ラテンアメリカ・レポート
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北中真人・藤代一雄・細野昭雄・伊藤圭介 著 『パラグアイの発展を支える日本人移住者―大豆輸出世界4位への功績と産業多角化への新たな取組み』
清水 達也
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2020 年 36 巻 2 号 p. 96

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パラグアイは、ブラジル、アルゼンチン、ボリビアに囲まれた南米の内陸国である。日本では知名度が高いとはいえないが、近年は大豆やゴマの輸出国として注目が集まっている。本書は、パラグアイで農畜産品の生産・輸出が拡大し、同国の経済発展を担っている様子を、その部門の成長を担っている日本からの移住者の活躍をとおして描いている。

本書によれば、日本からパラグアイへの移住者は移住をはじめた1930年代から、おもに自給用に大豆を生産していた。1950年代以降の戦後の移住者も大豆生産に取り組み、1960年には日本へ輸出している。この試みは数年しか続かなかったものの、その後も大豆生産は徐々に拡大し、現在は同国で最も重要な農産品のひとつとなっている。大豆とその派生品(大豆ミール、大豆油)は、同国最大の輸出産品であり、国際市場においてもブラジル、米国、アルゼンチンに次ぐ輸出国となっている。

大豆生産が拡大した理由として筆者が指摘しているのが、日本からの移住者とそれを引き継いだ人々による取り組みである。機械導入による大規模化、小麦と組み合わせた二毛作、不耕起栽培などの新しい技術の積極的な導入により生産が大きく増加した。また、これら移住者が組織化した日系農協は、パラグアイ全体の農業技術の普及や農村開発において重要な役割を果たした。

大豆生産の拡大は農畜産加工クラスターの成長を促したが、ここでも日本からの移住者が重要な役割を果たしたことを、本書では説明している。大豆を搾油加工してえられる大豆ミールは家畜の飼料となるが、これを利用して養豚や養鶏、そして食肉加工にまで活動の幅を広げた。日系移住者や日系農協などが中心となって設立した食肉加工企業は、国内市場だけでなく輸出も手がけている。また、日系移住者が設立した養鶏(採卵鶏)企業は国内最大の規模に成長し、国内の鶏卵市場の約半分を供給している。

本書は国際協力機構(JICA)のプロジェクト・ヒストリー・シリーズのひとつである。著者4人のうち3人はパラグアイ事務所に勤務し、現地で開発援助業務に従事した経験をもっている。農業を中心としたパラグアイの経済発展とあわせて、日本の開発援助がどのように行われたのかを学ぶのに最適な一冊である。

 
© 2020 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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