2015 年 55 巻 2 号 p. 283-288
西中国地域におけるツキノワグマUrsus thibetanusの「特定鳥獣保護管理計画」は,第一期(2003~2006年度),第二期(2007~2011年度)および第三期(2012~2016年度)のいずれも広島県,島根県,山口県の三県が共通の指針の下に策定した.特定鳥獣保護管理計画の目標を達成するために,島根県では鳥獣専門指導員,広島県と山口県ではクマレンジャーを配置して,出没や捕獲が発生すれば直ちに現地に駆け付ける対応に取り組んできた.地域に密着したこれらの活動によって,住民の不安が払拭され信頼関係を構築することができたと考えられる.今後の課題としては,生息地管理について,具体的な方策検討に必要な調査研究や森林施業手法の技術開発を中長期的に進める必要がある.また,個体群モニタリング,錯誤捕獲を減少させるための方策,地域住民への普及啓発などを効果的に実施し継続していくため,三県の連携をさらに深めて整合性のとれた管理体制の構築を進めることが必要である.