1996 年 47 巻 3 号 p. 185-188
アムステルダムの動物学博物館所蔵標本の中に,Papilio aegeus×Papilio fuscusの自然交雑個体と考えられる1♂(Manokwari,W.Irian,26.I.1963)があった.ライデンの国立自然史博物館には,StraatmanによってオーストラリアのクイーンズランドでP.a.aegeus♂×P.fuscus capaneus♀の組み合わせで羽化させられた交雑個体5♂があり,それらと今回の交雑個体を比較検討した結果,西イリアンの標本はP.aegeus ormenus♂×P.fuscus beccarii♀によるものと考えられた.ハルマヘラ島のP.heringi Niepeltは,ときに今回のような自然交雑(例えばP.fuscus×P.tydeus)ではないかとされる.しかし,P.heringiは自然交雑にしては数多く得られており,アムステルダムの博物館には1924-1940年に収集された70♂8♀が保管されている.これは,heringiが近年になって増えてきたものではないことを表わしている.また,今回の西イリアンの自然交雑個体の♂交尾器の特徴から推定すると,P.fuscus×P.tydeusの交雑個体で予想される♂交尾器形態では,ハルペにはfuscusこ似た端部での折り返しと中央部の鋸歯状の隆起が生じると考えられるが,P.her-ingiのハルペにはこのような2つの特徴は見られない.従って,P.heringiは独立種とえられる.