九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 030
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肩腱板修復術後の可動域調査
~直視下腱板修復術と鏡視下腱板修復術との比較~
*稲津 圭樹園村 和輝井上 裕久大塚 豊甲斐 功一井上 誠一
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抄録

【目的】
 当院では手術適応である腱板断裂患者に対し直視下腱板修復術(以下ORCR)を施行しており、また平成21年1月以降より鏡視下腱板修復術(以下ASRCR)も併せて行っている。肩腱板修復術においてORCRとASRCRとでは術式の違いにより可動域に違いが生じるのではないかと考えた。そこで今回、当院で腱板修復術を施行した症例の術前・退院時可動域を調査し、ORCRとASRCRの退院時可動域について比較検討したので報告する。
【方法】
 対象は平成18年1月~平成20年12月にかけてORCR施行し調査可能であった21例21肩(男11肩、女10肩、平均年齢66.3歳)、平成21年1月~平成22年11月にかけてASRCR施行した13例13肩(男6肩、女7肩、平均年齢62.3歳)、計34例34肩である。尚、広範囲腱板断裂やpatch法が必要であった症例は除外とした。これらの屈曲・伸展・外転・1st外旋・2nd外旋・内旋・水平内転の術前と退院時可動域の有意差を検定した。さらに退院時可動域をORCRとASRCRの2群に分け、各運動に対して有意差を検定した。統計にはスチューデントのt検定、マンホイットニ検定、対応のあるt検定、ウィルコクソン符号付順位和検定を用いた。尚、今回は自動可動域のみを検定した。
【結果】
 術前と退院時可動域との比較では、屈曲・2nd外旋・内旋・水平内転に有意差が認められた。屈曲・2nd外旋の可動域は術前より拡く、内旋・水平内転の可動域は術前より狭い結果となった。ORCRとASRCRとの退院時可動域では、すべての運動方向において有意差は認めなかった。
【考察】
 今回の結果からORCRとASRCRでの退院時可動域には有意差を認めなかった。術前と退院時の可動域に有意差が認められたことについて、これは当院における腱板修復術後の後療法の取り組みが影響しているのではないかと考える。当院では腱板修復術直後から肩腱板装具にて屈曲・外転・外旋肢位で固定し、経過とともに腱板装具屈曲角度を下げ下垂位へと移行する。下垂位可能後に肩腱板装具を除去し、伸展・内旋・結帯動作を行い治療を進める。この当院の取り組みにより屈曲・外旋は拡く、内旋・水平内転は狭くなったのではないかと考える。またASRCRはORCRとほぼ同様の術後成績が得られていることが確認できた。ORCRとASRCRの術後成績に有意な差はないという報告は多いが、いずれも一年前後での評価によるものが多い。今回は退院時までと短期間の調査であった。今後は調査不足であった筋力・疼痛・結帯動作などを評価し長期的に経過を追っていきたいと考える。
【まとめ】
 ORCRとASRCRの退院時可動域について比較検討した。ASRCRはORCRとほぼ同様の治療成績を得られていることが確認できた。今後は筋力・疼痛・結帯動作など評価し、長期的に経過を検討していきたい。

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