ラテンアメリカ・レポート
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清水達也 編著 『ラテンアメリカ経済入門』
清水 達也
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2024 年 41 巻 2 号 p. 77

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ラテンアメリカの経済といえば何を思い浮かべるだろうか。一次産品輸出、貧困・格差、インフォーマル経済、対外債務問題、インフレーションなど、どちらかというとネガティブなイメージを持つ人が多いかもしれない。確かにこの地域の経済は数多くの問題を抱えており、アジア地域と比べると経済成長率も低い。しかし一方で、これらの問題を乗り越えるためにさまざまな方策を果敢に試みている。私たちはこのようなラテンアメリカの経験から、経済改革の効果や影響について多くを学ぶことができる。

本書はラテンアメリカ経済を専門とする5名の研究者が、大学の学部生を対象としたラテンアメリカ経済に関する講義の教科書として利用できるよう執筆したものである。アジア経済研究所のオープンアクセス方針に従って全文と章別のPDFファイルとEPUB形式の電子書籍をウェブサイトで公開(左記をクリックするとアクセスできます)しており、誰でも無料で閲覧することができる。

本書の特徴は3つある。1つめは、現代の課題に焦点を当てていることである。貧困・格差、保健と教育、インフォーマル部門、人の移動など、ラテンアメリカの今日の課題を取りあげ、経済的視点から解説した。ただしそれらにとどまらず、貿易、工業化、対外債務問題、インフレーションなども取りあげて、経済の仕組みについて説明した。また、輸入代替工業化や新自由主義など、植民地支配から独立以降現在に至るまでのラテンアメリカ経済の沿革を概観する章も最後に設けている。

2つめは、内容をかみくだいて説明していることである。経済学の考え方を用いることで、読者にラテンアメリカをより深く理解してもらうことを目指した。経済学の基礎を履修していない学生でも理解できるような平易な説明を心がけたほか、巻末に用語解説をつけた。各章を15ページ程度に抑え、学生が事前に予習をしやすいよう配慮している。

3つめは、それぞれの章のテーマに関連するインターネット上の記事、論文、データベースなどをクリックひとつで参照できるようにしていることである。章末の学習の課題にはこれらの情報を分析して自分で考える課題を設け、読者がアクティブに学びを深めることができるようにした。

章ごとに説明が独立しているので、関心のある部分だけ利用することもできる。学生に限らず、より多くの方に読んでいただきたい。

 
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