Latin America Report
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Venezuela with Two Presidents: Is This the Beginning of the End of Chavista Era?
Aki SAKAGUCHI
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2019 Volume 36 Issue 1 Pages 44-58

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要約

ベネズエラは現在、政治、経済、社会的に国家破綻の状況に陥っている。2019年1月、反政府派が過半数を支配する国会のグアイド議長が憲法の規定に基づき暫定大統領に就任して以降、ベネズエラは「ふたりの大統領」が並び立ち、政治的緊張が極度に高まっている。マドゥロ政権は軍の支持を背景に、反政府派政治リーダーや一般市民、そして離反が疑われる軍人などへの弾圧を強めている。国内ではいまだマドゥロ政権の実行支配が続いているが、マドゥロ政権による人権侵害は国際社会から厳しく糾弾されている。本稿では、ふたりの大統領がたつことになった背景、厳しい経済社会的状況にも限らずマドゥロ政権が継続している理由、ベネズエラ危機に対する国際社会の対応などについて、1月以降の情勢に関して情報を整理し、解説する。

はじめに

政治的緊張と経済危機が近年加速的に深刻化していたベネズエラが、2019年1月以降新たな局面に入り、政治、経済、社会それぞれにおいて国家破綻といってもよい厳しい状況に陥っている。大統領任期の交代日である1月10日をさかいに、その5日前に就任したばかりのフアン・グアイド国会議長(Juan Guaidó)が、それまで分裂気味であった反政府派の結束力を一気に高め、反政府派市民の間でマドゥロ政権打倒に向けてのモメンタムがわずか数日で熱を帯びた。1月23日にはグアイド国会議長は2018年の大統領選挙は正統性がなく無効として、憲法にのっとり新たな選挙の実施を求めて暫定大統領に就任すると宣言した。「ふたりの大統領」がそれぞれの正統性をめぐって対立し、国内のみならず国際社会をも二分する事態となったのである。

その後も2月23日に米国を中心とした各国からの人道支援物資の持ち込みをめぐる衝突、3月5日以降の全国的かつ数日に及ぶ停電とそれによる断水、そして4月30日にグアイド側が国軍に対してマドゥロからの離反を呼びかけた「自由のための作戦」(Operación Libertad)とその失敗など、たたみかけるように次から次へと厳しい局面が展開したが、5月以降は膠着状態に陥った。

ベネズエラについては日本でも1月以降メディアでとりあげられることが増えたとはいえ、いまだ情報量は圧倒的に少ない。またマドゥロ側とグアイド側が出す情報が相反することがしばしばあるため、実態を理解するのは容易ではない。

なぜ大統領がふたりいるのか、なぜ人道支援物資を拒否するのか、4月30日の「自由のための作戦」はいったい何が起きて、なぜ失敗したのか、なぜ中国、ロシア、キューバがマドゥロ政権を支持するのか、民主主義を掲げる反政府派市民が、民主主義の根本でもある対話を拒否するのはなぜか、そして経済破綻で栄養失調や医薬品不足で国内で死者が続出し、400万人以上が海外に脱出する危機的状況にあっても、マドゥロ政権が政権を死守できているのはなぜか。本稿は、1月以降のベネズエラの政治情勢について情報を整理しながら、しばしば寄せられるこれらの質問について解説してゆく1

1. 「ふたりの大統領」が誕生した理由

ふたりの大統領が並び立つ状況になった理由は、2018年5月に実施された大統領選挙の正当性に関する認識の相違にある。憲法第231条は1月10日を新大統領の就任日、すなわち政権交代の日と規定している。2013年に就任したマドゥロ大統領の任期はこの日をもって終了し、選挙で選出された新大統領が同日就任することになっていた。

写真1 2013年4月のマドゥロ大統領1期目の就任式にて(Cancillería del Ecuador, Wikimedia Commons)
写真2 左よりグアイド暫定大統領、コロンビアのドゥケ大統領、米国ペンス副大統領。(Whitehouse, Wikimedia Commons)

マドゥロ政権は、反政府派の有力政治リーダーらの多くを政治犯として拘束あるいは公職追放など、政治的に排除し立候補できない状況にしたうえで大統領選挙を公示した(表1)。これに対して国内の反政府派、そして欧米諸国や米州機構(Organization of American States: OAS)、多くのラテンアメリカ諸国や日本も、そのような状況での選挙は公平で透明な選挙をうたった憲法や民主主義の原則に反するとして、選挙の中止を強く求めた。反政府派の政党連合である民主統一会議(Mesa de la Unidad Democrática: MUD)は、選挙に参加すると不正な選挙に正当性を付与することになるとして選挙をボイコットしたが、マドゥロ政権は選挙を強行し、再選された。これに基づいてマドゥロ大統領は1月10日に二期目の就任宣言をしたのである。

(出所)各種資料から筆者作成。

これに対して反政府派は、2018年5月の大統領選挙は上記のとおり憲法や民主主義の原則に反するもので正統性がないとし、そのためマドゥロ大統領の任期が切れた2019年1月10日以降は正統な新大統領が不在であると主張した。そして憲法233条の「(略)就任前に選挙で選出された大統領が絶対的不在の状態が発生した場合は、その後連続した30日以内に普通・直接・秘密選挙を新たに実施する。新大統領が選出され就任するまでの間、国会議長が大統領の任につく」という条文に基づき、1月23日グアイド国会議長が暫定大統領への就任を宣誓したのである2

