ラテンアメリカ・レポート
Online ISSN : 2434-0812
Print ISSN : 0910-3317
論稿
荒海に乗り出したアルベルト・フェルナンデス政権 ―アルゼンチンの新「連立政権」の行方―
菊池 啓一
著者情報
解説誌・一般情報誌 フリー HTML

2020 年 37 巻 1 号 p. 14-30

詳細
要約

本稿は、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス政権の閣僚構成と政策課題への対応の特徴を検討したものである。マクリ政権下での経済状況に対する市民のネガティブな評価とクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル前大統領の選挙戦略の妙によって誕生した同政権は、いわば正義党「連立政権」である。2020年4月時点では新型コロナウイルス対策に対する評価から高い支持率を得ていたが、債務再編交渉と経済再生については政権内での経済政策をめぐる調整不足が目立っている。有権者はフェルナンデス政権に対する評価を大統領個人に結びつける傾向があるが、今後政権の支持率が低下した場合にキルチネル派を重用するのは得策ではないと考えられる。

はじめに

アルゼンチンでは大統領選本選挙が2019年10月27日に実施され、アルベルト・フェルナンデス(Alberto Fernández、以下フェルナンデス)が第一回投票での当選を決めた。現職のマクリ(Mauricio Macri)を破って4年ぶりに正義党(Partido Justicialista)政権を復活させたフェルナンデスであるが、これまで公選職を務めた経験がほとんどないという点において異例の大統領である。連邦制国家のアルゼンチンでは首都のブエノスアイレス自治市(Ciudad Autónoma de Buenos Aires、以下ブエノスアイレス市)を含めて州の重要性が高く、歴代大統領のほとんどが州知事を経験することで自身の党内における地位や支持基盤を確固たるものにしてきた1。しかし、フェルナンデスは2003~2008年に官房長官であったものの、公選職はブエノスアイレス市議(2000~2003年在職)しか経験していない。そのため、正義党におけるフェルナンデスの勢力は極めて小さく、選挙戦序盤は多くの有権者が同じく官房長官経験者のアニバル・フェルナンデス(Aníbal Fernández、2009~2011・2015年在職)と混同するなど2、その集票力も疑問視されていたのである。

そのようなフェルナンデスを大統領候補に指名したのは、かつて国家介入型経済を志向していたクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル前大統領(Cristina Fernández de Kirchner、2007~2015年在職、以下クリスティーナ)であった。汚職疑惑に対する有権者のネガティブなイメージや2017年中間選挙でのキルチネル派の敗北などを考慮して自身は副大統領候補に回り、正義党の州知事やブエノスアイレス都市圏の市長たちとの連携が可能で中道票も期待できるフェルナンデスに白羽の矢を立てたのである。そして、彼女の思惑どおりフェルナンデスの擁立は正義党のさまざまな勢力の大結集を促し、4年ぶりに正義党が政権を奪還することとなった[菊池 2019]。

このような背景から正義党の複数の勢力の閣僚によって構成されているフェルナンデス「連立政権」であるが、2020年4月時点では高い支持率を得ていた。サン・アンドレス大学(Universidad de San Andrés)の「政治的満足と世論調査」(Encuesta de Satisfacción Política y Opinión Pública)プロジェクトで実施されている全国の約1000人の有権者を対象としたオンライン調査によれば、新政権発足1カ月後の2020年1月の調査での支持率は50%であり、同様の時期(2016年1月)のマクリ政権(2015年12月~2019年12月)の支持率の72%を大きく下回っていた。しかし、その後の新型コロナウイルス対策が評価され、4月の調査では67%の回答者が新政権への支持を表明したのである3。外出禁止措置の長期化などもあり、現在支持率は低下傾向にあると思われるが、新政権発足後の半年としては悪くないスタートである。

それでは、正義党内での勢力が小さいフェルナンデスは、4年の任期期間中良好な支持率を背景に現在の閣僚構成を維持し、より中道寄りの経済政策を実施することができるのであろうか。それとも、閣僚ポストにおけるキルチネル派のシェアが大きくなり、国家介入型経済政策が採られるようになるのであろうか。本稿はこれらの問いについて考察するための一助として、フェルナンデス新政権の閣僚構成と政策課題への対応の特徴を記述することを目的としている。以下では、政権交代につながった2019年の国政選挙の背景と結果を確認したうえで、新政権の閣僚構成と政策課題への対応を検討してみたい。

1. 2019年大統領選・上院選・下院選

(1) 選挙制度

2019年は23の州と首都のブエノスアイレス市からなるアルゼンチンの選挙年であり、国政選挙(大統領選、上院選、下院選)と数多くの地方選挙が実施された。大統領の任期は4年で連続再選が一度だけ認められており、第一回投票での当選には有効票の45%、もしくは2位に10%ポイント以上の差をつけたうえで40%を獲得することが必要となる。そして、第一回投票での当選者が出なかった場合に限り、30日以内に上位2名による決選投票が実施される。他方、各州を選挙区として5名(10州)から70名(ブエノスアイレス州)が選出される下院議員の任期は4年で、2年ごとに拘束名簿式比例代表制によって定員257の半数が改選される。また、各州から3名(最多得票の政党・選挙連合から2名、次点の政党・選挙連合から1名)が選出される上院議員の任期は6年で、2年ごとに定員72の3分の1が改選される。なお、いずれの国政選挙においても、本選挙に進むためには予備選挙(Primarias, Abiertas, Simultáneas y Obligatorias: PASO)4を通過する必要がある。

