九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 169
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姿勢へのアプローチを行い経口摂取が可能となった一症例
*持永 博幸大野 由夏子橋口 久仁子上西 祐樹豊丸 雅恵久保田 空長嶺 英博
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キーワード: 嚥下障害, 姿勢, 経口摂取
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抄録

【はじめに】
今回入院中に誤嚥性肺炎を発症し、長期臥床による全身的な筋力低下、不良姿勢、嚥下障害を呈したパーキンソン病の症例を経験した。嚥下機能の改善を目標に頭頸部、体幹、姿勢へのアプローチを行った結果、経口摂取の獲得につながったので考察を加え報告する。本報告に関しては本人の同意を得て実施した。
【症例紹介】
70代男性、Yahrの重症度分類でStage_III_、食事は常食を自己摂取していた。当院入院中に誤嚥性肺炎を発症し、挿管後人工呼吸器管理となり安静臥床になった。人工呼吸器離脱後は喀痰量が多く、気管切開術が施行され、カフ付きカニューレ装着となった。基本動作、日常生活活動は全介助で、食事は経鼻経管栄養となった。
【作業療法評価】
嚥下造影検査(以下VF)ではムセは認められなかったが、水分、ゼリーで誤嚥量8割と多量の誤嚥が確認できた。検査体位は車椅子座位で実施した。脊柱は全体的に右に側屈し、胸椎・腰椎の後弯、骨盤も後傾し、それに伴い胸郭が左拡大、右狭小していた。上部体幹は屈曲位であり、両肩甲骨も外転し、頭頸部の不良姿勢を助長していた。頭頸部は、頭部後屈、頸部は著しく前屈、右側屈し食物が候頭侵入しやすい状態であった。
【介入方法】
不良姿勢の原因となっている筋緊張や筋短縮の軽減をアプローチの目的とした。まず背臥位で両肩甲骨内転・下制、体幹左側屈、脊柱は全体的に伸展し、背面部がしっかりと床面へ接することを考慮し、アライメントを整えた。骨盤前傾へもアプローチを行った。頭頸部に対しては、頸部の全体的な後屈を行い、特に頭部は前屈を促すために後頭下筋群の伸長を行い、右側屈のアライメントも整えた。また全体的な体力や活動性の向上を図るために歩行も実施した。
【結果】
評価時よりも頭頸部や体幹の姿勢が整い、リクライニング位で頭部前屈位、頸部後屈位が可能となった。VF再評価時も体位調整にて全ての模擬食品で誤嚥を認めず、直接嚥下練習が可能となった。最終的には車いす座位で全粥、キザミ食(あんかけ対応)、水分とろみ付きで1/4ほど自己摂取可能となった。
【考察】
姿勢管理に着眼点をおき、その中でも今回は頭頸部の位置を重要視した。一般的には誤嚥しにくい肢位は頸部前屈位と言われているが、症例は頭部後屈位、著しく頸部前屈位をとり喉頭侵入しやすい状態であった。そのため頭頸部軽度前屈位を目指し、頭部前屈、頸部後屈と個々の運動にアプローチを行った。また体幹の崩れも頭頸部の崩れを助長しており、全身の姿勢調整も頭頸部の安定に必要と考えた。個々の症例にあった良肢位の設定が経口摂取の獲得には重要であると考えられた。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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