九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 6
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振動刺激による疼痛および痙縮の緩和がADL改善をもたらした胎児性水俣病患者の1例
*遠山 さつき臼杵 扶佐子
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抄録

【序論】
 維持期の神経疾患患者に振動刺激や促通反復療法(川平法)を継続して行った報告はない。今回、足底痛が強くリハビリテーション(リハ)が困難であった50代の胎児性水俣病患者に、振動刺激および促通反復療法を実施し、1年の経過で疼痛と痙縮の改善を経験した。そのリハ内容と症状の変化に考察を加え報告する。なお、この報告は当事者の同意を得ているものである
【症例紹介】
 50代男性。胎児性水俣病患者。
【治療開始前の所見】
 MAS:上肢2、下肢3(右>左)。ROM:膝関節伸展右-10°左-20°、足関節背屈右-10°左0°、足関節外反右-10°左0°。内反尖足著明。膝蓋腱反射、アキレス腱反射:両側+++。Babinski反射:両側強陽性。感覚:右正中神経支配領域に中等度鈍磨。全身性のジストニアがあり、動作緩慢。構音障害、嚥下障害あり。右足底腱膜の緊張亢進に伴う疼痛(VAS 10/10)あり。右手掌腱膜の緊張が強く伸展の柔軟性低下あり。ADL:FIM(61/126)。寝返り、起き上がりに時間を要す(50~60秒)。手すり使用で立位可能ではあるが、疼痛のため右足底の接地が不十分で安定せず。移乗は介助ベルトを使用し要介助。
【OTプログラム】
 1)振動刺激:スライブ社のMD-01を用い右手掌、左大腿内側部、右足底に同時に各15分50Hzにて実施。2)促通反復療法:振動刺激後、下肢全体の促通(股関節伸展・外転、伸展⇔屈曲・内転、膝屈曲、足関節背屈)、股関節内外転、膝関節屈曲・伸展、足関節背屈を各50回実施。3)ADL訓練:起居動作、移乗動作、摂食嚥下訓練。
【1年後の変動所見】
 MAS:下肢2(右<左)。ROM:左膝関節伸展-10°(他変化なし)。膝蓋腱反射、アキレス腱反射:両側++。Babinski反射:両側弱陽性、右足底痛(VAS 5/10、振動刺激直後はVAS 3/10)。右手掌腱膜の緊張軽減、伸展の柔軟性向上。ADL:FIM(63/126)。寝返り、起き上がり時間30~40秒と短縮。立位動作、移乗動作:監視にて可能。
【考察】
 症例は、慢性化していた強い右足底痛のためリハを拒否し、ADLに支障をきたしていた。振動刺激と促通反復療法を併用したリハを1週間に2回ずつ1年間継続した結果、疼痛および痙縮が軽減し、運動機能と起居動作、移乗動作が向上した。治療開始前は左下肢より重篤であった右下肢の痙縮が左下肢より軽減したことから、右足底の振動刺激と促通反復療法の併用は足底腱膜の緊張亢進の軽減のみならず痙縮抑制にも有効であったといえる。亜急性期における緊張性足底反射に対する振動刺激の効果についての報告はあるが、維持期の神経疾患患者の痙縮抑制に足底の振動刺激と促通反復療法の併用が有効であったという報告はなく、その機序と方法についてさらに検討を続けている。

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