ラテンアメリカ・レポート
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資料紹介
渡邉優 著 『グアンタナモ―アメリカ・キューバ関係にささった棘』
山岡 加奈子
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2020 年 37 巻 1 号 p. 72

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本書は、1902年のキューバ独立以来米国が租借しているグアンタナモ海軍基地についての、日本語による初めての本格的な書籍である。構成は大きくふたつに分かれている。前半はグアンタナモ基地の歴史で、基地成立の経緯から、キューバ革命後の米国・キューバ関係と基地について詳細に検討される。後半は基地の合法性に関して、国際法のさまざまな論点が紹介される。たとえば、両国で基地租借に合意した条約の合法性や、グアンタナモに設置されたテロ容疑者の収容所における国際法違反や人権侵害の問題などが取り上げられている。

前半の米国・キューバ関係史とグアンタナモ基地の関連については、キューバの独立戦争に介入して米西戦争とした米国政府の戦略や、キューバを独立させるかフィリピンのように保護領とするかの米国政府内の議論、プラット修正条項やフランクリン・ルーズベルト大統領の善隣外交政策による同修正条項の改善、キューバ革命後の同基地の地位など、グアンタナモ基地の成り立ちについて知りたい読者が押さえておくべき項目がわかりやすく記述されている。

後半部分は国際法の知識がないと若干読みづらいかもしれない。グアンタナモ基地が米国に租借された法的根拠となる条約の内容や、米国とキューバ両国の専門家の法解釈の違いが詳しく説明され、その後著者の考えが述べられている。また、今後法的に基地問題が解決できるかどうかも検討されている。次に、グアンタナモ基地に設置された収容所の問題が取り上げられる。近年グアンタナモの名前を報道で耳にする場合、同時多発テロ後の中東地域出身のテロ容疑者を、グアンタナモ基地内の収容所へ送り込むことにした米国政府の方針にかかわるニュースであろう。本書はそもそもキューバ領であるグアンタナモに収容所を建設することが合法であるのか、米国歴代政権の解釈の変遷を説明している。最後に、グアンタナモ基地がキューバに返還される見込みがあるのかどうかを検討する。米国政府にとって基地の維持はメリットとデメリットがあり、返還の可能性はあるが具体的な展望は描けないというのが著者の結論である。

著者は前駐キューバ日本大使で、現在防衛大学校教授である。米国とキューバの国交正常化交渉の時期に大使を務められ、多忙な業務の傍ら調査・研究を進めて今回上梓された労作である。基地について知りたい場合に第一に取り上げられるべき日本語書籍として、貴重な出版である。

 
© 2020 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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