九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 9
会議情報

全失語症例に対する行動学的介入
~排泄コントロールを通して~
*大森 政哉山下 こず恵吉嶺 公晴岩村 浩平酒匂 翔伍湯田平 美咲東垂水 明子牧角 寛郎根路銘 周子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
今回、脳血栓症により左片麻痺と全失語を主とし、失行失認を含む多様な高次脳機能障害を呈した症例に対し、オペラント学習を応用した行動学的介入を実施した。本症例の日常生活における表出に関しては、そのほとんどが体動による意思伝達であり、介助者側はその意図の推察が困難な状態であった。しかし、体動後のトイレ誘導を反復することにより、それがコミュニケーションの手段となり、ADLにおける排泄コントロールで介助量の軽減が認められたので報告する。
【症例紹介】
70歳代男性、左利き、病前の性格:亭主関白であり他者の助言など一切聞き入れない頑固な性格。
【評価】
診断名:脳血栓(右中大脳動脈領域)、現症:左片麻痺Br.stage:上肢2手指2下肢3、高次脳機能障害:全失語・動作性保続・左半側空間無視・注意障害・遂行機能障害、ADL:FIM29/126(排泄コントロール1点)
【介入方法】
発症5ヶ月目より8週間実施した。排泄コントロールへの介入として、日中のトイレ誘導を実施。誘導は8時から17時までの2時間間隔の時間誘導と、体動出現時に行った。症例の体動表出に対する介助者側の反応をトイレ誘導に固定することでオペラント行動の強化を図ることを目的とした。
【経過】
非介入期:ADLにおいて柵を掴んでがたがたする動作や脱衣動作を急ぐ様な激しい体動が見受けられた。これに対して介助者はオムツ交換や車いす移乗など様々な対応を検討、実施して体動の解消に努めたが、解消までに多くの時間を要した。また、体動後に失禁が多い傾向にあった。介入期:開始より 3週目までは時間誘導が中心となり、誘導時には排泄が確認された。体動後の誘導に関しては、排泄が行われないことや失禁が確認され、排泄はほとんど行われなかった。4週目以降で体動後の排泄が確認されるようになり、排泄回数に急激な増加が認められた。また、全体の経過で失禁回数は1日1回程度まで減少し、体動後の誘導で排泄が行われない回数も同程度となった。
【結果】
日中の失禁回数が1週間に38回から7回まで減少した。体動後の排泄が可能となった。FIM29/126から30/126へ改善した。
【考察】
過去の失語症研究より失語症者の多くはコミュニケーションが成功する手段をほとんど自動的に求め開発しているとされている。今回、意思疎通が困難な症例に対し、オペラント学習を応用した行動学的介入を実施した。オペラント条件付けは自発行動後の環境の変化に応じて、その後の自発行動が変化する学習である。今回は排泄意表出の獲得を目的とし、症例の体動に対する介助者の反応をトイレ誘導に固定・反復した。この行動学的介入の実施により学習が促進され、体動がコミュニケーションの手段となり失禁回数の減少に至ったと考えられる。

著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top