九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 89
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腰部手術後、胸郭拡張エクササイズ介入効果の検討
~2症例での比較~
*安部 信子村山 みゆき甲斐 之尋
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抄録

【はじめに】
当院で実施されている腰椎椎体後方固定術(以下PLIF)後・椎弓形成術後のコルセット着用期間は3カ月間である。臨床上、コルセット除去後の体幹可動域低下・胸郭拡張低下を多く経験する。今回、コルセット着用期間から胸郭拡張を促すエクササイズを導入することにより胸郭拡張低下予防を促すことができないかを2症例で検討した。尚、本研究は当院の倫理委員会より承認を受けている。
【方法】
安静時・最大吸気時・最大呼気時の下位胸郭(第10肋骨位)の周径、左右肋骨弓間の距離を測定、チェストグリッピングテストを施行した。症例1は胸郭拡張エクササイズを1週間実施し、症例2は未実施とした。胸郭拡張エクササイズについては、背臥位にてコルセットを除去し下位胸郭の拡張を意識しながらの腹式呼吸5分と横隔膜リリース5分を自主エクササイズで行わせた。このエクササイズを1日3セット1週間行い1週間後に再評価し、2症例で比較・検討した。
【症例1】
35歳女性・腰椎椎間板ヘルニアによりPLIF(L4/5・L5/S1)を施行。術後3週5日。結果:安静時介入前61.6cm→介入後62.0cm(差+0.4cm)、最大吸気時63.5cm→64.5cm(安静時からの拡張差1.9cm→2.5cm、差+0.6cm)、最大呼気時57.8cm→57.8cm(安静時からの拡張差3.8cm→4.2cm、差+0.4cm)、左右肋骨弓間距離8.0cm→9.5cm(差+1.5cm)、チェストグリッピングテストにて介入前右下肢自動伸展挙上時に下位胸郭が内側へ引き込まれたが、介入後現象は消失。
【症例2】
31歳女性・馬尾神経腫瘍により腫瘍切除術及び椎弓形成術(L3/4)を施行。術後2週5日。結果:安静時介入前65.8cm→介入後65.9cm(差+0.1cm)、最大吸気時66.4cm→67.4cm(安静時からの拡張差0.6cm→1.5cm、差+0.9cm)、最大呼気時60.8cm→60.9cm(安静時からの拡張差5.0cm→5.0cm、差0.0cm)、左右肋骨弓間距離10.5cm→10.5cm(差0.0cm)、チェストグリッピングテストは介入前後ともに陰性であった。
【考察】
胸郭拡張エクササイズ介入の効果として、安静時の下位胸郭横径拡張増大・肋骨弓間増大・チェストグリッピングテスト陰性がえられた。これは、今回実施した胸郭拡張エクササイズの効果として肋骨下部のスティフネスの減少と腹式呼吸パターンへ促すことができていると推察される。しかし、最大吸気・呼気時での下位胸郭横径拡張については、エクササイズ未実施の症例2の方が効果を得た。今回の胸郭拡張エクササイズでは横隔膜運動を促すことができたが、拮抗・協同作用としての腹筋群の機能向上を得ることができず、最大吸気・呼気時の胸郭拡張効果がえられなかったと推察する。
【おわりに】
今回は短期間であったことと、2症例間の検討であったため、エクササイズの意義を実証するには乏しいデータであった。今後は体幹筋機能の評価・エクササイズを含めた検討とコルセットが胸郭拡張に及ぼす影響について検討を行っていく。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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