九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 13
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認知機能と上肢反応速度の関係性について
~熊本県認知症予防モデル事業での取り組み~
*川畑 智
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抄録

【目的】
平成21年12月より熊本県庁高齢者支援総室(現、長寿社会局)の事業として「熊本県認知症予防モデル事業」が始動し、「あそび」と「リハビリテーション」を融合させた認知症予防プログラムの研究開発が進んでいる。
今回は、身体機能と認知機能との関係性について調査し、一定の知見を得たので、ここに報告する。
【対象】
熊本県認知症予防モデル事業を受託した県内2施設の事業参加者63名(男性16名、女性47名、平均年齢82.6±6.9歳、要支援者数44名、要介護者数19名)。
【方法】
身体反応評価としては、バンダイナムコ社製「ワニワニパニックRT(以下、RTマシン)」の得点と、三協社製「アイタッチ(以下、光反応マシン)」を用いた120秒間の光刺激反応における正答数、誤答数、無答数の測定を行った。また認知機能評価として改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(以下、HDS-R)を実施し、疑認知症群と非認知症群の2群に分類し、2群間における身体反応の違いや、身体反応評価と認知機能評価との関係性について検証した。統計処理にはF検定、2標本t検定を行い、有意水準は5%以下とした。
また、本研究は事業参加者や家族の同意に加え、事業を受託した2施設の各倫理委員会より承認を受けており、ヘルシンキ宣言に沿った研究である。
【結果】
疑認知症群(HDS-R:16.3±3.7点)と非認知症群(HDS-R:25.1±2.5点)の身体反応を比較すると、RTマシン得点では、疑認知症群37.3±20.4点、非認知症群53.8±23.4点で、有意な得点差が認められた(p<0.05)。
また、光反応マシンでは、正答数において、疑認知症群78.3±42.4点、非認知症群110.7±37.6点、無答数において、疑認知症群37.4±17.0点、非認知症群25.5±10.8点と、2群間に有意差が認められた(p<0.05)。
【考察】
RTマシンや光反応マシンは、視覚刺激に伴う上肢反応を測定するものであり、視覚情報の入力から叩打出力までを瞬時的、反復的に反応することが求められる。
今回、非認知症群と比べ、疑認知症群ではRTマシンや光反応マシンの反応回数が有意に低下していることがわかったが、この原因として、認知機能低下による「脳内における情報処理能力の低下」に伴う「動作の不活発性」や「注意力・集中力の減退」などが考えられる。
光反応マシンの正答数を1回反応時間で算出すると、疑認知症群では1.53秒/回、非認知症群では1.08秒/回となり、疑認知症群の反応速度は、非認知症群の約70%であることが示唆される。
【まとめ】
今回の研究で、身体反応速度が認知機能に深く関与していることが分かった。今後は、認知機能スクリーニングテストとしての可能性や、転倒骨折との関係性、認知機能と身体反応の学習効果の関係性についても研究していきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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