2015 年 55 巻 1 号 p. 27-33
本研究は鰭脚類3科のうち,運動様式が異なるアシカ科(前肢遊泳型)とアザラシ科(後肢遊泳型)においてdiaphragmatic vertebraの位置にみられる違いを調べた.その結果,diaphragmatic vertebraがアシカ科では脊柱の尾側に,アザラシ科では脊柱の頭側に変位するという違いがみられた.変位は椎骨数変異の生じていない正常個体においても認められた.diaphragmatic vertebraは胸椎型椎骨と腰椎型椎骨の境界となる椎骨であり,その変位により,それぞれの領域が拡縮する.胸椎型および腰椎型椎骨は運動特性が互いに異なり,前肢遊泳型のアシカ科では胸椎型椎骨領域が,後肢遊泳型のアザラシ科では腰椎型椎骨領域が大きい方がそれぞれの遊泳により適していることから,両科で変位の方向に違いが生じたことが示唆された.