Latin America Report
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Print ISSN : 0910-3317
Unstable Presidential-Legislative Relations under the Bolsonaro Administration
Hirokazu KIKUCHI
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2019 Volume 36 Issue 1 Pages 1-12

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要約

本稿はボルソナロ政権下における大統領・議会関係の特徴を検討したものである。2018年総選挙におけるボルソナロの当選や下院選・上院選での社会自由党の躍進、労働者党・ブラジル社会民主党・ブラジル民主運動の議席の減少は既存の政党政治に対する不信の産物であった。そのため、ボルソナロは比例代表制・多党制・大統領制という組み合わせによって生み出される連立政権に特徴づけられる「連合大統領制」を否定して議員連盟との協力による閣僚任命を行ったが、政党連合を基盤としない大統領・議会関係は不安定であり、議会が政権運営の障害となるケースも出てきている。2019年4月頃から政権側による他党との歩み寄りの模索がみられるが、「連合大統領制」への回帰による大統領・議会関係の安定化と政権の一層の支持率の低下というジレンマの中でボルソナロ大統領がどのような選択をしていくのかを、今後注視していく必要がある。

はじめに

2019年1月1日に大統領に就任したボルソナロ(Jair Bolsonaro)は、同年4月10日に新政権発足100日目を迎えた。ボルソナロ政権はその100日間ですでに約5分の1の選挙公約を実現しており、第二期ジルマ(Dilma Rousseff)1政権(2015~2016年)やテメル(Michel Temer)政権(2016~2018年)の発足後最初の100日間の実績を上回っている2。また、財政再建をめざす新政権にとっての最重要政策課題といっても過言ではない社会保障制度改革(reforma da Previdência)の憲法改正案(Proposta de Emenda à Constituição, PEC)を2月20日に下院に提出し、4月23日には下院憲法司法委員会を通過させることに成功した。

(出所)グローボ・グループ(Grupo Globo)のニュースサイト

https://g1.globo.com/politica/noticia/2019/04/24/35percent-aprovam-governo-bolsonaro-e-27percent-reprovam-diz-pesquisa-ibope.ghtml)に掲載された世論調査機関イボッピ・インテリジェンシア(Ibope Inteligência)の調査結果をもとに筆者作成(2019年6月15日アクセス)。

しかしその一方で、ボルソナロ政権の支持率は低迷している。図1は世論調査機関イボッピ・インテリジェンシア(Ibope Inteligência)の調査結果を示したものであるが、1月には49%あった支持率は3月には34%にまで落ち込み、その後僅かに戻したものの4月12~15日の調査では35%にとどまっている。3月時点での34%という支持率は、選挙を経た第一期政権発足3カ月目のものとしてはジルマ(2011年、56%)やルーラ(Luiz Inácio Lula da Silva、2003年、51%)はおろか、コロル(Fernando Collor、1990年、45%)やカルドーゾ(Fernando Henrique Cardoso、1995年、41%)にも及んでいない3。また、世論調査機関ダッタフォーリャ(Datafolha)が4月2~3日に行った世論調査によれば社会保障制度改革に対する世論の反応は割れており、賛成が41%、反対が51%となっている4

それでは、支持率が低迷している中で、ボルソナロ政権は社会保障制度改革をはじめとする政策課題を実現することが可能なのであろうか。この問いについて考えるためには、その鍵となる大統領と議会との関係についての理解を深めることが重要であると思われる。そこで、以下では、2018年総選挙の結果を確認し、ボルソナロ政権下における大統領・議会関係の特徴を検討してみたい。

写真1 大統領就任式に臨むオリヴェイラ上院議長(当時)、ボルソナロ大統領、マイア下院議長

(出所)J. Batista/Câmara dos Deputados 撮影。

https://www.camara.leg.br/internet/bancoimagem/banco/2019/01/img20190101154450696.jpg

1. 2018年総選挙の結果

26の州と首都の所在するブラジリア連邦区からなるブラジルでは、憲法上の規定により、選挙年の10月第一日曜日に総選挙(大統領選、下院選、上院選、州知事選、州議会選)が実施される。2018年10月7日の総選挙は、ジルマ元大統領が2016年に弾劾を経て罷免されてから初めてのものであったこともあり、国内外の注目を幅広く集めた。大統領の任期は4年で連続再選が一度だけ認められており、第一回投票で何れの候補者も過半数の有効票を獲得できない場合には、10月最終日曜日に決選投票が実施される。一方、下院議員の任期は4年で州を選挙区の単位とし、各州 8名(10州5とブラジリア連邦区)から70名(サンパウロ州)が非拘束名簿式比例代表制によって選出される。また、上院議員の任期は8年で、4年ごとに各州1名もしくは2名が改選対象となり、3分の1改選の場合は小選挙区制、3分の2改選の場合は完全連記制6が採用されている。