(2) 選挙連合の形成

1983年の民主化後しばらくの間は急進党(Unión Cívica Radical)と正義党を中心に展開されたアルゼンチン政治であるが、1995年以降は選挙連合(electoral coalitions)が形成されるケースが増加している[Mauro 2018]。2019年の大統領選においても予備選挙に立候補した10名中7名が選挙連合から出馬したが[Tow 2019]、その際の選挙連合形成の主役となったのはフェルナンデスを擁立して自身は副大統領職におさまったクリスティーナであった。

(出所)サン・アンドレス大学の「政治的満足と世論調査」プロジェクトの調査結果(2020年6月23日アクセス)をもとに筆者作成。

(注)「概して、あなたはマクリ政権(2016年1月~2019年11月調査)・フェルナンデス政権(2020年1月・4月調査)を支持しますか?それとも支持しませんか?」という質問に「強く支持する」「ある程度支持する」と回答した割合の合計。

(出所)国家統計センサス局のホームページをもとに筆者作成(2020年6月23日アクセス)。

(注)年の後のカッコ内の数値は四半期を意味する。また、貧困率データは半期別データであるため第二期と第四期に、インフレ率データは月別データであるため各四半期の最終月の数値をそれぞれ示してある。なお、失業率については2016年第二四半期、貧困率については2016年下半期、インフレ率(前年比)については2017年12月分より公開されている。

図1はサン・アンドレス大学の「政治的満足と世論調査」プロジェクトに基づくフェルナンデス政権(2019年12月~)と政権交代前のマクリ政権(2015年12月~2019年12月)の支持率の変遷を、図2はGDP成長率・インフレ率・失業率・貧困率をそれぞれ示したものである。与党連合カンビエモス(Cambiemos)5は、汚職の減少が今後の政権運営に対する期待感を高めたこともあり、2017年10月の中間選挙(下院選・上院選)でも勝利を収めた[菊池 2018]。同月の調査でのマクリ政権の支持率は66%という極めて高い数値であったが、折しも2017年第4四半期はアルゼンチン経済が好調な時期であり、GDP成長率は前年同時期比で4.5%、失業率も7.2%まで低下していたのである。

2017年までは市場を重視したマクリ政権の経済政策が功を奏したかに思われた。しかし、アメリカにおける長期金利上昇などの影響による急速なペソ安の進行は、度重なる政策金利の引き上げでも歯止めが効かず[志賀 2018]、2018年6月20日にIMFからスタンドバイ取極を伴う緊急融資を受ける事態に至った。そして、2018年第4半期には前年同時期比でインフレ率が47.1%、GDP成長率がマイナス6.1%を記録した。

アルゼンチン経済が低迷しマクリ政権から市民の支持が離れていくなか、2019年の大統領選をにらんで動きを活発化させたのが正義党系の各勢力である。2005年選挙における分裂以降政党としての正義党の組織体系は崩壊しているが、2017年中間選挙後の同党系の勢力は大まかにクリスティーナ率いるキルチネル派の勝利のための戦線(Frente para la Victoria)とそれ以外の反キルチネル派とに分けることができる。とくに反キルチネル派は左派のキルチネル派や中道右派のカンビエモスとは異なる中道路線をめざし、2015年大統領選の第一回投票で21.4%の得票を得た刷新戦線(Frente Renovador)のマッサ下院議員(Sergio Massa)、スキアレッティ・コルドバ州知事(Juan Schiaretti)、ウルトゥベイ・サルタ州知事(Juan Manuel Urtubey)、ピチェット上院議員(Miguel Ángel Pichetto)を中心に連邦オルタナティブ(Alternativa Federal)を2018年9月に結成した [Berensztein 2019]。そして、同年12月の会合には8州の知事が参加するなど、一大勢力となる様相を呈していた6

一方のクリスティーナは2017年中間選挙でブエノスアイレス州選挙区選出の上院議員に当選したものの、キルチネル派は下院で10議席、上院で8議席を失っていた[菊池 2018]。それでも彼女が2019年の大統領への返り咲きを狙っていたのは公然の事実であったが、自身の汚職疑惑や世界の経済情勢、ラテンアメリカにおける左派の退潮などを冷静に判断し、2008年以降対立関係にあったが自身よりは中道票を狙うことのできるフェルナンデス元官房長官を大統領候補、自身を副大統領候補とすることを5月18日に発表した[Berensztein 2019]。

クリスティーナのこの決定により、選挙連合形成の流れが一気に変化した。そして、大票田を抱える大ブエノスアイレス圏(Gran Buenos Aires)の市長たちや一時は連邦オルタナティブに近づいていた州知事たちとキルチネル派の大結集が促され、ついには刷新戦線のマッサも加わり選挙連合・みんなの戦線(Frente de Todos)が誕生した。他方、マクリも中道票の上積みによる再選をめざして連邦オルタナティブからピチェット上院議員を副大統領候補として引き抜き、選挙連合・変革のために共に(Juntos por el Cambio)を結成した。また、クリスティーナの選挙戦略とマッサとピチェットの離脱によって一気に弱体化した反キルチネル派は、ラバーニャ元経済相(Roberto Lavagna)を大統領候補、ウルトゥベイを副大統領候補とする選挙連合・連邦合意(Consenso Federal)を立ち上げた。そして、現職のマクリはクリスティーナ前政権を意識した汚職対策と市場を重視した経済改革路線の継続、マクリ政権の経済改革路線を否定するフェルナンデスは貧困問題の改善と債務再編、ラバーニャは「マクリ政権対キルチネル派」という政治の二極化の解消をおもに訴え、8月11日の予備選挙を迎えた。

