La mer
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東京湾奥におけるシロギス仔稚魚の出現様式と遊泳・摂餌形質の発達
David E. ANGMALISANG 池上 誠一郎河野 博
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2019 年 57 巻 1-2 号 p. 25-42

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抄録

東京湾奥のシロギスを稚魚ネット(多摩川河口の沖合で 2006 年 1 月から 2008 年 5 月まで)と地曳網(多摩川河口周辺の干潟 3 地点で 2006 年 5 月から2009 年 9 月まで)で採集し,成長にともなう出現様式を明らかにした 。さらにこれらの標本から 111 個体 (1本長 2.0-21.1 mm) を透明骨格標本にして,主に骨格系の発達に碁づく機能的発育を明らかにした。沖合では30個体(体長 2.0-8.5 mm, 平均土標準偏差= 4.6 土 1.6 mm) の仔魚が,干潟では232 個体(休長 6.1-49.3 mm, 15.7 土 5.6 mm) の仔稚魚が採集さ れた。遊泳と摂餌形質の発達にもとづいてシロギス仔稚魚はそれぞれ 5 つと 4 つの発育段階に区分さ れた。体長 3 mmになると遊泳と摂餌に関する形質が出現しはじめ,ごく弱い遊泳力で,あるいは流れに乗って受動的に接岸回遊をすると考えられた。体長6.0-8.9mm の個体は,沖合でも干潟でも出現した。その後体長9 mmくらいか ら干潟域での出現個体数が増えはじめ,ピークになる体長15 mm くらいには遊泳・摂餌能力も機能的になっ た。体長15mm よりも大きい稚魚の個体数は減少し,体長30 mm を超えるとほとんど採集さ れなくなる。体長30 mm以上になると,シロギスの稚魚は東京湾内湾のより深い場所に移動すると考えられた。

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© 2019 日仏海洋学会
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