(出所)選挙最高裁判所のホームページ(http://divulga.tse.jus.br/oficial/index.html)をもとに筆者作成(2019年6月15日アクセス)。

表1は2018年大統領選の開票結果を示したものである7。1994年以降労働者党(PT)とブラジル社会民主党(PSDB)を中心に展開されてきた大統領選であるが、2014年3月から連邦警察が行っている汚職捜査「ラヴァ・ジャット作戦」(Operação Lava Jato)により、その構図が塗り替えられることとなった。軍政礼賛や女性・LGBT蔑視発言が問題視されてきた社会自由党(PSL)のボルソナロ下院議員は、当初は泡沫候補だと考えられてきた。しかし、与野党を問わずほとんどの主要政党が汚職に関与していた疑いが明らかになったことによって増幅された既存の政党政治に対する不信と、巧みなソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の活用を背景に支持を伸ばした。そして、2018年9月6日にミナスジェライス州ジュイス・デ・フォラ市で暴漢に襲われて重傷を負ったものの、第一回投票で46.03%、2018年10月28日の決選投票で55.13%の有効票を獲得し、勝利したのである。他方、高級住宅疑惑に関する第二審での有罪判決のために立候補不可となったルーラ元大統領の代わりに出馬した労働者党のアダジ(Fernando Haddad)元サンパウロ市長は第一回投票で29.28%の得票で二位に食い込んだものの決選投票で敗れ、ブラジル社会民主党のアルキミン(Geraldo Alckmin)前サンパウロ州知事は汚職疑惑の渦中にあるテメル8政権への自党の参加が逆風となり、第一回投票でボルソナロ、アダジ、民主労働党(PDT)のシーロ(Ciro Gomes)元セアラ州知事の後塵を拝して4.76%の得票にとどまった。

(出所)菊池[2018]および下院(https://www2.camara.leg.br/deputados/liderancas-e-bancadas)・上院(https://www25.senado.leg.br/web/senadores/liderancas-parlamentares)のホームページをもとに筆者作成(2019年6月15日アクセス)。

(注)2019年5月現在下院で10議席を有する政党のみ記載。2018年10月時点では、下院に欠員が1名生じていた。共和党は2019年5月に自由党に改名。

以上のような状況は、下院選・上院選の結果にも反映された。表2はそれらの選挙の実施される直前の2018年10月時点と本稿執筆時点(2019年6月)での上下両院の議席構成を比較したものであるが、下院選・上院選における明らかな勝者は社会自由党であり、下院議席数8・上院議席数0から、下院議席数54・上院議席数4にまで躍進した9。その一方、労働者党は下院第一党の地位は保ったものの両院での議席数を減らし、ブラジル社会民主党やテメル前大統領のブラジル民主運動(MDB)も両院で多くの議席を失った。その結果、下院では30、上院では20の政党が議席を有することとなった[菊池 2018]。

図2は1994~2018年の下院選・上院選における再選率を示したものであるが、このデータからも既存の政党政治に対する不信を読み取ることができる。2018年下院選における再選率(全当選者に占める再選議員の割合)は47.76%であり、1992年に当時のコロル大統領に対する弾劾裁判実施後初めての総選挙となった1994年の数値(45.73%)に近い値となっている。また、しばしばその議員候補枠が州レベルでの政党連合の形成の交渉材料として利用されるため[Lodola 2010]、元来上院選の再選率は下院選よりも低い傾向があるが、3分の2が改選対象となった2018年上院選はブラジル民主運動のオリヴェイラ(Eunício Oliveira)上院議長や1995年から3期24年その座にあったジュカ(Romero Jucá)上院議員が落選するなど、1994年以降の最低値(14.81%)を記録した。

(出所)Departamento Intersindical de Assessoria Parlamentar [2018]をもとに筆者作成。

2. ボルソナロ政権下における大統領・議会関係の特徴

(1) 「連合大統領制」の否定

ここまでみてきたように、大統領選・下院選・上院選の結果は既存の政党政治に対する不信を反映していると考えられるが、そのような状況によって生み出されたボルソナロ政権の本稿執筆時点(2019年6月)までの大統領・議会関係の特徴を一言で表すならば、「連合大統領制」(presidencialismo de coalizão)の否定である。