2. 「ふたつの政府」と実効支配

チャベス、マドゥロ両政権期をとおしてベネズエラでは、国会、司法、検察、会計検査院、選挙管理委員会、中央銀行、国営石油会社、軍など、すべての国家権力や国家組織がチャベス、マドゥロ派によって支配されてきた。そのようなチャベス派による完全支配に唯一反政府派がくさびを打ち込んだのが、2015年12月の選挙で反政府派が圧勝して過半数支配を獲得した国会であった(坂口2016)。危機感を募らせたマドゥロ政権は、2017年8月に制憲議会を設立させ3、国会の機能を剥奪し、事実上最高意思決定機関としての機能を担わせてきた。制憲議会について憲法には極めてシンプルな規定しか存在しない。それを拡大解釈することで制憲議会は絶大な権力を行使し、マドゥロ政権を支えることを最大の役割としてきた。

このように、2019年1月に「ふたりの大統領」状態に陥る以前から、ベネズエラでは「ふたつの議会」が存在していたというわけである。ふたりの大統領とふたつの国会が存在するとはいえ、国内が二重権力状態にあるというわけではない。というのも、今のところ国内のすべての行政組織、司法、軍、中央銀行、財務当局、国営石油会社などをマドゥロ派が掌握しているため、マドゥロ政権が制憲議会とともに実効支配を継続しているからである。それに対してグアイド側は少しずつその牙城を崩そうとしている。

ひとつには、グアイドを暫定大統領として承認した国々や国際機関に対して、グアイドは外交関係の構築を進め、国際社会からの承認を自らの正統性の根拠のひとつとして獲得してきた。1月29日には、米国、カナダ、コロンビアなどグアイドを暫定大統領として承認する10カ国およびリマグループ4に対する大使を任命した5。また2月末には、グアイドはコロンビア、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン、エクアドルを大統領として訪問し、それらの国で大統領待遇で迎え入れられている。現在は米国、カナダ、ラテンアメリカおよびヨーロッパの大半の国、日本、韓国、オーストラリアなど50カ国以上がグアイド暫定大統領を承認している。

国際機関についても、1月31日にEU議会がグアイド暫定大統領をベネズエラの正統な政府として承認した6。また米州開発銀行(Banco Interameriano de Desarrollo: BID)も3月に、グアイドが任命したエコノミストをベネズエラ代表として承認した7。米州機構(OAS)も、アルマグロ事務総長(Luis Almagro)が早々に個人としてグアイド支持を表明していたのに加え、4月初めにグアイドが任命した大使をベネズエラの正式なOAS代表として認めることが決定された8。一方国連においては、中国とロシアが安全保障理事会でマドゥロ政権擁護を継続し、米国をはじめとするグアイド支持の国々と対立している。3月1日には国連安全保障理事会で、米国が自由選挙の実施と人道支援物資の持ち込みを求める決議案を提出し、承認に最低必要な9票を獲得したが、中国、ロシアが拒否権を発動し廃案となった。一方ロシアも同日に「国内の介入勢力および国外からの武力介入の脅威に対する懸念」決議案を出して対抗したが、賛成4票、反対7票、棄権2票で否決された9

グアイド暫定大統領によるマドゥロ政権の実効支配切り崩しのふたつめの方策は、国営石油会社PDVSAおよびPDVSA100%米国子会社Citgoの経営陣の任命である。マドゥロ大統領は、政権死守のために不可欠な軍の支持を維持するために、石油産業や企業経営の知識をもたない軍人にPDVSA社長をはじめ経営ポストを与えてきた。その結果PDVSAは2018年のわずか1年で産油量が半減するという事態に陥っている10。それに対してグアイドは、PDVSA再建のために、石油や企業経営の専門家をPDVSAおよび米国子会社Citgoの経営者に任命した。

実効支配を奪うべくグアイドが仕掛けるみっつめの方策は、軍人や行政組織を担う公務員や国営企業の労働者らに対する、マドゥロ政権からの離反の説得である。反政府派が過半数を占める国会は、マドゥロ政権から離反し「民主主義の側についた」軍人・文民(外交官や公務員など)に対し恩赦を認めることを決定した。2月23日の人道支援物資持ち込みの際には567人の兵士や警官などがマドゥロ政権から離れグアイド暫定大統領を支持するとしてコロンビアに脱出した11。それ以前、またはそれ以降にもマドゥロ政権から離反して国外に脱出した軍人は各国合計でおよそ1500人といわれている12。一方グアイドは、石油労組や外務省職員組合、国営電話会社労組などとも会合を重ね、公務員組合のなかで支持を広げている13

またマドゥロ派の最高裁のモレノ裁判長(Maikel Moreno)はグアイドに対して出国禁止命令を出していたが、グアイドはそれを無視し、2月27日に多数の市民ボランティアとともに人道支援物資を持ち込むためにコロンビアに陸路出国した。直後に南米5カ国を歴訪したグアイドが帰国する際には、出国禁止命令を無視したため逮捕されることが強く懸念されていたが、グアイドは宣言どおり3月6日にマイケティア国際空港(カラカス)から入国した。その際入国管理官から「大統領、お帰りなさい」と声をかけられ、空港警備の国防軍に拘束されることもなかった。マドゥロ政権の統率下にあるはずの公務員や兵士がグアイドをそのように迎えたこと、マドゥロ政権が「出国禁止命令」に背いたグアイドを逮捕できなかったことは、マドゥロ政権の実効支配が揺らいでいることを示した。

