日本物流学会誌ジャーナル
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AHP評価点を用いたTSL (テクノスーパーライナー) 分担量の推計に関する研究
高野 伸栄高橋 清佐藤 馨一
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1994 年 1994 巻 3 号 p. 21-39

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抄録

TSL (テクノスーパーライナー) は、モーダルシフトが進められる中、その主要な担い手として、期待されている次世代の高速貨物船である。現在、技術開発面では、実験船も完成されつつあり、各地で誘致に向け、フィージビリティスタディがなされている。フィージビリティスタディにおいては、TSL需要量を的確に予測することが極めて重要になる。しかしながら、これまで、貨物の分担については、マクロ的なモデルは構築され、実用に供されているものの、本研究で対象とするTSLという新しい交通機関に対し、その特徴を明示的に扱ったモデル構築はなされていない。そこで、本研究は、従来、意思決定の分野に用いられている階層分析法 (AHP) を用いてモデル化を行い、TSLの分担量を求めることを目的とするものである。
本研究においては、TSLの交通機関としての特徴を他の交通機関と比較して分析を行ったのち、従来の貨物輸送分担モデルのレビューを行った。これを踏まえ、本研究におけるモデル構築のプロセスを定め、まず、モデル構築の対象とするTSL適合品目の抽出を行った。これには、貨物輸送に係わる各交通機関と各品目の物流特性の把握を行い、結果として、8品目をTSL適合貨物として抽出した。次に、モデル構築に必要な各種データを得るため、荷主、物流事業者に対して、ヒアリング調査を行った。これをもとにAHPの階層図を作成したが、階層図における評価基準としては、「輸送コスト」、「高速性」、「輸送ロットの融通性」、「運行ダイヤの利便性」、「一貫輸送」の5項目を取り込んだ。この階層図に従い、各評価基準の相対的ウエイトを求め、各輸送機関の評価点を算出し、現況の分担率との問でロジスティック回帰を行うことにより、貨物輸送分担モデルの構築を行い、これを用いて、TSL分担率及び分担量の推定を行った。この結果、本手法が、貨物輸送分担モデルの構築に極めて有用であり、また、実用にも用いうるものであることを示した。

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