(3) 選挙結果

表1は2019年大統領選の開票結果を示したものである7。今回は2015年大統領選とは異なりいずれの政党・選挙連合も複数の候補者を擁立しなかったため、予備選挙はあくまで有効票と白票の合計の1.5%の得票に満たない候補者の「足切り」としてのみ機能したが、最も多くの票を獲得したのは当初の予想どおりフェルナンデスであった。ただし、政権支持率が復調傾向にあったマクリとの差が15.99%ポイントという大差になったことを受けて左派政権の復活を警戒する市場は大きく反応し、米ドルがアルゼンチンペソに対して17~34%上昇する一方で、ニューヨーク市場でのアルゼンチン国債の価格が20%、ブエノスアイレス証券取引所のメルバル指数が38%それぞれ下落した8

(出所)国家選挙機関のホームページをもとに筆者作成(2020年6月23日アクセス)。

(注)%の欄は予備選挙については阻止条項の判定に用いられる有効票と白票の合計、本選挙第一回投票については勝者判定に用いられる有効票の合計を基数にしている。

予想以上の劣勢を強いられることとなったマクリは、小麦粉・卵・パン・牛乳・マテ茶などの基礎的食料品に対する付加価値税を2019年末まで廃止する一方で、アルゼンチンペソの防衛のために自身が就任直後に廃止した外貨購入規制を復活させるなど、現職としての強みを生かした巻き返しを図った。また、「Sí se puede」(Yes, we can)キャンペーンを全国展開し、経済発展に向けた自政権の継続の必要性を訴えた。その結果、インフレ率は短期的には落ち着きを見せ始め、10月27日に実施された本選挙第一回投票でも40.28%の有効票を獲得した。しかし、フェルナンデスが48.24%の得票で第一回投票での当選を確定させたため、4年ぶりに正義党の左派政権が復活することとなった。フェルナンデス当選の背景には、菊池[2019]が予備選挙について指摘したのと同様の理由、すなわち、経済状況に対する市民のネガティブな評価とフェルナンデスの擁立によってキルチネル派の大結集を促し反キルチネル派の結集を阻止したクリスティーナの選挙戦略の妙を挙げることができよう。

大統領選の結果下野することとなったマクリではあるが、予備選挙以降の巻き返しに向けたキャンペーンは決して無駄ではなかった。というのも、彼の選挙連合は下院で議席を伸ばすことに成功したからである。表2は大統領選本選挙第一回投票と同日に実施された下院選・上院選の結果を示したものであるが、変革のために共にが下院選で9議席上積みしたのに対し、みんなの戦線は現状維持にとどまった。そのため、フェルナンデスが大統領に就任した2019年12月10日時点での新与党連合の議席数は119であり、定足数の129を満たすためには他の勢力との協調が必要となる状態となっている。ただし、上院選については変革のために共にも現状維持にとどまり、新与党連合が定足数の37を上回る議席を確保している。

(出所)“El nuevo congreso: Así será la próxima composición en ambas cámaras.” La Nación, 28 de octubre de 2019および下院のホームページ上院のホームページをもとに筆者作成(2020年6月23日アクセス)。

(注)選挙から2019年12月までの間に所属会派を変更する議員もいたため、選挙後の議席数は非改選議席数(選挙前の議席数と改選議席数の差)と獲得議席数の和に必ずしも一致しない。

また、クリスティーナの選挙戦略とマッサとピチェットの離脱によって一気に弱体化した反キルチネル派は、大統領選ではラバーニャが6.15%の得票しか獲得できず、上院選も惨敗に終わった。ただし、下院ではみんなの戦線が定足数を確保できていないため、11議席と少数ながらも今後のキャスティングボートを握る可能性も出てきている。

2. フェルナンデス政権の閣僚構成と政策課題への対応

(1) 正義党「連立政権」の誕生

大統領制下における連立政権を分析したシェイブー[Cheibub 2007]によれば、連立政権(government coalition)とはふたつ以上の政党から閣僚が輩出されている状況のことであり、その特徴として、単なる選挙連合(electoral coalition)や立法連合(legislative coalition)ではなく、議会に議席を有している複数の政党のメンバーが個人ではなく各政党のコミットメントの帰結として省庁の大臣ポストに収まっている点を挙げている。彼の分析によれば大統領制下においても連立政権の誕生は決して稀なことではないが、1983年の民主化から2019年大統領選までのアルゼンチンで誕生した連立政権は、急進党とフレパソ(FREPASO)の連立であったデラルア政権(Fernando de la Rúa、1999~2001年)と今回の選挙で下野したマクリ政権(2015~2019年)の2例だけであり、正義党の連立政権はこれまで存在していない9