3. 人道危機と国際支援物資の持ち込み

ベネズエラではチャベス期以来の経済政策の失敗で、食料や医薬品を中心に基礎生活物資の不足が年々深刻化していた(坂口2018b)。5年連続のマイナス成長やハイパーインフレのショックは、貧困層にとっては生存にかかわるレベルの打撃を与えた。子供たちを中心に栄養不足から健康を害したり死亡するケースが増えている。栄養失調で亡くなった5歳未満の子供は、2017年の71人から2018年には194人に増え、2019年では1月からの45日間だけですでに29人の子供たちが栄養失調で命を落としており(Maya 2019)、前年をはるかに上回る数の子供たちが死亡する可能性が高い。

医薬品不足も深刻で、国内の病院の多くが機能していない。世界銀行のデータベースによると、乳児死亡率(1,000人当たり)は2011年の14.3から2017年には25.7にまで悪化した14。2016年に保健大臣が発表した報告書では、2015年と比較して妊婦死亡数は66%増加、乳児死亡率は30%増加している15。マドゥロ政権は現在の人道危機は米国による経済制裁がもたらしたと主張するが、制裁発動以前にすでにこれだけ状況が悪化していたことは、注目に値する。治療を受けるために陸路国境を超えてコロンビアやブラジルの公立病院にベネズエラ人の病人や妊婦が殺到している。コロンビアでは,ベネズエラから周産期ケアを求めて避難してきた母親から生まれた乳児が2万人以上にのぼり16、現地の医療サービスに大きな負担となっている。

近年このような人道問題が悪化しているにもかかわらず、マドゥロ政権は国内には人道危機は存在しないと主張し、海外からの人道支援物資の受入れを拒否してきた。人道危機の存在を認めると、政権がその責任を問われるからである。そのため国連難民高等弁務官事務所(UNCHR)や国際人権団体などは、ベネズエラ国内ではなく、隣国コロンビアやブラジルに逃げてきたベネズエラ避難民に対して支援を行ってきた。

一方グアイドは米国をはじめ各国に支援物資の提供を依頼し、コロンビアやブラジルなどの国境地帯に国際支援物資を集積させた。そして2月23日にそれらを国内に持ち込むと発表し、国軍兵士や警察などの治安当局に対し、支援物資の持ち込みを認めるよう求めたのである。マドゥロ政権はそれに対して、人道支援物資の持ち込みは米国とグアイド側による政治的戦略であるとして、支援物資の持ち込みを拒絶し、コロンビアとの国境の橋に大型コンテナを設置して国境を閉鎖し、軍や警察、民兵組織らを動員して国境警備を固めた。2月23日に大量の支援物資を積んだ大型トラックが4台、非武装の大勢のベネズエラ市民とともにベネズエラ領内に入ろうとしたところ、国防軍や武装したマドゥロ支持派の武装市民組織(「コレクティボ」と呼ばれる)らがそれに向かって発砲し、400人以上の負傷者が出た17。一方ブラジルとの国境付近では、支援物資の持ち込みを阻止するために国境警備に向かう国防軍が、国境地帯に集住する先住民族の村人を攻撃し、25人が犠牲となり、60人が行方不明になっている18

命を落とす国民が続出するなかでの人道支援物資の持ち込みは、人道的観点から否定しがたく、それゆえ政治的作戦として巧妙であるともいえる。もしグアイド側が人道支援物資の持ち込みに成功するとすれば、その阻止を担う国軍がマドゥロから離反したことを意味する。それがきっかけとなって、マドゥロに対する軍の支持が崩れれば、政権失脚につながりかねない。そのためマドゥロ政権は、国境地帯に国軍のみならず、公的な治安部隊ではない武装ギャングのコレクティボや刑務所の服役囚を釈放して国境封鎖に配置するという暴挙に出た(Tavel 2019)。

4. 4月30日「自由のための作戦」とその失敗

4月30日の未明、グアイド暫定大統領は国軍に対してマドゥロからの離反を求めて決起する「自由のための作戦」を呼びかける動画をSNSで発表した。彼の横には、政治犯として過去5年拘束され、国防軍と国家情報警察庁(SEBIN)の厳しい監視のもと自宅逮捕状態にあるはずの、大衆の意思党(Voluntad Popular: VP)党首のレオポルド・ロペス(Leopoldo López、表1参照)が立ち、ふたりはマドゥロ政権から離反した国防軍兵士によって警護されていた。ロペスは、過去幾度も秘密裡に軍人らと交渉を重ねてきていたこと、また彼らの手によって釈放されたことを明らかにし、軍や治安当局によるマドゥロ支持が崩れていることをアピールした。グアイドとロペスは「国軍はわれわれとともにある、終わりの始まりだ」と発言し、より多くの軍人と市民に合流するよう呼びかけた。動画を見た反政府派市民が集結したが、非武装の市民に対して、マドゥロ側の国防軍やコレクティボが催涙弾や実弾を発砲し犠牲者が出るなど、事態は一気に緊迫化した。装甲車が市民を轢き倒す場面も、その場にいた市民が撮影したスマホの動画によって瞬時に世界に発信された。最終的には軍人らの離反はその後広がらず、マドゥロが同日夜に「離反した軍人は限定的で、すべてはコントロールされている」との終結宣言をするに至った19。なお,この日の弾圧で2人の中高生を含む4人が犠牲となった20

マドゥロは国軍の最高司令官であるにもかかわらず、ツイッターで「すべてコントロール下にある」と発信したのみで、早朝のグアイドらの決起以降夜まで姿をみせなかった。そのため、マドゥロはすでに国外に逃げたのではないかという憶測がとびかった。

