九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 119
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Branch atheromatous diseaseを呈した症例に対する急性期理学療法における一考察
*藤田 努尾畑 十善
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キーワード: BAD, NIHSS, 急性期理学療法
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抄録

【はじめに】
 Branch atheromatous disease (以下、BAD)は、Caplanが1989年に提唱した病理学的概念であり、本邦でも広く知られている。臨床経過の特徴としては、急性期治療を開始した後でもしばしば症状増悪がみられ、狭義のラクナ梗塞に比べ症状が重篤化、遷延することがある。そのため、日常臨床上、急性期リハビリテーション領域において難渋するといった報告がみられる。そこで今回、BADと診断された症例に対して理学療法を行ったので、考察を加え報告する。なお、本人に趣旨を説明し、同意を得た上で検討を行った。
【症例紹介】
 年齢:50代 性別:女性 診断名:脳梗塞 合併症:高血圧、高脂血症 現病歴:体が傾くような感じがしたが様子をみていたところ、翌日に右上下肢が動かなくなり当院受診。
【検査結果・評価】
 MRI所見:左基底核から放線冠に新鮮な梗塞巣あり。頸動脈超音波検査:内中膜複合体:右0.78mm 左0.73mm Plaque score:2.7 有意狭窄なし 心臓超音波検査:収縮駆出率67% 弁:器質的変化なし 心電図所見:洞調律 入院時NIHSS:9点
【理学療法訓練】
 入院2日目:ギャッチ45° 3日目:ギャッチ60° 4日目:ギャッチ90°、ベッド端座位 5日目:起立訓練、平行棒内歩行訓練 入院後1W:一本杖歩行訓練 入院後2W:回復期病院へ転院
【考察】
 本症例は、当院受診前日の時点で仕事中に体が右側に傾くようになり、その翌日、不全麻痺から一時完全麻痺へと増悪がみられている病態経緯があった。過去の進行性脳卒中の病態予測に関する研究では、主幹動脈狭窄の有無や長軸方向に長い病変を有すほど有意な関連因子であると報告されている。本症例のMRI所見では、3スライスに縦走する新鮮な梗塞巣を認めているものの、内頚動脈には有意な狭窄は認められず、動脈硬化の定量的評価指標の一つでもあるPlaque scoreは2.7に留まっていた。また、心機能に関しても不整脈や器質的な弁異常、駆出率異常は認められない状態であった。しかし、右上下肢の運動麻痺により入院時NIHSSは9点であった。入院2日目よりギャッチ45°から開始し、3日目60°、4日目90°へと移行。経時的なバイタルサイン、自覚症状は共に安定しており当院入院から5日目、担当医師と協議し安静度フリーへと移行。速やかな基本動作確立が可能となり、入院後1Wから一本杖歩行訓練を開始。入院後2Wで右上下肢の運動麻痺軽減によりNIHSSは入院時9点から2点へと改善し、近隣の回復期病院へ転院となった。
【まとめ】
 今回、BADと診断された症例に対してMRI所見や各超音波検査、心電図などの検査結果などを含めた包括的な評価により、急性期の症候増悪を病態として抱えるBADと診断された症例の急性期における病態把握を試み、担当医師と連携を図りながら理学療法を展開した。

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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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