ラテンアメリカ・レポート
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松下冽・田巻松雄・所康弘・松本八重子 編著 『日本の国際協力 中南米編―環境保全と貧困克服を目指して』
菊池 啓一
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2022 年 39 巻 1 号 p. 78

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ラテンアメリカへの出張中にアジア経済研究所がJETRO傘下にあることについて紹介すると、とくにビジネス関係以外の現地の方々に「JICA傘下」であると勝手に勘違いされることも少なくない。紹介者にとっては非常に残念な誤解であるものの、ラテンアメリカ諸国におけるJICAの存在感の証であると捉えることもできよう。しかしその一方で、JICAが実施している支援プログラムの多くを占めるODAの全貌がわかりにくいのも事実である。そのような基礎情報不足を改善すべく、ラテンアメリカ・カリブ諸国に対してどのようなODAが実施されてきたのかを国別に解説したのが本書である。

 『日本の国際協力 アジア編』と『日本の国際協力 中東・アフリカ編』に続いて出版された本書は、ODAに焦点を当てることを通じて日本とラテンアメリカ・カリブ諸国との関係を歴史的にも俯瞰し、今後の国際協力における課題を検討するための基礎資料と論点を提供することを目的としている。序章で日本のODA政策、ラテンアメリカ・カリブ諸国の経済開発、日本とラテンアメリカ・カリブ諸国との関係の変遷とSDGsについての説明がなされた後、第Ⅰ部ではメキシコと中米諸国(グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ)、第Ⅱ部ではカリブ海地域諸国(キューバ、ジャマイカ、ハイチ、ドミニカ共和国、カリコム諸国)、第Ⅲ部ではアンデス諸国(ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア)、第Ⅳ部ではコーノ・スール諸国(ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ)が取り上げられ、各章で各国に対するODAの形成と展開、ODAの現状と事例、ODAの課題と展望が述べられている。また、7つのコラムを通じて、国別の解説とは異なった視点からの論点提供も行われている。

 28名の執筆者の手によって協力して書きあげられた本書には、日本語文献で言及されることの少ない国も多数含まれており、一般読者層を対象とした日本とラテンアメリカ・カリブ諸国との関係およびODAに関する基礎資料として貴重なものになっている。「はじめに」や序章で強調されている割には章によってSDGsへの言及に濃淡がある点やODA事業におけるアクター(たとえば、NGOや青年海外協力隊など)の役割への言及が乏しい点などは気になるものの、各章がコンパクトにまとめられていることもあり、「事典」として使うことも可能であろう。

 
© 2022 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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