当日何が起きているかを明らかにしたのは米国だった。自由のための作戦の失敗が明白になった同日夕方、アブラム特別補佐官は、過去1~2カ月、パドリーノ・ロペス国防相(Vladimir Padrino López)とモレノ最高裁裁判長および大統領警護トップのエルナンデス・ダラ(Iván Rafael Hernandez Dala)の3人がグアイド側と内通し、マドゥロ退陣と選挙実施に向けて秘密裡に交渉を重ねてきたこと、最後の最後でパドリーノ・ロペスらが電話に出なくなったと暴露したのである。またポンペオ国務長官も、マドゥロは国外脱出直前であったが、ロシアがそれを引きとめたと非難した。グアイドは同日夜に、自由のための作戦は翌日も継続するとして動員を呼びかける一方、米国が暴露したとおりマドゥロの背後でパドリーノ・ロペス国防相らと交渉を進めていたことを明らかにした。

これに対してパドリーノ・ロペス国防相は、グアイド側と交渉していたことを認めざるを得なくなった。彼はマドゥロと並び演説し、反政府派が彼を買収しようとしたが、むろんそれに乗らなかったとして、政権への忠誠を誓ったのである21。しかしその説明にはあまり説得力がない。というのも、もし彼がいうように反政府側からの買収の働きかけがあってそれに乗らなかったのであれば、彼はそれをマドゥロに事前に伝えていたはずであろうし(そうしないと自分が疑われる)、そうであればマドゥロはグアイドらの動きを事前に知っていて準備ができたはずだ。そして当日グアイドらが決起した際に、早々にパドリーノ・ロペス国防相と並んでメディアの前で暴露すれば、これほどまでの緊迫した事態に陥る前に容易に収拾し、国軍のマドゥロ支持が堅いことを示すことができたであろう。しかし軍の最高司令官であるはずのマドゥロが半日以上も所在がわからなかったこと、そしてパドリーノ・ロペス国防相による説明が2日もたってからであったこと、またパドリーノ・ロペス国防相が「(グアイドらが)われわれを買収しようとした」と発言した際の、横に立つマドゥロの驚いた表情(注21の動画を参照)などから、マドゥロはこの買収劇について何も知らず、パドリーノ・ロペス国防相らがマドゥロ退陣を裏で交渉していたという説明のほうが納得がいく。

4月30日の自由のための作戦の失敗は、いうまでもなくグアイド側にとって大きなダメージを与えた。一方で、マドゥロにとっても大きなダメージとなったはずだ。いつも自らの横に並び立つパドリーノ・ロペス国防相とモレノ最高裁裁判長が自分を裏切っていたということは、マドゥロを誰も信じられないという疑心暗鬼に陥いれただろう。裏切られたことがわかっても、表向きに彼らは「買収されずに忠誠を守った、または買収されたふりをしていた」のであり、結束をアピールしているからには、彼らを切るわけにはいかない。彼らを切ると、それが事実でないことを示すことになる。また、それこそパドリーノ・ロペス国防相による第二の裏切りが起こるかもしれない。

5. 国際社会の対応

グアイドが暫定大統領に就任して以降、国際社会はマドゥロ政権を支持する国々とグアイド暫定大統領を承認・支持する国々で二分している。前者はロシア、中国、キューバ、トルコ、イラン、北朝鮮など、後者は米国、カナダ、ヨーロッパおよびラテンアメリカの大半の国々、日本、韓国など西側諸国を中心とした50カ国以上および米州機構(OAS)、EU議会、リマグループなどの国際組織やフォーラムである。

中国とロシアがマドゥロ政権を支持する最大の理由は、自らの経済権益を守るためであるとみられている22。両国ともにチャベス、マドゥロ両政権下で多額の融資を実施するとともに、ベネズエラの石油権益を獲得してきた。両国ともにベネズエラへの債権で支払いが遅延しているものが数百億ドルあり、リスケに応じることを余儀なくされてきた。それらの債権回収と石油権益を守る必要があるが、それらの多くはチャベス、マドゥロ両政権によって憲法や法律が定める正式な手続きを経て結ばれたものではない。そのため政権交代によってこれらの契約の有効性が揺らぐ可能性がある。

マドゥロ政権の経済政策や石油政策では今後とも経済回復の見通しはない。一方反政府派が提示している国家再建計画(Plan País)では、国際機関などからの支援を受けて緊急的人道ニーズに対応しながら、チャベス、マドゥロ両政権が実施してきた経済活動への過剰な国家介入の緩和・廃止、投資保護を確立させることで国内外資本による投資活動の促進、国内外の民間資本の参加促進による石油部門の再建などをめざすとする23。石油以外にも天然ガス、鉄鉱石、ボーキサイト、金、ダイアモンドと資源豊かな国であるため、投資環境が整えば外資参入が期待できる。また、政権交代が実現すれば米国による経済制裁は解除される。これらにより、マドゥロ政権が継続するよりも政権交代したほうが経済回復の可能性が大きく、焦げ付いた債権回収の可能性が高くなることは想像に難くない。そのためか、中国外務省は、「両者とも話をしており、いずれの結果になっても両国間の協力関係は続く」と発言するなど24、基本的に経済権益が守られるのであれば、政権交代を受け入れる可能性も示唆している。

