九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 175
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下腿及び足部疾患に対するOT介入に関する一考察
*中村 早央里牛津 智美吉田 真奈美朝倉 みり堤 逸人中山 真一
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抄録

【はじめに】
 今回下腿・足部疾患(以下、膝下疾患)患者に対しADL・IADLや趣味活動等へのアプローチを行い、作業療法の必要性を感じた。膝下疾患に対して作業療法士(以下OT)が介入してはならないという決まりはないのに何故OT介入数が少ないのか、また当院のOTがどのようなアプローチを行っているのか興味を抱いた。当院における上記患者へのOT介入数を調べ、OT介入の現状と必要性について検討を行った。
【対象・方法】
 平成21年度の整形外科入院患者より膝下疾患の患者を抽出し、PT・OT・STの介入状況を調査した。また、OT介入患者については担当OTがどのようなアプローチを実施したのか把握する為にアンケート調査を実施した。アンケートは機能・基本動作・ADL・IADL訓練、家屋調査、介護保険・サービス利用状況、家族・他職種との連携、精神・心理面の項目を設け、各項目に対し自由記載とした。
【結果】
 全204症例のうち膝下疾患は56症例であった。PT介入は全症例に行われていたが、OT介入は27症例であった。アンケート結果を以下に述べる。介入初期(免荷時期)はROM訓練や筋力強化訓練等の機能訓練を主に実施し、移乗やトイレ・更衣動作等のADL訓練を環境調整も含め行っていた。また、早期より自宅環境に応じた訓練を行うため、患者本人や家族に当院独自の家屋調査表を用いて家屋状況聴取を行うと共に、必要に応じてMSWに介入を依頼していた。介入中期(荷重可能時期)は荷重下でのADLを獲得するため、許可された荷重量の範囲でADL訓練を進めていた。介入後期(全荷重可能時期)では、片脚立位など下肢の支持性が要求される入浴動作や屋外歩行訓練を実施していた。IADLについても、自宅での生活を想定した家事訓練や買い物訓練等を行っていた。家屋改修などの環境調整も実施していた。精神・心理面へのアプローチは全期を通じて必要であり、不安軽減の為に心理支持的に関わり、余暇時間を有意義に過ごしてもらう為に趣味活動の提供も行われていた。
【考察】
 今回、膝下疾患へのOTに関する文献を調べたがほとんど見当たらなかった。このことから、当院ばかりでなく全国的にも膝下疾患に対しOTが介入しているケースは少ない傾向にあるのではないかと推測される。しかしながら今回の調査にて膝下疾患患者に対してOTが早期から介入することでより早期から患者のADL拡大を図り、IADLや環境調整に対する関わりを十分に提供できたという結果を得た。また、文献では上肢を適切に機能させるためには体幹や下肢の強化が必要であると述べられている。ADL・IADLでスムーズな上肢の動作を保障するためにも、今後はOTも下腿・足部にも十分に着目し、標準的なアプローチ方法の確立や下腿・足部疾患に関する知識を深めることが重要であると考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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