ブラジルの大統領には憲法上強い立法権限が付与されている。内閣改造に際して議会の承認は要求されず、また、議会の可決した法案に対する包括拒否権と部分拒否権の双方を有している10。さらに、大統領令制定権については、発令と同時に法律と同等の効力をもつ「暫定措置」(Medida Provisória)11がかなりの政策分野に対して認められているなど、部分拒否権や暫定措置が認められていないアメリカ大統領をはるかに凌ぐ内容となっている[Shugart and Carey 1992]。

しかしその一方で、ブラジルは2018年総選挙で下院では30、上院では20の政党が議席を獲得した多党制の国である。下院選に導入されている非拘束名簿式比例代表制はしばしば党の分裂を促進するほどの党内競争を誘発することによって政党を乱立させ、大統領所属政党が議会で単独過半数を占めることを事実上不可能にしている。そのため、歴代大統領は他党に閣僚ポストを分配して連立政権を成立させることにより、政権を維持してきた。比例代表制・多党制・大統領制という組み合わせによって生み出される連立政権に特徴づけられるブラジルの大統領・議会関係を「連合大統領制」と表現したアブランシェス[Abranches 1988]によれば、1946~1964年の歴代政権のじつに80%が過大連立内閣12であったという。

アブランシェス[Abranches 1988]は「連合大統領制」を民主主義の維持の障害となる負の要素としてとらえたが、その後もブラジルの民主主義は連立政権の成立によって機能してきた[Pereira and Melo 2012]。図3は1995年から現在に至るまでの歴代政権における閣僚所属政党数、および、閣僚所属政党の下院・上院におけるシェアを示したものである。ブラジルでは大幅な改革を行う際にはしばしば憲法改正が必要となるが、憲法改正案の場合は上下両院において総議員の5分の3、その補足法(lei complementar)の法案の場合は上下両院において総議員の絶対過半数の賛成が要求される。そのため、政権交代前後の時期を除き、カルドーゾ政権(1995~2002年)は最大6、ルーラ政権(2003~2010年)とジルマ政権(2011~2016年)は最大10、テメル政権(2016~2018年)は最大11の政党に閣僚ポストを分配することにより、上下両院における政党連合のシェアを60%以上に保とうとしてきた。

(出所)Amorim Neto[2018]および

下院(https://www.camara.leg.br/internet/deputado/pesquisaHistorico.asp

上院(https://www25.senado.leg.br/web/atividade/relatorio-da-presidencia/edicoes-historicas

大統領府図書館(http://www.biblioteca.presidencia.gov.br/)のホームページをもとに筆者作成(2019年6月15日アクセス)。

(注)ボルソナロ政権については、2019年6月15日までのデータ。

ただし、多くの政党を束ねることが要求される「連合大統領制」が、閣僚ポスト数を増加させると同時に、数々の汚職事件を誘発してきた点は否定できない[堀坂 2019]。そのため、汚職撲滅を掲げて当選し、既存の政党政治の在り方を「古い政治」(velha política)として批判してきたボルソナロは、政党連合の形成ではなく自身の政策に共鳴する議員連盟(frente parlamentar)との協力を選択した13。その中心は「BBB議員団」(Bancada BBB)14と呼ばれる治安議員連盟(Frente Parlamentar da Segurança Pública)、農業議員連盟(Frente Parlamentar da Agropecuária)、国会福音派議員連盟(Frente Parlamentar Evangélica do Congresso Nacional)であり、彼らの意向が新政権における閣僚の任命に大きく反映された。その結果、2018年総選挙で選出された議員たちが就任した2019年2月時点での6名の閣僚15の所属政党である社会自由党、民主党(DEM)、ブラジル民主運動、新党(NOVO)の4党のシェアの合計は下院で23.98%、上院で28.40%にすぎず、また、彼らの任命も各党への閣僚ポストの分配ではなく「BBB議員団」の意向を組んだ個人に対する任命であることから、民主党もブラジル民主運動も新党もボルソナロ政権の正式な連立パートナーというわけではないのである。

(2) 「連合大統領制」に回帰するのか?