ロシアも基本的には中国同様に石油権益と債権回収が最大の関心事であるものの、中国とは異なり、ベネズエラを対米関係における戦略的カードとして使っている(Kaplan and Penfold 2019)。ロシアはウクライナやシリアに米国が介入することを嫌っているが、米国も同様にロシアが米国のお膝元であるベネズエラで米国が求める政権交代の邪魔をするのを嫌っている。ベネズエラはロシアにとって、米国のウクライナやシリアへの関与を牽制するためのカードとして有効になりうる。

一方、世界においてもっとも強力に反政府派を支援してきた米国はどうか。米国はオバマ政権期から人権や麻薬といった犯罪容疑があるベネズエラの政府高官など個人に対する制裁措置(米国への渡航禁止と米国内の資産凍結)を行ってきた。加えてマドゥロ政権が制憲議会を設立したことへの対抗措置として2017年8月に金融制裁措置を、2018年1月にはマドゥロが二期目に就任したのを受けて石油貿易禁止措置をとった。前者はマドゥロ政権が対外債務を新規債務とのスワップで乗り切るのを阻止する目的で、ベネズエラの国債やPDVSA社債などの取引に米国人・法人が関与するのを禁止するものである。これによってマドゥロ政権は資金繰りに窮するようになった。2019年1月以降に実施された石油貿易禁止措置は、ベネズエラからの石油輸入の禁止に加え、ベネズエラへのナフサやガソリンといった石油製品の輸出を禁じるものである。ベネズエラの外貨収入のほぼ100%が石油輸出によるもので、縮小したとはいえいまだその4割以上は米国市場向けである。そのため石油貿易禁止措置はマドゥロ政権にとって外貨収入を大きく縮小させるもので、大きな打撃となった。ベネズエラは当初はインドなどに代替的に石油を輸出していたが、米国がベネズエラの石油を購入した第三国の企業に対しても米国内において制裁対象とするとしたことから、インドもベネズエラ原油の購入から手を引いたため、マドゥロ政権はますます追い込まれている。

米国トランプ政権がこれほどまでにベネズエラに対して強いコミットメントをみせるのはなぜか。ひとつには、米州の盟主の責任として、域内の民主主義を擁護する役割を担っているということはあるだろう。これはヨーロッパ諸国も同様であり、民主主義や立憲主義を統治の柱とする近代国家として、著しく自由や民主主義、人権、立憲主義から逸脱する国に対して目をそらすべきではないという国際社会における責任である。それに加えて、トランプ政権の場合は、2020年の再選を念頭においたとき、ベネズエラにおける民主主義の回復にトランプ政権が貢献することができれば、大統領選の勝敗に大きな影響力をもつ大票田であり、亡命キューバ人やラテンアメリカ系の有権者が多いフロリダ州において大きなアピールとなることが予想される(Karni and Mazzei 2019)。加えて、もしベネズエラでマドゥロ政権が倒れれば、ベネズエラ原油によって支えられてきたキューバの革命政権、そして近年ベネズエラ同様に強権化の進展が懸念されているニカラグアのオルテガ政権なども、ドミノ倒しのように倒れるか、少なくとも弱体化させることができるだろう25。そうなれば、トランプ大統領にとっては外交上大変大きな成果といえ、2020年の再選にもはずみがつくと考えられる。

4月30日の自由のための作戦以降、ベネズエラ情勢は、複数の国際的スキームにおいて別々に協議されるようになった。ひとつは、米国とロシアの二カ国による協議だ。トランプ、プーチン両大統領は「自由のための作戦」の直後に長時間におよぶ電話会談を行い、また両国外相が2度にわたって直接会談を行いベネズエラ情勢について協議している(内容は未公開)。一方5月下旬には、ノルウェーがマドゥロ、グアイド両者の代表を招き、2度にわたり対話を仲介した。マドゥロ政権はこれについて大々的に「平和的解決のためにノルウェーで反政府派と対話をもち、成果をあげた」と喧伝する一方、グアイドは当初ノルウェーでの対話について公表せず、マドゥロ側による公表を受けたあとも、「マドゥロ側の代表とは直接的には話していないし、同じ空間にもいなかった。」と説明し、対話への消極姿勢をアピールしていた。

これは、対話が、マドゥロ政権下の特殊な政治的文脈において特別な意味をもつからである。マドゥロ政権は今までにも2014年、2017年と大きいものだけで2回、反政府派の抗議行動の激化および長期化によって政権失脚の瀬戸際に追い詰められた。そのたびにマドゥロ政権は反政府派に対話を呼びかけた。反政府派は政治犯の即時釈放やマドゥロ退陣、公正な選挙の実施などを求めたが、マドゥロ政権はもともと歩み寄る意図はなく、700人近い政治犯のうちわずか数人を釈放するぐらいで時間稼ぎをした。実際、直前まで沸騰していた反政府派の抗議行動は対話の間に鎮静化した。加えて、対話を提案することで、対話に応じる反政府派内穏健派と、マドゥロ政権の時間稼ぎにつきあうと反政府派が弱体化するとして対話に断固反対の急進派の間で分裂を誘うことができる。これらの繰り返された経験から、反政府派政治リーダーや市民の間では、マドゥロ側が求める対話は、時間稼ぎと反政府派分裂のための戦略であると理解されており、強い拒否反応がある。それが、グアイドがノルウェーでの対話に代表を送ったことを公表しなかった理由である。実際グアイドが対話の呼びかけ応えて代表団を送ったことに対しては、反政府派勢力やグアイド支持者らの間から大きな落胆と批判が寄せられており26、マドゥロ政権の作戦が今回も奏功したといえる。

