2014 年 54 巻 1 号 p. 11-18
岩手県盛岡市の都市近郊林に生息するニホンリス(Sciurus lis)の営巣生態について2010年4月1日から2010年12月15日まで調査した.調査個体が夜にねぐらとして使用している巣を無線発信器によって特定した.本種の巣を常緑樹には32個(球状巣30個,樹洞巣2個),落葉樹には28個(球状巣8個,樹洞巣20個),合計60個確認した.また,本種は営巣場所として,林縁を有意に選択していた.1頭が使用した巣の個数は3~20個であり,頻繁にこれらの巣を替えており,同じ巣の平均連続使用日数は,オスでは2.4日間,メスでは4.2日間であった.いくつかの巣では複数の個体による利用が確認されたが,同時利用は1例のみであった.巣のうち73%がクルミの木から60 m未満に存在しており,最近接距離は52.8±49.0 m(平均±SD)であった.本研究により,リスの営巣には,クルミの木の近くに同時に利用できる巣を複数個持つことができること,落葉期に利用できる樹洞が十分にあることが重要であると考えられる.