2025 年 42 巻 1 号 p. 17-31
2024年10月1日、メキシコ初の女性大統領が就任した。与党「国民再生運動」(Morena)の候補であったシェインバウム新大統領は、同年6月2日の大統領選挙において約60%の得票で圧勝し、同時に行われた議会選挙においても、与党連合は下院で特別多数(3分の2以上の議席)を獲得した。本稿では、シェインバウム及びMorenaの圧勝の要因を分析するとともに、AMLO前政権の6年間を総括する。高い支持率とは裏腹にAMLO前大統領の実績には功罪両面が存在し、多くの課題が新政権に残されたことを明らかにする。さらに、政権交代直前に議会で承認された司法改革にメキシコの民主主義を後退させる危険があり、その他の憲法改正項目についても今後、新政権の足枷となりうることを指摘する。一方、最大のリスクと見なされがちなトランプ米次期大統領に対して新政権は落ち着いた対応を見せている。