九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 033
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心臓リハビリテーション患者の身体活動量計を用いた運動指導の経験
*山田 宏美阿比留 博次米田 宏之白川 琢大守崎 勝悟高橋 哲也
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抄録

【はじめに】
 当院では平成22年度より,心疾患患者に対して身体活動量計から得られた情報をもとに運動指導を実施している.最近の3軸加速度センサーを用いた身体活動計は日常活動における低強度から中等度まての身体活動量を精度良く把握することができ,遠隔期の運動指導に有効であるという報告も多いが心疾患に対して応用した例は少ない.今回は我々が身体活動量計を用いて行った運動指導によって,入院期から外来期と通して順調に回復した症例と外来期に身体活動量が低下する症例について報告する.
【対象】
 当院で心臓リハビリテーション(心リハ)を実施し,身体活動量計の装着の同意を得た心疾患患者3例(平均年齢74歳±11.5).診断は,症例1,症例2は急性心筋梗塞,症例3は狭心症であった.
【方法】
 身体活動量計(オムロン,Active Style Pro)を入院期(22.3日±6)および外来期(2ヵ月間)に継続して起床時から就寝時まで装着してもらった.対象者には入院期,外来期には2~3週間もしくは1ヶ月に一度の外来心リハの際に歩行エクササイズ(EX)(METs×時間),生活活動EX,歩数,歩行時間などにもとづいて運動指導を行った.2ヶ月経過後は活動量計を回収し,各指標の経時的変化や1日の平均値,入院期と外来期の平均値を算出し比較した.
【結果】
 症例1は入院期の歩行による1日の平均Ex(入院期歩行Ex)は0.2Ex,生活活動による1日の平均Ex(入院期生活活動Ex)は0.2Ex,1日の平均歩数(入院期歩数)は673.0歩,1日の平均歩行時間(入院期歩行時間)は16.6分であった.外来期では歩行による1日の平均Ex(外来期歩行Ex)は1.5Ex,生活活動による1日の平均Ex(外来期生活活動Ex)は0.8Ex,入院期の1日の平均歩数(外来期歩数)は3557.0歩,1日の平均歩行時間(外来期歩行時間)は45.7分であった.症例2は入院期歩行Exは0.2Ex,入院期生活活動Exは0.7Ex,入院期歩数は1300.3歩,入院期歩行時間は24.9分であった.外来期歩行Exは0.2Ex,外来期生活活動Exは1.5Ex,外来期歩数は2163.2歩,外来期歩行時間は15.3分であった.症例3は入院期歩行Exは0.1Ex,入院期生活活動Exは0.2Ex,入院期歩数は2040.1歩,入院期歩行時間は32.8分であった.外来期歩行Exは0.3Ex,外来期生活活動Exは0.2Ex,外来期歩数は2236.0歩,外来期歩行時間は36.8分であった.症例1は外来期に各指標とも改善し,経時的に回復が認められた.症例2や症例3では一部の指標に改善は認められるものの,経時的には身体活動量の維持もしくは低下が認められた.外来期に身体活動量が低下する原因は,腰痛や膝痛,胸部症状の悪化・継続などであった.
【考察】
 身体活動量計を使用し,本人への運動指導を実施した.視覚的にも回復を実感できる身体活動量計を用いた指導は患者からも好評で一定の効果を得たが,運動器疾患の悪化や胸部症状の悪化,継続することで身体活動量が向上を認めない症例もいた.心疾患のリハビリテーションでは,単に歩数や運動強度の指導だけでなく,一日の活動量をフィードバックすることで症例の病態や生活リズムを考慮した運動指導が可能で,自己管理や復職に向けたサポートに有用であった.

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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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