ノルウェーでの対話とほぼ並行して、スウェーデンにおいて、ロシア、キューバ、バチカン、国連、EUの代表がベネズエラ危機の解決のために会合をもった(米国は招待されたが参加せず)(Goodman and Parra 2019)。議論の内容については公にされていないが、このスウェーデンでの会議には、ロシアのみならずベネズエラから送られる石油によって国家経済が維持され、革命政権維持のためにはマドゥロ政権の継続が不可欠なキューバが参加している。事実上ベネズエラと運命共同体となっているキューバおよびマドゥロ政権を支持するロシアが参加したことで、スウェーデン会議が中立な立場での検討が可能な場であったかという点については疑念が残る。

国連については、米国、中国、ロシアが安保理で拒否権をもつためベネズエラ問題について国連としての明確な立場を表明し、具体的な解決策を示すことができていない。3月には、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官(Michelle Bachelet)がベネズエラに調査団を送り、加えて6月19~21日はバチェレ自らがカラカス入りした27。3月の調査団の報告書では、ベネズエラの人権問題が深刻であること、そして治安部隊(とくに特別作戦部隊FAES)の手によって2017年には205人が、2019年1月の反政府派の抗議デモに対する弾圧で27人が命を落としていることなどを指摘し、国家による暴力を糾弾しており28、バチェレ自身の視察のあとに、彼女自身がどのような報告をするのかが注目されている。

6. 危機のなかマドゥロ政権はなぜ維持できているのか

経済が破綻し、総人口の1割を超える400万人が国を脱出するほどの困難な状況にあり、各種世論調査でもマドゥロへの支持率が15%を切っている状況で29、なぜマドゥロは政権を維持できているのだろうか30

第一に、マドゥロ政権が軍高官の支持をかろうじて維持しているためである。中位以下の軍人の大半はすでに心情的にはマドゥロ政権から離れている31といわれている。というのも、彼らの給与水準は経済危機により著しく落ちており、一般市民と同様に厳しい生活に苦しんでいるからだ。しかし一方で軍高官の離反がなかなか広がらない。その理由として、マドゥロ政権下で軍高官の多くが、閣僚ポスト、国営企業の経営や食料配給(CLAP)やそのための公費での食料輸入などに関する、さまざまな利権ポストについている32。政権交代すればそれらを失うことになる。また、軍高官の多くが、麻薬取引、マネーロンダリング、汚職、人権侵害などの犯罪に手を染めており、政権が交代すれば処罰を免れないことも、彼らがマドゥロ政権を守る理由である。

国内の司法はチャベス派によって支配されているが、麻薬取引やマネーロンダリングなど海外における犯罪については、米国、コロンビア、メキシコ、アンドラ、ドミニカ共和国など海外の検察、司法のもとで調査が進んでおり、マドゥロをはじめチャベス派の政治リーダーや軍高官の多くが捜査対象にあがり、米国などで個人制裁措置の対象となっている33。とくにディオスダード・カベージョ(Diosdado Cabello)制憲議会議長を筆頭に、チャベス、マドゥロ両政権下で要職を歴任した政治家(軍人、文民ともに)の多くが麻薬取引およびマネーロンダリングに深くかかわっており、「太陽カルテル」(Cartel de los Soles)と呼ばれている34。また、チャベス派から離反した元チャベス派の政治家や軍人および海外で麻薬取引容疑などで逮捕されたチャベス派の政治家やその親族、軍人、チャベス派の企業家ら35が司法取引に応じて米国の操作当局側に情報を出している。政権交代すると、それらの犯罪行為が一気に明るみに出て処罰は免れないため、「黒い」チャベス派政治家や軍高官は、是が非でも政権交代を阻止しなければならない。

第二に、国民の支持を失い、米国による経済制裁や産油量の激減で追い詰められたマドゥロ政権の継続を可能にしているのは、マドゥロ政権支持の諸外国、とくにロシア、中国およびキューバによる支援である。中露については上述したとおりだが、キューバがマドゥロ政権に対して、軍やインテリジェンス部門において協力し、政権を支えているといわれている36。チャベス政権期よりベネズエラはキューバに対して石油を送り、キューバはその対価を医師や教師といった人材を常時約2万人送りこむことで支払ってきた。キューバにとってベネズエラの石油は国家経済を支える柱であるため、チャベス派政権の継続はキューバ経済および革命政権にとって体制維持のためには不可欠である。経済が破綻し国民の支持を失ったマドゥロ政権を維持するために、キューバの軍やインテリジェンス部門のノウハウと人材支援によって、ベネズエラの軍や情報部が強化されてきた。その結果軍内部での離反可能性がある人物を未然に逮捕して芽を摘むことに成功しており、その意味でキューバはマドゥロ政権の維持を間接的に支援してきたといわれている。

現在ベネズエラの石油生産量はチャベス政権前の約4分の1にまで落ち込み、国内ではガソリン不足が著しく、地方都市ではガソリンスタンドを前に7キロもの行列や3日間も車内に寝泊まりしながら行列をするほどだ37。外貨収入も枯渇し、国民が栄養失調や医薬品不足で命を落としている。その一方、マドゥロはキューバに対して貴重な石油を送ることに固執している。5月には全体の石油輸出量が17%縮小するなかキューバに対してはその前の月々より倍近い91,000万バレル/日を送っている38。キューバがさまざまな部門(とくに軍やインテリジェンス部門)において自らの政権維持にとって鍵となる役割を担っているからという以外に、この状況でマドゥロがキューバに対してこれだけのコミットメントを続ける説得的理由がみつからない。

