九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 145
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人工膝関節全置換術後の運動器不安定症
*水津 文昭藤戸 郁久森口 晃一原口 和史
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抄録

【はじめに】
変形性膝関節症(膝OA)により人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行される患者のほとんどが高齢者であるため、臨床上、膝のみならず他の関節機能の低下を有していることが多い印象がある。そのためTKAにより歩行時の膝関節痛が解消されても、決して問題が解決されたとは言い難いと思われる。特に、転倒は大きな問題の1つである。そこで今回、TKA後の患者に対して、運動器不安定症の診断基準であるTimed up and go test(以下TUGT)、開眼片脚起立時間を調査したので報告する。
【対象・方法】
2009年6月から2010年2月、当院でTKAを施行した症例のうち、経時的に運動器不安定症に関して調査を行った21例(全例膝OA、両側例1例、片側例20例、男性2例、女性19例)を対象とし、術前、術後1,2、3週におけるTUGT、開眼片脚起立時間の値を比較検討した。。
【結果】
運動器不安定症の診断基準ではTUGT11秒以上、開眼片脚起立時間15秒未満である。対象患者は術前よりTUGT、開眼片脚起立時間ともに19例で90%が基準を満たしていた。 TUGTの術前19.94±15.87、1週21.31±16.56、2週21.31±10.98、3週17.18±8.38となり、開眼片脚起立時間の術前7.62±9.95、1週5.18±10.83、2週7.74±12.93、3週10.54±12.34であった。術後3週では術前と比較してTUGTは13.96%、開眼片脚起立時間は38.32%と改善していた。しかし、術後3週でTUGTは16例で76%、開眼片脚起立時間は15例で71%が運動器不安定症の診断基準を満たしていた。
【考察】
TKA後の可動域・筋力についての報告はみられるが、TKA後患者を対象に運動器不安定症について調査した報告は少ない。今回の調査では術後3週で両評価項目ともに術前のレベルまで改善した。しかし、運動器不安定症の観点からみると術後3週では運動器不安定症が残存した状態であり、転倒やADLに大きく影響していると考えられる。膝関節の機能は回復したが他の要因が残り、TKA後の理学療法では膝関節だけでなく全身に着目していく必要がある。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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