La mer
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東京湾内湾の小櫃川におけるヒモハゼの出現様式と形態発育
David E. ANGMALISANG丸山 啓太 日原 歩美河野 博
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2020 年 58 巻 3-4 号 p. 83-99

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抄録

東京湾奥に位置する小櫃川の干潟3 地点(下流,中流および上流:小型地曳網)とクリーク3 地点(小型定置網)でヒモハゼを採集し,出現様式を明らかにした。また採集された標本から100 個体を透明二重染色処理し,主に骨格系の発達に基づいて発育段階を設定した。干潟で採集されたヒモハゼは下流で94 個体(体長2.8~34.5mm,平均体長±標準偏差= 7.7 ± 3.9 mm),中流で7 個体(6.4~33.9 mm,17.1 ± 12.3 mm)で,上流では採集されなかった。クリークでは1,127 個体(10.1~39.5 mm,27.5 ± 7.2 mm:464 個体を計測)が採集された。遊泳・摂餌機能の発育段階はそれぞれ以下の3 つに分けられた:尾鰭推進期(体長3.5~5.0 mm),全身推進期(5.0~10.0-11.0 mm),完成期(10.0-11.0 mm 以降);吸い込み・噛み付き期(3.5~5.0-6.0 mm),吸い込み・噛み付き向上期(5.0-6.0~10.0-11.0 mm),完成期(10.0-11.0 mm 以降)。以上の結果から,ヒモハゼの産卵場は小櫃川河口域のクリーク周辺で,ふ化した仔魚は海域に向かって流下し,下流の干潟域で成長し,稚魚は能動的に小櫃川河口域のクリークを含む干潟に来遊し成育場として利用していると考えられた。したがって,ヒモハゼは生活史のほとんどを小櫃川河口域に依存していることが判明し,今後小櫃川河口域生態系の保護・保全が必要であることを指摘した。

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© 2020 日仏海洋学会
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