新与党連合・みんなの戦線の主要メンバーであるクリスティーナ副大統領も刷新戦線を率いるマッサ下院議員(2019年12月より下院議長)も正義党員であり10、定義に忠実に考えるならばフェルナンデス政権は正義党単独政権である。しかし、これまでキルチネル派や刷新戦線があたかも正義党とは別の政党であるかのように振る舞い、クリスティーナがフェルナンデスを大統領候補として発表する直前の2019年5月14日に正義党本部を訪問したことが大ニュース11となった現状を考慮すると、同政権を「連立政権」であると解釈するのが適当であると考えられる[e.g., Murillo and Zarazaga 2020]。

ムリージョやサラサーガ[Murillo and Zarazaga 2020]はみんなの戦線の選挙連合としての形成過程に注目し、フェルナンデスをキルチネル派に属していない州知事たちに近い存在として捉えていると思われるが、大統領選勝利後のフェルナンデスはキルチネル派のキシロフ・ブエノスアイレス州知事(Axel Kicillof)に接近する一方で正義党の一部の州知事とは距離をおいている12。よって、本稿ではフェルナンデス大統領と彼の側近たちをキルチネル派からも州知事たちからも独立した存在であると考え、現在の与党連合を(1)クリスティーナの長男のマキシモ・キルチネル下院議員(Maximo Kirchner)率いる政治グループ「ラ・カンポラ」(La Campora)のメンバーやキシロフ州知事に代表されるキルチネル派、(2)キルチネル派に属さないその他の多くの州知事や彼らに従っている上院議員・下院議員などの地方正義党(PJ Territorial)、(3)マッサ下院議員率いる刷新戦線、(4)フェルナンデス大統領とその側近らによって構成されていると捉える13

図3はフェルナンデス政権と下院と上院における与党連合の構成を示したものである。閣僚ポスト数はマクリ政権下の12から21に一気に拡大されたが、同図からはその配分が各勢力に配慮されて行われた様子がうかがわれる。みんなの戦線の構成は上院と下院とで大きく異なっており、下院では119議席中63議席を占めるキルチネル派が52.9%と優位であるのに対し、上院では41議席中22議席を占める地方正義党が53.7%と優位である。そのため、キルチネル派と地方正義党とに同数の6ポストずつが配分されている。また、下院で11議席を有する刷新戦線にも運輸大臣のポストが与えられている14

(出所)“Sólo falta definir la conducción de los bloques legislativos nacionales.” La Nueva Mañana, 15 de noviembre de 2019; “Cristina Kirchner logró la unidad del peronismo y tendrá quórum propio en el Senado” infobae, 26 de noviembre de 2019およびフェルナンド・リギニ氏(2020年5月18日)への電話インタビューをもとに筆者作成。

(出所)Di Mauro[2019]および下院のホームページをもとに筆者作成(2020年6月23日アクセス)。

(注)「過半数」の〇は与党・与党連合が過半数の議席を確保していたこと、×は確保できなかったこと、△は確保できていた時期とできていなかった時期があったことを示している。フェルナンデス政権については、2020年6月23日までのデータ。

表3は2002年以降の歴代政権下における大統領提出法案の成立数を示したものであるが、このように各勢力に配慮した閣僚ポスト配分が行われた背景には、カルボ[Calvo 2014]の指摘する議会における過半数確保の重要性が関係していると思われる。同表から明らかであるように、上院においても下院においても与党連合が過半数の議席を占めていなかったマクリ政権の立法能力は他の政権に比べて明らかに劣っており、同政権の提出した法案の成立数は4年間で76本と、17カ月だけであったドゥアルデ政権(2002~2003年)の131本をも下回っている。また、アルゼンチンでは大統領は両院への法案提出権を持ち、両院の可決案の内容に相違が生じた場合は最終的に先議院の決定が優先されやすいため15、歴代の正義党政権は上院における過半数議席を活かして立法過程を優位に進めてきた[Kikuchi 2018]。そのため、現在は新型コロナウイルスの影響により大統領令による政策執行が優先されているフェルナンデス政権にとっても、上院議席を多く占めている地方正義党への配慮は将来的に必要不可欠なものとなっている。

(2) 直面する課題と今後の政権の行方

前節で述べたように、フェルナンデス政権が誕生した理由の一つはマクリ政権下における社会経済指標の悪化であり、経済再生と債務再編問題が新政権誕生時における最優先課題であった。しかし、夏のバカンスシーズンが終わって3月に入ると、突如新型コロナウイルス対策という新たな課題も加わることとなった。

以上の3つの課題のうち、フェルナンデス政権が現時点で最も上手く対応しているのが新型コロナウイルス対策である。アルゼンチンで最初の感染者が確認されたのは3月3日であったが、フェルナンデスの対応は素早く、3月15日にはキシロフ・ブエノスアイレス州知事とロドリゲス・ラレタ・ブエノスアイレス市長(Horacio Rodríguez Larreta)と共に会見を行い、学校の授業の休止や国境封鎖などを発表した。そして、3月19日には翌日からの外出禁止措置(aislamiento social, preventivo y obligatorio)を発令し、ほぼ2週間ごとにそれが延長されている16。また、同外出禁止措置発令前にも、テレワークが不可能な場合の60歳以上、妊娠中、何らかの持病者、子どもの世話をする必要のある労働者に特別休暇が付与され、飛行機国内線と長距離バスの運休や、ブエノスアイレス都市圏(AMBA、ブエノスアイレス市およびその周辺に位置するブエノスアイレス州内の40の自治体)での公共交通機関に対する規制が開始された。

