善し、随意運動は向上した。家屋内は独歩、階段は手すりで昇降可能となり、調理への参加をするなど活動幅も拡大した。
【考察】
ジストニアとは、「持続的な異常筋緊張により捻転性あるいは反復性の運動や異常姿勢をきたす病態」と定義されている。本症例は一般的なジストニア症状に一致し、随意運動は共収縮と陰性ジストニアによって阻害され、さらに体性感覚の鈍麻、ボディイメージの部分的欠如を生じていた。症例のフリップフロップ現象は圧刺激の入力で軽快が見られ、ボディイメージが改善した。
一般的に、運動を的確に制御したり新しい運動を獲得するには、筋骨格系からのフィードバック情報が重要な役割を果たすとある。また、運動学習においてMarkovの感覚運動制御モデルで、「正常な感覚入力が中枢神経で処理され正常な運動を引き出し、出力された運動は感覚情報として再入力され、反復により強化される」と述べられている。このことから、ジストニア症状が軽快した環境のもと徒手的な正常運動パターン、装具療法による歩行練習を反復したことで、運動学習が促進され、姿勢保持能力向上や正常な運動パターンの再獲得による円滑な動作遂行に繋がり、活動幅が拡大したものと考える。
ジストニア患者のリハ報告はまだ少なく、その症状は様々でリハのアプローチ方法も確立されていないのが現状である。今回の症例を通し、ジストニア症状を軽快させる刺激方法を見出し、フリップフロップ現象を引き出すことがリハ遂行のポイントとなると思われた。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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