九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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当院の院外活動において平成27年度佐賀県武道等指導充実・資質向上事業支援への関わり
佐賀県武道等指導・充実資質向上支援後の今後の課題
*浅田 悠幹
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p. 153

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抄録

【背景】

現在,児童の生活を見ていると,外遊びをしていて他の子と衝突してしまう子や運動会の練習で体を支持できず転倒し骨折してしまう子など身体の使い方やバランス,姿勢の乱れに起因する怪我等が後を絶たない,改めて,体幹やバランス,瞬発力,体力面などを計画的に鍛える指導の必要性を感じている.また,教職員への体つくり運動の指導の在り方や必要性から児童の主体性を育む指導法の工夫について検討し,教職員の資質向上,指導の充実等を高める必要があると考える.そこで,平成27年度佐賀県の取り組みとして佐賀県武道等指導・充実資質向上支援事業へ当院が携わる機会があった為以下に報告する.

【目的】

児童に対し,体つくり運動を行うことで基礎体力の向上,身体の柔軟性の向上を目的に行う.また,実際に武道等及び課題が見られる領域の指導を担う資質向上,さらに指導の充実等を図るため,指導力向上のための研修の実施や専門性のある外部指導者と連携した実践研究を行う.

【方法】

対象者,佐賀県鳥栖市立弥生が丘小学校に所属する小学5年生(男子:71名,女子:79名 合計:150名),小学6年生(男子:77名,女子:77 合計:154名).期間H27年10月8~11月13日.(うち各学年各クラスにオリエンテーション,体つくり運動は各学年2クラスずつ90分2回実施).

【結果】

授業前後の結果を比較するとアンケート結果から,1,体を動かすのは好きですかに対して,「はい」56→60%と向上.「あまり」11→6%と減少を認めた.また、柔軟性のテストでは,立位体前屈は「つく(あがらない)」61%→92%.腸腰筋(背臥位での股関節屈曲)は31→77%.大腿四頭筋(腹臥位での膝屈曲)は58→85%,と向上を認めた.

【考察】

アンケート結果より,体つくり運動を通して,体を動かすことや体育の授業,体つくり運動に対する意識の向上がみられた.また,休み時間児童が積極的に外で運動を始めたりと運動に対して児童の変化も見受けられた為,これからの日常生活にも影響していくことが考えられ,運動への意識の変化があることで運動の機会が増え,児童の体力向上へ繋がることが推測される.柔軟性のテストでは,各ストレッチ動作全て向上がみられた.これは,外部講師が入ることで適切なストレッチ方法,ストレッチで意識する事を伝え取り組んだ結果,筋が適切に伸長され,筋の柔軟性向上ができたのではないかと考える.しかし,今回は90分間の体つくり運動を各学年2回ずつしか行えていない.2回の頻度では,児童への継続的な働き掛けは困難だと考える.そのため,継続的に効果を出すためには教職員へのレクチャーが必要不可欠である.

【まとめ】

今回の取り組みより,体つくり運動を実施した後児童の身体への影響として柔軟性の向上を獲得することができた.また,運動への意識の変化がみられ日常生活への働き掛けが可能となった.教職員に対しては,児童への体つくり運動を通し,適切なストレッチ方法,トレーニングの際に気を付ける点を伝えることで指導力向上を図ることができた.今後,さらに,図示等によりそれぞれ筋の役割や実施したトレーニングの効果等を示しながら実施していく事で児童及び教職員に対しても更なる効果が得られるのではないかと考える.このような取り組みを継続していくために佐賀県また鳥栖市との連携をどのように築いていくかが今後の課題として取り組む必要がある.

【倫理的配慮,説明と同意】

本件の計画立案に際し、事前に佐賀県より当院・佐賀県鳥栖市立弥生が丘小学校へ依頼あり.小学5・6年生へ教職員より説明.共々承認。児童への運動実施は十分な説行い同意を得た。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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