(出所)保健省のホームページ(2020年6月22日アクセス)をもとに筆者作成。

(注)4月11日分よりマルビーナス(フォークランド)諸島での累計感染者数も含んでいる(6月22日現在13名)。

図4はアルゼンチンでの新型コロナウイルス感染状況を示したものである。6月22日時点での累計感染者数は4万4931であるが、この数値は同じ南米に位置するブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルーよりも良好である17。また、アルゼンチンでは感染者の約9割がブエノスアイレス都市圏に集中しているため、5月11日からは感染者の集中しているブエノスアイレス都市圏とそれ以外の地域は異なるフェーズにあるとされており、6月8日からは同都市圏やチャコ州をはじめとする感染状況が良好ではない地域を除き、ほとんどの活動が再開されている。

フェルナンデス政権は当初から経済活動に伴う感染の蔓延を懸念しており、個人事業主やインフォーマルセクターの労働者に対する1万ペソの緊急給付、打撃を受ける産業への給与補助と企業に対する年金の掛金拠出義務の一時解除などを外出禁止措置の発効とほぼ同時期に決定している。さらに、低額年金受給者を対象にした3000ペソの給付、価格統制、家賃・住宅ローン・公共料金の180日間の支払猶予などの措置も採られている。ただし、これらの対策だけでは外出禁止措置に伴う損失補填としては不十分という声もあり、ブエノスアイレス都市圏ではすでに許可されている以上の経済活動の再開を求めて5月末から外出禁止措置に反対する大規模なデモが発生するようにもなってきている。さらに、5月に入りスラム(villa)を中心に1日あたりの感染者数が増加しており、同都市圏で外出禁止措置が再強化される可能性が出てきたこと18への不安と不満も高まっている。しかし、他の南米諸国と比べてもアルゼンチンの累計感染者数・死者数は比較的抑えられている方であり、少なくともこれまでのフェルナンデス政権の新型コロナウイルス対策は評価に値しよう。

このように新型コロナウイルス対策が現時点では比較的良好であるのに対し、債務再編交渉と経済再生についてのフェルナンデス政権の対応はネガティブな評価にならざるを得ない。とくに債務再編交渉については、新政権の閣僚人事の目玉の一つとして、アメリカのコロンビア大学でノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ(Joseph Stiglitz)と共同研究を行っていた若手の債務問題専門家のグスマン(Martín Guzmán)を経済相に据えた。しかし、外国法に基づいて発行された一部の国債について元本の5.4%および利息の62%の削減と2023年までの支払猶予を求めたグスマンの再編案は主要債権者グループに受け入れられず、利払い期限の猶予期間を過ぎた2020年5月22日以降デフォルトに陥っている。

グスマン経済相の交渉戦略は明らかにされていないが、IMFを重視する姿勢は2001年末から2002年初めにかけての危機の際に発生したデフォルトを受けて債務再編交渉を行ったキルチネル政権(Néstor Kirchner、2003~2007年)と共通している。現大統領であるフェルナンデスが官房長官を務めていたキルチネル政権はIMFへの全額返済を優先したが、フェルナンデス政権もIMFへの返済を5月初めに開始している。ただし、キルチネル政権の目的がIMFからの干渉を避けることであったのに対し[宇佐見 2006]、フェルナンデス政権はグスマン経済相を通じてIMFに対して新型コロナウイルスの影響を大きく受けているラテンアメリカ諸国への利率0%での融資の検討を求めるなど19、IMFからの新たな借り入れの可能性を排除していないと思われる点が異なる。また、4月6日には、国内法に基づいて発行された米ドル建て国債の償還・利払いを2021年に延期し、パリクラブに対しては1年の支払い猶予を求めて5月5日期限分の返済を行わず、外国法に基づいて発行された国債についてもデフォルトに陥った5月22日以降も主要債権者グループとの交渉が続けられている。

(出所)経済省のホームページ(2020年6月23日アクセス)をもとに筆者作成。

結果的にデフォルトに陥ってしまったものの、アルゼンチンと主要債権者グループとの交渉が継続されている背景には、IMFもアルゼンチンの債務がサステナブルではないと発表したことが大きいと思われる。図5に示されているとおり、アルゼンチンの公的債務は2004年時点では対GDP比118.1%であったが、キルチネル政権による2005年の債務再編によって一気に80.5%まで圧縮され、さらにクリスティーナ政権での2010年の債務再編を経て2011年には対GDP比38.9%まで比率が低下した[Manzanelli y Basualdo 2018]。しかし、その後はじわじわと増加し、2018年のペソの急落とGDPのマイナス成長によって公的債務の対GDP比が86.0%に急上昇した。続く2019年には89.4%に達したが、2020年2月にIMFからアルゼンチンに派遣されたミッション団は、この値が2019年7月に実施されたスタンドバイ取極めの第4次レビューにおける予測値を13%ポイント上回ったことを問題視した。そして、同レビューの際に懸念された新規発行債券の償還期限の短さ、為替変動の影響に対する脆弱性、外部金融需要の大きさ、といった点が顕在化したとして、同ミッション団はアルゼンチンの債務はサステナブルではないと判断した20

