ラテンアメリカ・レポート
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Print ISSN : 0910-3317
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Ryohei Konta. Participação nos movimentos de moradia em São Paulo: agência, estrutura e institucionalização
近田 亮平
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2019 年 35 巻 2 号 p. 102

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本書の基底をなす問題意識は、「なぜ人々は社会運動に参加するのか」という問いである。このような問題意識を抱くに至ったきっかけは、著者が2002年にブラジル最大の都市サンパウロを調査で訪れた時であった。ブラジルを研究の対象国とし、都市の貧困問題に関心のある著者は、その際に住宅運動に携わる人々とその活動を知る機会を得た。そこではじめに関心を引いたことは、彼・彼女たちが規模や頻度において非常に積極的かつ活発に社会運動へ参加していた点であった。また、実際に参加している人々のほとんどが、社会的に排除された弱者である都市貧困層の人々であったことも、著者の記憶に強く残った。そして、「どのような背景や要因からこのようにたくさんの、しかも貧しい人々が積極的に社会運動に参加するのだろうか」という疑問が、率直かつ自然に著者のなかで生起したのであった。

このような問いを追究する本書では、序章で問題の所在や理論的な分析枠組みを説明し、第1章で社会運動や本書で取り上げるふたつの事例に関する先行研究をまとめる。第2章でブラジルの社会運動や参加型行政を概説した後、第3章と第4章において、ひとつめの事例である貧困層向け住宅政策ムチラン(Mutirão)について分析する。ムチランとは、社会運動をベースにした都市貧困層たちが自らの住宅を参加者全員の協働作業により建設するという参加型の住宅政策である。ふたつめの事例を扱う第5章では、都市貧困層のなかでもより脆弱性の高い貧困高齢者が、自らの住宅運動をとおして参加型行政などと相互作用を行うことにより、ブラジルで先駆的存在である貧困高齢者のみを対象とした住宅政策を実現するプロセスを明らかにする。最後の第6章では結論として本書の総括を行う。

ブラジルでは2000年代のはじめに、おもに労働者党(PT)政権下で参加型行政の実施や制度化が進んだ。著者はその時期にサンパウロにおいてフィールド調査を行った。その際、現地において社会運動関係者をはじめ多くの方々に多大なるご協力をいただいた。その恩返しの意味を込め、約10年にわたる現地調査の成果である本書をブラジルにおいてポルトガル語で出版した。南半球最大の都市サンパウロで貧困層がよりよい生活をめぐり闘っている一現実について、本書をとおして理解を深めていただければ幸いである。なお、本書は出版社のサイト(https://www.editoracrv.com.br/)からアプリを無料ダウンロードし、電子書籍として購読することができる。

 
© 2019 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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