本稿執筆時点(2019年6月)において、治安議員連盟には下院議員305名16、農業議員連盟には下院議員225名と上院議員36名17、国会福音派議員連盟には下院議員195名と上院議員8名18が所属しているが、全議員が等しく議員連盟で活発に活動しているわけではなく、議員連盟が所属議員に対して本会議や委員会における採決での拘束をかけることは難しい19。そのため、現在の大統領・議会関係は予測の難しい不安定なものとなっており、議会が政権運営の障害となるケースも出てきている。たとえば、2019年2月19日には、情報公開法(Lei Geral de Acesso à Informação)における極秘文書・秘文書扱いの決定権限者を大幅に拡大する大統領令20が下院によって差し止められ21、2019年6月12日には上院憲法司法委員会が銃規制を緩和する大統領令の差し止めを求める上院議員の動きを支持した22。また、2019年5月9日には、両院暫定措置第870号検討委員会(Comissão Mista da Medida Provisória nº 870, de 2019)が政府の組織改編に関する暫定措置第870号に大幅な修正を加え、金融活動統制審議会(Conselho de Controle de Atividades Financeiras, Coaf)を「ラヴァ・ジャット作戦」担当判事として有名になったモーロ(Sérgio Moro)法務・治安大臣の傘下から経済省に移管する修正案を可決した23

以上のように議会と対立している場合には、大統領が通常の立法過程ではなく大統領令を重視した政権運営を行っても不思議ではない。実際、ボルソナロ政権の目標の一つである治安改善については、先述したように議会に差し止められる可能性があるものの、銃規制の緩和が大統領令によって実施されている24。しかし、歴代政権による種類別法案提出数を示した表3から明らかであるように、全大統領提出法案に占める暫定措置の割合は、現時点ではジルマ政権・テメル政権・第一期ルーラ政権に及ばない48.39%にとどまっている。

(出所)Amorim Neto[2018]および

下院(https://www.camara.leg.br/busca-portal/proposicoes/pesquisa-simplificada

大統領府(http://www4.planalto.gov.br/legislacao/portal-legis/legislacao-1/medidas-provisorias)のホームページをもとに筆者作成(2019年6月15日アクセス)。

(注)ボルソナロ政権については、2019年6月15日までのデータ。

ボルソナロ大統領個人は様々な発言で物議を醸しているが、2019年4月ごろから目立ちはじめているのは、政権側による他党との歩み寄りを模索する姿勢であろう。2019年2月の下院議長選と上院議長選で両ポストに民主党のマイア(Rodrigo Maia)とアルコルンブレ(Davi Alcolumbre)が選出されたことにより、大統領・議会関係における民主党の役割に注目が集まっているが、4月4日には民主党のオニキス(Onyx Lorenzoni)官房長官の仲介を通じて社会保障制度改革の実現に向けた大統領とブラジル共和党(PRB)・社会民主党(PSD)・ブラジル社会民主党(PSDB)・進歩党(PP)・民主党・ブラジル民主運動の党首との会談が実施された25。また、オニキス官房長官は、社会保障制度改革の憲法改正案に賛成票を投じた各下院議員に対して、予算法案に対する個人修正案(emenda individual)26の根拠財源として2022年まで毎年1,000万レアルの追加を認める用意があるとしている27。さらに、閣僚ポスト等を分配するために民主党やブラジル民主運動の要求に応じて国家統合省と都市省を復活させる可能性も一時取り沙汰されていた28。暫定措置第870号の法制化によって閣僚ポスト数自体は22に固定されたが、仮に閣僚ポストの他党への分配などを通じて「連合大統領制」に回帰にすれば、大統領・議会関係は安定化すると思われる。ただしその場合、既存の政党政治の在り方を批判してきたボルソナロ大統領にとってはさらなる支持率の低下につながる諸刃の剣となる可能性も否定できないと言えよう。

むすび

本稿では、政策課題の実現可能性を理解するうえでの一助として、ボルソナロ政権下における大統領・議会関係の特徴を検討した。具体的には、2018年総選挙の結果が既存の政党政治に対する不信から生まれたものであったことを確認し、現政権がこれまでのブラジルにおける大統領・議会関係の特徴であった「連合大統領制」を否定して政党連合の形成ではなく議員連盟との協力による閣僚任命を行った点、議員連盟との協力を基盤とする大統領・議会関係は不安定であり、議会が政権運営の障害となるケースも出てきている点、2019年4月頃から政権側による他党との歩み寄りの模索がみられる点を指摘した。

社会保障制度改革をはじめとする数々の政策課題を実現するためには、ある程度「連合大統領制」に回帰する必要があると思われるが、「古い政治」との妥協は政権の一層の支持率低下につながる。このようなジレンマを抱える中でボルソナロ大統領がどのような選択をしていくのか、今後注視していく必要があろう。

(2019年6月15日脱稿)

謝辞

本稿の内容の一部はJSPS科研費16K17064の助成による研究成果に基づくものである。ここに記して感謝したい。

本文の注
1  ブラジル国内では、名前の「ジルマ」の方が呼称として広く用いられている。以下、人名については、ブラジル国内で一般的に使用されている呼称を用いる。

3  第二期政権発足3カ月目の場合は、ルセフ(2015年、12%)とカルドーゾ(1999年、22%)の支持率の方が低い。https://g1.globo.com/politica/noticia/2019/04/24/35percent-aprovam-governo-bolsonaro-e-27percent-reprovam-diz-pesquisa-ibope.ghtml(2019年6月15日アクセス).