アルゼンチン政府と主要債権者グループの交渉は以上のようなIMFの後押しにもかかわらず長期戦の様相を見せ始めているが、その一因はフェルナンデス政権内における経済政策をめぐる調整不足にもあると考えらえる。当初から主要債権者グループは今後の経済政策に関する明確な計画の提出をアルゼンチン側に求めているが、フェルナンデス政権はそれに応じていない21。しかし、少なくとも2月までのフェルナンデス政権は明らかに財政再建をめざしており、3月以降の新型コロナウイルスへの歳出の増加を差し引いたとしても、何らかの計画の提出は不可能ではなかったと思われる。2019年12月21日に貧困対策や経済再生を軸として成立した「社会連帯・生産性回復法」(Ley de Solidaridad Social y Reactivación Productiva)は、低所得者対策と財政収支の改善をおもな目的としているが、後者として年金の経済スライドの凍結、米ドル購入・クレジットカードを用いた海外でのサービスの購入・ペソ建て以外の海外への航空券等の購入に対する30%の課税、大豆に対する輸出課徴金の税率の引き上げなどの内容を含んでいる22。とくに年金の経済スライドの凍結などは、歳出削減に向けた重要な政策と言えよう。

しかしその一方で、フェルナンデスはキルチネル派の意向を受け、6月8日に穀物大手のビセンティン社(Vicentin)の国有化案を発表した。同社は約1000億ペソ(14億米ドル)の債務超過に喘いでおり、国営ナシオン銀行(Banco de la Nación Argentina)が主要債権者であることから同社の経営改善と労働者の雇用と小農を守るため、というのがその理由であるが、記者会見にラ・カンポラのサガスティ上院議員(Anabel Fernández Sagasti)が参加していたことからもキルチネル派の政策であることは明らかであった23。しかし、この国有化案に対しては債務再編交渉への悪影響が想定されるうえに大規模な抗議デモも発生した。さらに、司法が政府によるビセンティン社への介入を棄却したため、フェルナンデスはビセンティン社の所在するサンタフェ州のペロッティ州知事(Omar Perotti)と共に他の方策を模索することを余儀なくされるというちぐはぐな対応となっている24

ここまで見てきたように、フェルナンデス政権は債務再編交渉と経済再生については政権内での経済政策をめぐる調整不足が目立っているのに対し、新型コロナウイルス対策には比較的成功しているが、この見方はさまざまな世論調査結果とも一致している。たとえば、サン・アンドレス大学の「政治的満足と世論調査」プロジェクトによる4月14日~21日のオンライン調査では、84%の回答者が政府によって導入された一連の対策に同意すると回答している。そして、新型コロナウイルス対策に対する高評価を背景に、フェルナンデス政権の支持率も4月時点で67%にまで上昇している。

(出所)トルクアト・ディ・テラ大学(Universidad Torcuato di Tella)で2020年4月30日に開催されたイソノミアのフアン・ヘルマーノ氏(Juan Germano)のウェビナー資料をもとに筆者作成。

(注)いずれも世論調査会社イソノミア(Isonomía Consultores)が全国2000人を対象に行った調査の結果。「好印象」は、フェルナンデスに好印象(imagen positiva)抱いていると回答した割合。「クリスティーナの影響力」は「クリスティーナはフェルナンデス政権の決定に大きな影響力を持っている」「クリスティーナはフェルナンデス政権の決定に十分な影響力を持っている」と回答した割合の合計。

また、図6に示された世論調査会社イソノミア(Isonomía Consultores)が全国2000人を対象に行った政治家の印象に関する調査の結果に注目すると、フェルナンデスに好印象(imagen positiva)を持つ回答者の割合が新型コロナウイルス対策に対する高評価と共に増加している可能性を読み取ることができる。就任した2019年12月時点でも71%という数値であったが、一旦2020年2月に64%を記録したものの、3月以降は70%台後半を維持している。しかしその一方で、「クリスティーナはフェルナンデス政権の決定に大きな影響力を持っている」もしくは「クリスティーナはフェルナンデス政権の決定に十分な影響力を持っている」とした回答者の割合は減少傾向にあり、2019年12月には82%だったものが2020年4月には53%にまで低下している。確かにクリスティーナは3月20日の外出禁止措置発令時点では自身の娘を訪れてキューバに滞在中で、その後娘と共に帰国後14日間の隔離措置の対象となっていたため25、しばらく政治の舞台から遠ざかっていた。しかし、本調査結果は、有権者は新型コロナウイルス対策やフェルナンデス政権に対する評価を大統領個人には結びつけているものの、上手く選挙連合を作り上げてフェルナンデス政権誕生の立役者となったクリスティーナ副大統領とは必ずしも結びつけていないことを示している。

ただしその一方で、先述のビセンティン社の国有化案については、多くの有権者が政策をフェルナンデスよりもクリスティーナと結びつけて捉えている。世論調査会社マネージメント・アンド・フィット(Management & Fit)が全国の1200名を対象に行った調査によれば、46.6%がビセンティン社の国有化案に反対するとしたのに対し、支持は21.4%にとどまった。また、国有化を決めた人物に関する設問については、47.2%の回答者がクリスティーナが単独で決定したと考えており、フェルナンデスが単独で決定したとした回答者の割合(22.6%)とクリスティーナとフェルナンデスが共同で決定したとした回答者の割合(21.1%)を大幅に上回った26