むすび

ふたりの大統領が並び立つ状態になってから半年が経過しようとしている。事態が長期化するにつれて、1月の熱狂的なグアイド派のモメンタムは冷え始めている。マドゥロ側の「対話による時間稼ぎと反政府派の分断」作戦が今回も功を奏し、ノルウェーでの交渉に参加したグアイドに対して、反政府派政治リーダーや市民から厳しい批判が寄せられている。そのため、グアイド側にとっては、これ以上交渉を続けることは極めて難しい。

時間が経過するほど、国民の厳しい生活が長期化し、栄養失調や医薬品不足から命を落とす人が増える。このような状況に対してベネズエラ国民の間から、米国に対して軍事介入を求める声も上がり始めている。ベネズエラ憲法第187条は国会の権限として「ベネズエラ国軍の海外での活動および外国軍のベネズエラ国内での活動を承認する」と規定しており、グアイドが国会議長としてこれを発動すれば、憲法にのっとって外国からの武力介入を要請することができる。しかし現時点では、米国による軍事介入の可能性は極めて小さいと考えられる。コロンビアやブラジルをはじめとする、グアイド支持の南米諸国も武力介入には否定的であることから、現時点ではこの可能性は小さいと考えられる。そのため、マドゥロ政権から離反し国外に脱出したベネズエラ人兵士らの組織化を進めるグループもいる(注12)。

グアイド側は今のところ手詰まり状態にある。とはいえ、米国の経済制裁と産油量の減少によって、マドゥロ政権も外貨枯渇状態に陥っており、軍上層部による深刻な離反が政権を危機にさらす可能性は消えない。バチェレ国連人権高等弁務官も促したように、今後国際社会の圧力が、マドゥロ退陣からノルウェーなどでの対話へとシフトするのであれば、マドゥロ政権の継続の可能性が高くなる。

最後に現在のベネズエラの政治的危機について数点コメントしたい。ひとつは、現在の厳しい政治危機は、左派、右派といったイデオロギー対立ではなく、独裁体制とそれによって抑圧される反政府派の対立であるということである。ふたつには、現在の政治危機がよりいっそう深刻なのは、単なる政治対立ではなく、あらゆる国家制度が崩壊しているという点である。マドゥロ政権による国会の権限剥奪に始まり、制憲議会や最高裁、選挙管理委員会など、すべての国家権力の担当者の任命や運営は、憲法や法の定めを逸脱して行われてきた。経済活動にかかる制度も同様である。中央銀行、PDVSA、国営電力会社、銀行制度、為替制度など、政治的思惑と汚職によって本来の機能が著しく阻害されてきたこれらの制度を一から立て直すのは、大変な作業であり、多くのリーダーシップ、専門的人材、そして多くの時間が必要になることが予想される。

民主主義の回復のためには、チャベス、マドゥロ政権下で歪められてきた選挙制度を、一から再建する必要がある。ひとつには、両政権下で操作され、チャベス派を有利にしてきた、ゆがんだ有権者登録のやり直しである。また人口の1割以上にあたる400万人が国外に脱出したが(その大半は反政府派に投票する可能性が高いと考えられる)、彼らを在外投票のための登録に結びつけることも重要である(または帰国して国内で投票)。チャベス派が支配してきた選挙管理委員会の入れ替えも不可欠である。国家選挙管理委員会(Consejo Nacional Electora: CNE)は5人だが、全国の地方レベルの選挙管理委員会も同様であるため、それらをすべて制度にもとづき公平なやり方で人選し直す必要がある。そのためマドゥロ失脚に至ったとしても、その後の選挙実施による新政権の誕生までの道のりは遠いといえよう。

(2019年6月25日脱稿)

(追記)バチェレ国連人権高等弁務官によるベネズエラ人権報告が7月4日に発表された。厳しい人権危機の実態、そして治安当局によって2018年には5287人が殺されるなど国家による暴力の実態が報告された。 “UN Human Rights Report on Venezuela Urges Immediate Measures to Halt and Remedy Grave Rights Violations.” July 4, 2019. 英文報告書のリンクが左記ページの下部にあり。

本文の注
1  本稿は4月初めに公開した短い論考(坂口2019)をさらに拡大しアップデートしたものである。本稿では経済危機と米国の経済制裁の関係についてはふれなかったが、それについてはこちらを参照。

2  1月11日の国会においてグアイド議長は、憲法第333条、第350条、第233条に基づき、「(マドゥロによる)憲法の強奪状態を停止し(el cese de la usurpación)、自由な選挙を実施する」と宣言した(暫定大統領就任宣言は1月23日)。“Juan Guaidó: Me apego a los artículos 333, 350 y 233 para lograr el cese de la usurpación y convocar elecciones libres con la unión del pueblo, FAN y comunidad internacional.” 11 de enero, 2019, Asamblea Nacionalウェブページ、2019年6月29日アクセス。

3  制憲議会選挙は、マドゥロ政権が指定した社会組織に対しては、その代表を選出するために追加の票を与えるなど、チャベス派に圧倒的に有利なかたちで実施された。そのため反政府派は選挙をボイコットし、その結果すべての議席をチャベス派が占める制憲議会が誕生した。詳細は坂口(2018a)。

4  ベネズエラの民主主義回復のために協議する米州カリブ諸国グループで、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、パナマ、パラグアイ、ペルー、ガイアナ、サントルシアの14カ国からなる。 

6  グアイドをベネズエラの正統な大統領として承認する決議案に、439票が賛成、104票が反対、88票が棄権。“Así fue la votación del Parlamento Europeo que reconoce a Guaidó como presidente encargado.” La Patilla, 31 de enero, 2019.

