哺乳類科学
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原著論文
盛岡市の都市近郊林に生息するニホンリスの営巣生態の季節変化
菊池 晏那西 千秋出口 善隆
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2016 年 56 巻 2 号 p. 129-134

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抄録

ニホンリス(Sciurus lis)の営巣場所と採食場所は保護活動に必要な知見であると考えられる.そこで,ニホンリスが主要な餌としてオニグルミ(Juglans mandshurica var. sachalinensis)を選択する盛岡市高松公園においてテレメトリー調査を行い,通年の巣の移動および巣とクルミの木の位置関係について明らかにした.

ニホンリスは1年を通して常緑樹上の球状巣を頻繁に利用した.球状巣は落葉期よりも着葉期に多く利用された.樹洞巣は両季節で同程度利用された.

また,行動圏,巣間距離(変更前後の巣の間の直線距離)ともにオスはメスより大きく,長いことが明らかになった.巣間距離(平均値±SD)は着葉期のメスでは68±42 m,オスでは115±59 m,落葉期のメスでは82±42 m,オスでは135±71 mであり,ともにオスが有意に長かった.巣とクルミ木の平均最近接距離はオスで37.4±33.3 m,メスで30.5±22.2 mであった.

ニホンリスは着葉期・落葉期で,常緑樹と落葉樹および球状巣と樹洞巣を使い分け,巣を隠ぺいし捕食者リスクを低下させる一方,主要な餌であるクルミ類を効率よく得られるよう,季節によって営巣場所を変えていると考えられる.特にメスではこれらの傾向が強いと考えられる.

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© 2016 日本哺乳類学会
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