ここでは、有権者は新型コロナウイルス対策をはじめとするフェルナンデス政権に対する評価を大統領個人に結び付ける一方、クリスティーナの国家介入型経済政策に対する不信が根強い、という調査結果を紹介した。新型コロナウイルス対策などへの評価が大統領個人の評価につながっているということは、今後感染者のさらなる急増やブエノスアイレス都市圏における外出禁止措置の再強化などで政権支持率が低下してきた場合に、クリスティーナ自身はそのダメージを受けない可能性もあることを示唆している。そうなった場合、フェルナンデスがキルチネル派により近づき、キルチネル派の閣僚を増やしたりキルチネル派の政策を多く取り入れたりする可能性も想定されるが、この選択は次のふたつの理由から得策ではないと考えられる。

第一に、キルチネル派の志向する国家介入型経済政策は決して人気のある政策ではない。また、上記の国有化案に関する世論調査で示されているように、そのような政策をクリスティーナが決定したと考える有権者が多いものの、フェルナンデスと結び付ける有権者も皆無ではない。その結果、フェルナンデスの人気がさらに落ちる可能性がある。また、第二に、閣僚ポストや政策面でキルチネル派を優遇すると地方正義党との距離が開いてしまう可能性が高いが、来年実施される中間選挙までの議会構成の現状では好ましくない選択である。というのも、上院における過半数確保の多くを地方正義党に負っており、仮に上院でも過半数を確保できない事態が生じた場合にはマクリ政権のように立法に苦労することとなるからである。すなわち、新型コロナウイルス対策、債務再編交渉、経済再生といった難しい政策課題に直面しているにもかかわらず、「連立政権」におけるバランスの維持のためには支持率が大幅に低下するような失敗は許されないという難しいタスクにフェルナンデスは挑戦しているのである。

むすび

本稿では、今後のフェルナンデス政権の閣僚構成と政策志向を理解するうえでの一助として、これまでの同政権の閣僚構成と政策課題への対応の特徴を検討した。具体的には、2019年大統領選挙の結果がマクリ政権下での経済状況に対する市民のネガティブな評価とクリスティーナによる選挙連合・みんなの戦線の産物であったものの、下院では同連合が過半数の議席を確保できなかった点を確認した。そして、フェルナンデス政権は正義党「連立政権」と捉えられる点、同政権の新型コロナウイルス対策は比較的良好であるのに対して債務再編交渉と経済再生については政権内での経済政策をめぐる調整不足が目立っている点、有権者は新型コロナウイルス対策をはじめとするフェルナンデス政権に対する評価を大統領個人に結び付ける一方、クリスティーナの国家介入型経済政策に対する不信が根強い点、今後政権の支持率が低下した場合にキルチネル派の閣僚を増やしたりキルチネル派の政策を多く取り入れたりするのは得策ではない点を指摘した。

先述したように、1983年の民主化以降に成立した連立政権の先例としてデラルア政権とマクリ政権があるが、前者は2001年末に発生した政治経済危機により2年で崩壊し、後者も1期での下野を余儀なくされた。フェルナンデス政権がこれらの政権と似たような運命をたどるのか否かは、今後のアルゼンチンにおける新型コロナウイルスの感染状況と同政権の支持率の推移、そして、支持率が低下した場合の閣僚構成にかかってくると考えられる。

(2020年6月23日脱稿)

[謝辞]

本稿の内容の一部はJSPS科研費16K17064の助成による研究成果にもとづくものである。ここに記して感謝したい。

本文の注
1  1983~2019年に大統領となった8名(暫定大統領を除く)のうち、州知事経験が無いのはアルフォンシン(Raúl Alfonsín、1983~1989年在職)とクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernández de Kirchner、2007~2015年在職)だけである。ただし、後者はサンタクルス州知事から大統領となった夫のネストル・キルチネル(Néstor Kirchner、2003~2007年在職)と支持基盤を共有していた。

3  図1を参照されたい。

4  予備選挙の詳細については菊池[2018; 2019]を参照されたい。

5  中道右派の共和国提案(Propuesta Republicana)と中道の急進党、市民連合(Coalición Cívica ARI)を中心とした政党連合。

6  “Alternativa Federal sumó a su mesa a Gerardo Zamora.”parlamentario.com, 20 de diciembre de 2018.

7  予備選挙の分析については、菊池[2019]を参照されたい。

9  2007~2011年のクリスティーナ政権では副大統領が急進党キルチネル派(Radicales K)のコボス(Julio Cobos)であったが、省庁の大臣ポストではないことや急進党が政党としてコミットしていたわけではないことから、ここでは連立政権としては扱わない。ただし、レニウとアルバラ[Reniu y Albala 2012]のように、同政権を典型事例ではないことを認識しつつも連立政権に分類する研究も存在する。

10  正義党ホームページの2020年党内選挙の選挙人名簿により確認(2020年6月23日アクセス)。

13  現在の与党連合が4つのグループからなる点については、経済社会マネージメントチーム(Equipo de Gestión Económica y Social)コンサルタントのフェルナンド・リギニ氏(Fernando Righini)への筆者による電話インタビュー(2020年5月18日)も参考にした。

14  ただし、キルチネル派には閣僚レベルでは内務省、外局レベルでは公共歳入連邦管理庁(AFIP)、国家社会保障機構(ANSES)、国家年金受給者社会サービス機構(PAMI)といった重要なポストがあてがわれているのも事実である。とくに、2020年6月23日現在、内務大臣、国家社会保障機構長官、国家年金受給者社会サービス機構長官はいずれもラ・カンポラのメンバーである。