5  アクレ、アマゾナス、アマパ、マットグロッソ、マットグロッソドスル、リオグランデドノルテ、ロンドニア、ロライマ、セルジッペ、トカンチンスの各州。

6  有権者は1人2票を有し、各州の上位2名が当選となる。ただし、同一候補に2票投じることはできない。

7  第一回投票までのデータに基づく大統領選分析については、[菊池2018]も参照されたい。

8  テメル前大統領は、2019年3月21日に汚職容疑で逮捕された。

9  実際に選挙で獲得したのは下院52議席、上院4議席であったが[菊池 2018]、その後の議員の党籍変更により、2019年6月時点で下院54議席、上院4議席となった。

10  ただし、両院における全議員の絶対過半数の同意により、大統領の拒否権を覆すことは可能である。

11  暫定措置の有効期間は60日で、さらに60日の延長も可能であるが、期間内に法制化されない場合は効力が失われる。

12  議会の過半数の支持を得るうえでの必要以上の政党を含んだ連立政権のこと[レイプハルト 2014]。

13  この選択には、ボルソナロが大統領選の際に副大統領候補の確保に苦労した点も関係しているものと思われる。副大統領職は他党との連立に向けての鍵となるポストのひとつであるが[菊池 2014]、進歩党(PP)と共和進歩党(PRP)に断られたため、近年上院議員・下院議員を1人も輩出していないブラジル労働改革党(PRTB)のモウロン(Hamilton Mourão)に落ち着いた。https://oglobo.globo.com/brasil/bolsonaro-anuncia-general-hamilton-mourao-como-vice-22950924(2019年6月15日アクセス).

14  「銃弾(bala)」の議員団である治安議員連盟、「雄牛(boi)」の議員団である農業議員連盟、「聖書(bíblia)」の議員団である国会福音派議員連盟の頭文字を取った呼称。

15  政党に所属しない閣僚数は民主化後最多の16名である。

19  2017年にブラジリア大学が実施した議員連盟に関する調査によれば、所属する議員連盟で実際に活動していたと回答した議員数は、農業議員連盟については所属255名中118名、治安議員連盟については所属299名中36名、国会福音派議員連盟については所属202名中39名にすぎなかったという。 https://www1.folha.uol.com.br/poder/2018/12/frentes-parlamentares-sao-pouco-para-sustentar-presidente.shtml(2019年6月15日アクセス).

20  ボルソナロ大統領が入院中であった2019年1月24日の大統領令であるため、実際に署名したのはモウロン副大統領であった。

21  大統領所属政党である社会自由党の2議員もその動きに賛同した。 https://g1.globo.com/politica/noticia/2019/02/19/camara-aprova-suspensao-de-decreto-que-permite-a-servidores-impor-sigilo-a-dados-publicos.ghtml(2019年6月15日アクセス).

23  https://www12.senado.leg.br/noticias/materias/2019/05/09/com-funai-no-ministerio-da-justica-e-coaf-na-economia-mp-870-e-aprovada-em-comissao-mista(2019年6月15日アクセス).ただし、省庁増設につながる修正は行われず、閣僚ポスト数は22のまま維持された。同暫定措置は上院本会議でも2019年5月28日に修正案通りの内容で上可決され、法制化された。

24  https://www.bbc.com/portuguese/brasil-48235952 (2019年6月15日アクセス).

25  ただし、モウロン副大統領は前日に閣僚ポスト分配の可能性を示唆したものの、ボルソナロ大統領自身は否定した。 https://oglobo.globo.com/brasil/nada-se-falou-sobre-cargos-diz-bolsonaro-sobre-reunioes-com-presidentes-de-partidos-23573604(2019年6月15日アクセス)。

26  ブラジルでは、各議員は財源等を明記した上で、予算法案に対する個人修正案を25件まで提出することが認められている[菊池 2016]。

参考文献
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