2026 年 43 巻 p. 79

本書は、法律文化社から国別・地域別に刊行が始まった『地域研究のファーストステップ』シリーズの中の1冊として出版された大学学部生・一般向け教科書である。高校社会科教科書で学んだ内容からラテンアメリカ政治研究専門への橋渡しとなるよう、必要な基礎的背景知識を盛り込んだうえで、最新の情勢変化や研究動向を踏まえて専門分野へ招待する構成となっている。
3部構成となっており、第1部では国・地域別に高校教科書では取り上げられない歴史的背景から現在に至る政治動向や制度を概観する。独立から1920年代までの寡頭支配の時代、1929年の大恐慌以降1930年代から1970年代までの国民国家建設の時代、1980年代から現在までの民主化と新自由主義の時代に区分し、これら決定的分岐を念頭にラテンアメリカ全体、メキシコ、中米諸国、カリブ諸国、アンデス諸国、ブラジル、南米南部についてそれぞれ論じる。第2部では地域政治の重要課題につながる各テーマを詳しく分析した。ラテンアメリカ地域の政治を語るうえで鍵となる分野として、政治体制、国家の能力と代表性、市民社会、民主主義の4章で構成される。第3部は国際関係をテーマとし、対米国関係、中国やBRICSなど新しい地域外アクター、人の移動、日本との関係の4章から成る。ここでは、米国と日本との関係だけでなく、とくに21世紀に入ってから重要な域外アクターとなった中国・ロシア、およびBRICSとグローバルサウスとの関係、そして移民を中心とした国際的な人の移動を扱っている。
ラテンアメリカ政治の教科書としては昨年アジア経済研究所から上谷直克・菊池啓一・三浦航太編『現代ラテンアメリカ政治を読み解く』が出たばかりだが、対象読者、テーマの選択は異なっており、読者の目的や関心に応じて読み分けていただける。ラテンアメリカ政治の出版が続くことで、この分野への社会的関心が高まることを期待したい。