15  後議院の決定が最終的な可決案となるのは、同案を再送付された先議院が先議院案の再可決に失敗するか、後議院の決定を修正無しで受け入れる場合のみである。

16  同措置の正式名称は「社会的・予防的・強制的隔離」であるが、一般市民が食料・薬品等を購入するために最低限の近所への外出を行う際はとくに許可を取る必要はなく、医療従事者や政府高官、宅配サービス従事者をはじめとする複数の職種が外出禁止措置の対象外となっている。また、6月7日に発せられた大統領令520/2020号は、同措置を3週間先の6月28日まで延長すると同時に、累計感染者数の増加が15日間で2倍を超えない地域については広範な社会経済活動の再開を可能とする「社会的・予防的・強制的距離」(distanciamiento social, preventive y obligatorio)を定めている。ただし、「社会的・予防的・強制的距離」対象地域であっても、州知事や市長の判断によって外出禁止措置を採ることが可能である。

17  6月22日時点でアルゼンチンの累計感染者数4万4931・死者数1043に対し、ブラジルの累計感染者数110万6470・死者数5万1271、チリの累計感染者数24万6963・死者数4502、コロンビアの累計感染者数7万1183・死者数2310、エクアドルの累計感染者数5万640・死者数4223、ペルーの累計感染者数25万4936・死者数8であった。欧州疾病予防管理センターのホームページ。(2020年6月23日アクセス)

20  IMFのプレスリリース。(2020年6月23日アクセス)

22  低所得者対策としては、公共料金価格の180日間の凍結と年金ボーナスの支給などの内容を含んでいる。

23  “Alberto Fernández interviene Vicentin y buscará expropiarla.” La Nación, 8 de junio de 2020. なお、債務額の米ドルへの換算にあたり、2020年6月15日のナシオン銀行のレートを参照した。また、地方正義党のバステッラ農牧漁業大臣(Luis Basterra)は国有化案について何も知らされていなかったという。“Luis Basterra admitió que no sabía que Alberto Fernández iba a anunciar la expropiación de Vicentin: "No estuve en esa parte"” La Nación, 15 de junio de 2020.

参考文献
  • 宇佐見耕一 2006.「アルゼンチン・キルチネル政権の「反ネオ・リベラル」経済・社会政策」『アジ研ワールド・トレンド』133: 8-11.
  • 菊池啓一 2018.「2017年中間選挙とアルゼンチン政治におけるその意味」『ラテンアメリカ時報』1421: 15-18.
  • 菊池啓一 2019.「それでもやっぱりペロニスタ?―2019年アルゼンチン大統領選予備選挙の分析」 ( https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Eyes/2019/ISQ201920_037.html ) IDEスクエア・世界を見る眼.
  • 菊池啓一 2020.「ブエノスアイレス都市圏の公共交通機関―新型コロナウイルス対策による「実質一日」の利用制限」 ( https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Overseas/2020/ISQ202030_007.html ) IDEスクエア・海外研究員レポート.
  • 志賀大祐 2018.「アルゼンチン経済、不安定化までの推移と要因(2)―流入する海外ホットマネーが一因」 ( https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/bcda780d2c1b9873.html ) ジェトロ・地域・分析レポート.
  • Berensztein, Sergio 2019. ¿Somos todos peronistas? Del idealismo al pragmatismo. Buenos Aires: Editorial El Ateneo.
  • Calvo, Ernesto 2014. Legislator Success in Fragmented Congresses in Argentina: Plurality Cartels, Minority Presidents, and Lawmaking. Cambridge: Cambridge University Press.
  • Cheibub, José Antonio 2007. Presidentialism, Parlamentarism, and Democracy. Cambridge: Cambridge University Press.
  • Di Mauro, José Ángel 2019. Gobernar en minoría: El karma de la gestión Cambiemos. Buenos Aires: Corregidor.
  • Kikuchi, Hirokazu 2018. Presidents versus Federalism in the National Legislative Process: The Argentine Senate in Comparative Perspective. Cham: Palgrave Macmillan.
  • Manzanelli, Pablo, y Eduardo M. Basualdo 2018. “La era kirchnerista: El retorno a la economía real, el desendeudamiento externo y las pugnas por la distribución del ingreso, 2003-2015.” en Endeudar y fugar: Un análisis de la historia económica argentina, desde Martínez de Hoz a Macri. ed. Eduardo Basualdo. Buenos Aires: Siglo veintiuno editores.
  • Mauro, Sebastián 2018. “Coalition Politics in a Federalized Party System: The Case of Argentina.” in Coalition Politics and Federalism. eds. Adrián Albala and Josep Maria Reniu. Cham: Springer International Publishing AG.
  • Murillo, María Victoria, and Rodrigo Zarazaga, S.J. 2020. “Argentina: Peronism Returns.” Journal of Democracy 31(2): 125-136.
  • Reniu, Josep Ma., y Adrián Albala 2012. “Los gobiernos de coalición y su incidencia sobre los presidencialismos latinoamericanos: el caso del Cono Sur.” Estudios Políticos 26: 161-214.
  • Tow, Andy 2019. “Atlas Electoral de Andy Tow: Elecciones en Argentina.” ( https://www.andytow.com/atlas/totalpais/index.html ) (2020年6月23日アクセス)
 
© 2020 日本貿易振興機構アジア経済研究所
feedback
Top