2018 年 14 巻 2 号 p. 146-157
今後想定される爆発的な人口増加に備え、戦略的に食料生産を行うことが重要である。効率的な食料生産には、加温、肥料、農薬等が不可欠であり、それらの背後にはエネルギー資源、鉱物資源に関わる採掘活動が隠れている。本稿では食料生産に関わる採掘活動量について、関与物質総量を用いて評価するための枠組みを構築し、その後、日本における食材生産をケーススタディとして評価することを目的として研究を進めた。対象食材は一部例外を除き国産の野菜類41種、果実的野菜・果樹類8種、魚介類16種、畜産5種とした。これらの推算のため、国内外の飼料5種についても計測を行った。機能単位は出荷状態の食材1kgとした。推算で得られた食材のTMR(total material requirement)係数(kg-TMR/kg)は、食材種毎に似た特徴を有していた。温室を使う作物はエネルギー投入の影響が支配的であり、そうでない作物のほとんどは肥料の影響が支配的であった。飼料のTMR係数は食材と比較して低く、飼料間で大きな差異は見られなかった。漁業に関して、定置網漁法のTMR係数は他の漁法と比べ小さく、ほとんどの場合において材料(漁具)やエネルギーの投入は無視しうるほど小さかった。一方、他の機船等を用いる漁法ではエネルギーの影響が支配的であった。畜産では、肉牛の生産に関わるTMR係数が肉豚やブロイラーに比べ5〜6倍高いTMR係数を示した。