La mer
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テッポウエビの巣穴口周辺における条件的共生を行うハゼの行動観察
桐原  聡太邉見 由美伊谷 行
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2020 年 58 巻 3-4 号 p. 115-123

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抄録

ハゼ−エビ共生における条件的関係について太平洋での知見は限られているため,ツマグロスジハゼの条件的共生に関する生態学的研究は重要である。本研究では,南日本の干潟において,満潮時と干潮時にテッポウエビの巣穴口周辺を定量的に観察することで,ツマグロスジハゼの巣穴外活動を調査した。満潮時,ツマグロスジハゼは10 分間の観察時間のうち約30%のみを巣穴口前で過ごしていた。また,ツマグロスジハゼは,ときどき巣穴口から10 cm 以上離れることがあったが,ほとんどの個体は観察時間中に巣穴口前に戻っていた。干潮時の調査では,潮溜りでの巣穴外活動が確認されたが,満潮時に比べてその時間は短いことが分かった。さらに,雑食性や肉食性魚類,カニ類の接近に伴いツマグロスジハゼが巣穴内に戻ることが明らかになった。今後,近縁種であるスジハゼ類によるテッポウエビの巣穴利用に関する研究を進めていくことで,本属の条件的共生の進化過程が明らかになるかもしれない。

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© 2020 日仏海洋学会
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