8  賛成18カ国、反対9カ国、棄権6カ国。 “OEA acepta nombramiento de Tarre, designado de Guaidó, como representante de la Asamblea Nacional de Venezuela.” CNN Español, 4 de abril, 2019.

10  ケベド将軍(Manuel Quevedo)がPDVSA総裁に就任する以前は200万バレル以上あった日産量はわずか1年(2018年末)で119万バレルに半減、そして2019年4月には76.8万バレルにまで激減している(OPEC 2019, 57)

12  マイアミで活動する亡命ベネズエラ人の政治組織、VEPPEX(Venezolanos Perseguidos Políticos en el Exilio)代表のJosé Antonio Colina元中佐への筆者インタビュー(2019年5月22日、Doral市にて)。

14  Mortality Rate, infant (per 1,000 live births) , The World Bank Data. 2019年6月25日アクセス。

15  マドゥロ政権下では経済社会状況の悪化にともない、統計データを公表しなくなっていた。2年ぶりにこれらの数字を発表した保健大臣はその直後に更迭されている(Brocchetto, Gillespie, and Jones 2017)。

18  先住民枠選出のグサマナ国会議員の発表。マドゥロ政権は犠牲者は4人と発表している。"Diputado Guzamana presume 25 indígenas muertos a manos de la FAN." NTN24, 27 de febrero, 2019.

19  当日の出来事は以下にオンタイムでまとめられている。“Minuto a minuto: Juan Guaidó y Leopoldo López dicen que comienza el “fin de la usurpación”; gobierno lo llama un “golpe de Estado.” CNN Español, 30 de abril de 2019.

27  バチェレは元チリ大統領で社会主義者。彼女自身が医者であり、またチリの軍事政権期に獄中で拷問を受けた経験があるため、反政府派のあいだでは医療サービスの欠如や栄養不足で命を落とす人々、あるいは拷問を受けた政治犯への深い理解が得られるとの期待が高かった。

29  Datanalisis社の6月時点で直近の調査。マドゥロ支持率は12.9%、グアイド支持率は56.5%。また84.1%の回答者がマドゥロに対して否定的評価をしている(Zapata 2019)。一方、Hercon Consultores社が1月末に実施した電話調査では、マドゥロ大統領とグアイド暫定大統領のどちらを支持するかという設問に対してマドゥロと回答した人は暫定値で14.4%、グアイドを暫定大統領として支持する人は78.7%(Matute 2019)。

30  以下麻薬、マネーロンダリング、汚職などに関する情報は、Sanchez(2018), Corrales(2019), Woody(2019), “Why Venezuela's Military May Be Standing By Maduro, For Now.” NPR, Jan.25, 2019, などの記事、国外のテレビニュースやインターネットの政治分析番組(いずれもインターネットで視聴可能)、BaylyAgárrate, NTN24などの議論や情報、および2019年5月にマイアミDoral地区で実施したベネズエラ人ジャーナリスト、元軍高官、元PDVSA経営者などへの筆者インタビューより。

32  Bermúdez(2019), “Los militares abarcan 26% del gabinete de ministros del presidente Nicolás Maduro.” La República, 27 de junio de 2018、上記Bayly, Agárrateなど。

35  最も有名なのは麻薬取引で逮捕されたマドゥロの妻の甥で、「麻薬の甥っこ」(narcosobrinos)と呼ばれる(Pierson2017)。2018年にマドゥロ政権から離反し米国に逃げたオルテガ元検事総長(Luisa Ortega)、チャベス、マドゥロ政権下で情報警察SEBINのトップを務めたカルバハル将軍(Hugo Carvajal、注33EFE記事の人物)、4月30日にレオポルド・ロペスを釈放しマドゥロ政権から離反したSEBINトップのクリストファー・フィゲラ(Manuel Cristopher Figuera)をはじめとする離反した元軍高官や政府高官など、内情を知る人物が現在米国でマドゥロ政権内や軍人の汚職、麻薬取引、マネーロンダリング、人権侵害などの犯罪行為について情報を出し始めている。”I Gave US ‘Compromising’ Evidence on Venezuela Officials-Ex-chief Prosecutor.” The Guardian, October 13, 2017など。

36  (Carrasco 2019; Werlau 2019; Corrales 2019)など。また公に報道され、反政府派の強い反発を招いた事案として以下ふたつがある。2010年にはチャベス大統領がキューバ情報部の創設者で国家評議会副議長のラミロ・バルデス(Ramiro Valdés)将軍をベネズエラにアドバイザーとして招聘した(Valery 2010)。2013年にはチャベス、マドゥロ両大統領とも近かったベネズエラ人左翼ジャーナリスト、マリオ・シルバ(Mario Silva)が、キューバのインテリジェンス部門G2 Cubanoのメンバーに対して、マドゥロ政権内部の権力闘争や汚職問題などについて情報提供する会話の録音が暴露された。その中でシルバはキューバ人情報員に対して、「あなた方がいないと、医療、教育、すべて崩壊する。インテリジェンスもだ」と発言している。録音音声はYoutubeで視聴可能。また、キューバ軍人が国軍の指揮官となることなどに反発してチャベス政権から離反した国軍の元将軍らが実体験を証言している(Blanco et al. 2019)。

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