哺乳類科学
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報告:特集『クマ類の特定鳥獣保護管理計画の実施状況と課題』
ヘア・トラップを用いたクマ類の個体数推定法における課題~国内外の事例の比較検討~
湯浅 卓佐藤 喜和
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2008 年 48 巻 1 号 p. 109-118

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抄録

日本におけるクマ類の保護管理にとって,有効な個体数推定法を確立することは急務である.ヘア・トラップを用いた非侵襲性サンプリングおよびDNA分析に基づく個体識別によるクマ類の個体数推定法は,従来の捕獲再捕獲法より効果的な方法として注目されている.この手法は,海外では個体数推定法の一つとして定着しつつある一方で,日本では実用に向けて克服すべき課題が多い.そこで,この手法のより効果的な適用を目指し,サンプリング,遺伝子型決定,およびモデルを用いた個体数推定の3つの過程における検討課題を,国内外の事例に基づき整理した.ヘア・トラップ法を用いたクマ類の個体数推定を成功へ導くためには,生態,遺伝,数理モデルなどの研究者による方法論の議論が不可欠であり,地域個体群の全域を対象とした大規模調査の実施が必要と考える.

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© 2008 日本哺乳類学会
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