九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 006
会議情報
リハビリテーションへのシリアスゲームの応用に関する取り組み
~起立訓練支援ゲーム「樹立の森リハビリウム」の開発~
*梶原 治朗林田 健太藤原 亮太田川 淳遠藤 正英中島 愛金子 晃介手嶋 林太郎中村 直人藤岡 定松隈 浩之甲斐 健児薛 克良服部 文忠
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抄録

【はじめに】
 当院では現在、九州大学、福岡市、地場ゲーム産業(GFF:Game Factory’s Friendship)で構成される産学官連携プロジェクトと連携し、リハビリテーション用のシリアスゲーム制作事業に参画している。シリアスゲームとは、学習・医療・環境等の様々な社会問題の解決を目的とするコミュニケーションツールの一つで、従来のエンターテイメント主体のゲームと同様に、楽しくプレイしながら、かつその結果として何らかの知識やスキルも得ることを目的とする。
【目的】
 よりシンプルでかつ重要性が高く、幅広い患者が利用可能で、単調で辛い訓練がゲームを通じて楽しくできるというコンセプトのもと、脳卒中治療ガイドラインでもグレードAとして推奨される「起立-着席訓練」をテーマに選択した。ゲームの試作・開発にあたり、実際の臨床現場において欠かすことができない安全性と有効性の両輪について検証することを目的とした。
【方法】
 当院回復期病棟入院患者48名に対して、3つの条件下(S:患者一人で/G:ゲームを用いながら/T:セラピストと一緒に)において起立-着席訓練を実施した。ゲームの有効性の検証として患者が可能な最大起立回数、疲労度や積極性といった主観評価を測定、安全性の検証として血圧・心拍数、めまいや気分不良の訴えの有無等を観察した。データの取扱に関しては、当院臨床研究に関する規定に則り個人が特定されないよう配慮を行い、当院倫理委員会による審査、承認を得たものである。
【結果】
 最大起立回数は、患者一人で起立-着席訓練を実施するよりも、ゲームを行いながら、またセラピストと一緒に実施した方が、有意に回数が増加する傾向が認められた。主観評価測定においても、ゲームを行いながら実施した場合が疲労度の訴えが低く、積極性や持続性に関連する評価は有意に高い傾向が得られた。安全性の検証として、全患者のゲームを用いた訓練中に、めまいや気分不良の訴えは無く、転倒事故等につながるインシデントは発生しなかった。
【考察】
 起立-着席訓練において患者が一人で行う場合(自主訓練)も、ゲーム「樹立の森リハビリウム」を利用することで、セラピストの介入とほぼ同様の有効性が得られる可能性が示唆された。ゲーム本来の楽しさといった心理的側面が、訓練への積極性や持続性の向上につながったことが推察される。安全性の検証については、あくまで本検証試験の範囲内で確認されたものであり、一人でのゲーム利用を想定した場合、準備や指導といった対策が必要である。
【今後の課題】
 本検証はあくまで短期間の利用にすぎず、今後より長期間の継続的なゲーム利用における有効性と安全性の検証が必要と考える。ゲーム利用に必要なセッティングも、より安全なデバイスの検討やスタートアップの簡略化等の操作性の改善が必要である。プロジェクトの取り組みは、第48回リハビリテーション医学会および7th Games for Health Conference(Boston,USA)での発表が決定しており、異分野、海外で得られた意見についても報告予定である。

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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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