2020 年 58 巻 1-2 号 p. 17-33
松島湾の海水交換を調べるため,宮城県が取得した水温・塩分データ,セナアンドバーンズ社により提供された水温モニタリングデータを解析した。その結果,松島湾内外の海面水温の差が初夏と晩夏に大きくなるのに対し盛夏に小さくなるというような温暖期に2 つのピークをもつことが分かった。数日周期の水温変動は,初夏から秋にかけて卓越する北西・南東成分の風と良い相関があり,北西からの風の約2 日後に松島湾内の温度が低下することが示された。これらの機構を明らかにするため,観測された大気データを用いてRegional OceanModeling system(ROMS)により再現実験を行った。春から秋にかけての水温変化を再現したところ,風により数日かけて松島湾の海水が交換され,湾内外の海面水温の差が変化することが分かった。モデルでは,南東向きの風が吹いた後,湾内に温度躍層が形成されて内部潮汐が発生することが示されたが,同様の特徴がモニタリングデータにも認められた。これらのことは風により海水交換が引き起こされていることを裏付けた。